2004年10月10日
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10月10日、甲子園は静寂の中で夜明けを迎えた。。。


球場の周りにできた長蛇の黒い人影は、
それぞれの記憶を辿りながら寡黙に朝を待った。。。

白む空の中に浮かび上がった赤茶けた蔦は、
森羅万象には終焉のあることを物語っていた。。。


午前中に早められた発券時刻には、
昨年を彷彿させる八千ニ百人が列を成した。。。

台風一過にくわえて予備日の予備日でありながら、
四万八千人の観客を八木裕一人の力で呼んだ。。。

始球式マウンドには長男の亮介くんが立ち、
父裕は万感の思い込めてフルスイングした。。。


八回裏1アウト、今か今かと待ち侘びる大観衆は、
「代打、八木」のアナウンスに狂喜乱舞した。。。

ネット裏に佇む妻と三人の子供に見守られながら、
0-2からの3球目の外角速球を迷わずライトへ叩き返した。。。

最後の打席でプロ通算817本目のヒットを放ち、
ファーストの守備に付いてウィニングボールをミットに収めた。。。


『あこがれの甲子園球場のバッターボックスに入ることは、
・・・もうありません』

涙をこらえ、声を詰まらせる八木裕の姿は、
早すぎる別れを惜しむファンの目にも潤んで見えていた。。。

『苦しいときに、プレッシャーに押しつぶされそうになったとき、
皆さんの声援が力となって僕を支えてくれました』

励まされ、勇気付けられ、元気をもらってきたのは、
むしろ僕たちファンだったことは誰もが知っている。。。

『激動のプロ野球ですが、球団と選手一丸となって、
来年から素晴らしいシーンを、感動的なシーンを提供してくれるはずです』

こよなく野球を愛し、阪神タイガースを愛した男は、
プロ野球の素晴らしい未来を僕たちに約束してくれた。。。

『お世話になった方々、そして日本一の阪神ファンの皆さん、
18年間本当にありがとうございました』

ありがとう!ありがとう、八木さん!
声を限り叫び続けた。ほんまにほんまに、ありがとう。。。


観客席に手を振り、サインボールを投げ込みながら、
一人でグラウンドを走る姿をまぶたの奥に焼き付けた。。。

いざ行かんや、萌え立つ大地に。さぁ、八木裕が、勝利をめざして。
HMの中で生涯初の胴上げ。八木の体が甲子園に舞い上がった。。。

ダグアウトに降りた代打の神様は、
振り返ることなく、静かに、足早に、グラウンドを去った。。。



そして、
八木裕の18年は、
静かに幕を下ろした。。。




top1010yagi






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Last updated  2004年10月12日 11時00分58秒
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