産婦人科医の生活

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内膜症と不妊


<子宮内膜症と不妊>
1.疫学
子宮内膜症患者さんの 30~50% に不妊症が合併し、原因不明不妊患者さんの 約50% に子宮内膜症の病変が存在すると言われています。

2.機序
様々な機序が不妊症に影響すると言われています。
・子宮内膜症を合併した不妊患者さんのうち、66%は内膜症が軽症であったと報告されており、卵管周囲が癒着して不妊になることは、頻度としては少ないようです。
・子宮内膜症の病変からは、 IL-6 というサイトカインの一種が産生されます。IL-6はおなかの中に散らばり、 卵子の発育抑制 精子運動率の低下 を起こすとされています。
・同じく内膜症病変から産生されるプロスタグランジンは、 卵管の運動障害 を引き起こすと言われています。
・卵巣周囲に癒着が起きると、卵胞が成長しても排卵が障害されます(黄体化未破裂卵胞)。
・内膜症患者さんのうち、チョコレート嚢胞があっても摘出しなかった患者さんと、チョコレート嚢胞のない患者さんでは妊娠率はほぼ同じであったと報告されています。このことから チョコレート嚢胞自体は妊娠率に影響を及ぼさない と考えられます。

3.治療が及ぼす影響
・偽閉経療法:女性ホルモンを止めてしまう治療です。治療により血中IL-6値は低下するため、治療効果は期待できますが、過去の治療郡と非治療郡を比較した試験では、 妊娠率は向上しない という結果が出ています。体外受精に限ると妊娠率が上昇したことが報告されています。

・手術療法:妊娠率を向上させる手術療法は 病変焼灼 腹腔内洗浄 です。洗浄によりおなかの中に散らばったIL-6を少なく出来ます。チョコレート嚢胞に関しては 嚢腫摘出 を行うと、卵巣刺激への反応低下、正常卵胞の減少など、 妊娠率を低下させる と言われています。ただし、嚢胞摘出には他の適応(悪性疾患の除外など)が含まれるため、摘出するかどうかは主治医とよく相談することが重要でしょう。



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