~ A LOVER ~

~ A LOVER ~

この手の温もり・・・




静かな朝の光の中で、枕を強く抱きしめる。
隣にあるはずの温もりも、目覚まし代わりのキックも今は虚ろな夢の中にあるだけだった。
彼の残したものは、乾ききらない洗濯物と渇ききった私の心だけになってしまった。
・・・いつまでも一緒にいられるはずだった。
そう、幼かったあと頃と同じように・・・。


学校の帰り道も、一緒に泣いた卒業式も、一緒に暮らそうと言ってくれた時も、
いつも優しく微笑んでくれた。
私は甘えた。
必死に甘えた、帰り道足早に歩く彼に遅れないように、シャツの袖にしがみついて
彼の香りを感じていた。
交差点にさしかかった時、フイに掴んだ腕を振り払われた。
私は焦って思わず彼の顔を見る。彼の美しい瞳は真っ直ぐ前を見つめている。
そこには綺麗な女性が彼氏らしき人と手を繋いで、信号が変わるのを待っていた。
その女性がチラッとこっちを見た。
私は少し泣きそうになった・・・。
そして彼の手を握った。
彼は立ち止まったまま突然私の手を強く握り締めた。
その手はとても温かく、そして力強かった・・・。

 『愛の形~』

過ぎていく時間の流れに
追いつけない私の姿が
髪型を変えるだけでは
心までは変わらないの

あなたの微笑みの先には
もう私はいないわ
あなたの心の中にも
もう私はいないのね

都合のいい女でよかった
あなたを近くに感じれるのならば

胸の奥に佇んだままの情景が
今も私を責め続ける
悲しくて流した涙の理由も
もうあなたには届かないのね

心の奥に縛られたままの愛が
今も私を苦しめ続ける
切なくて流した涙の理由も
もうあなたには届かないのね


[あなたに対する気持ちは
きっとこの先も変わらない
あなたの次の人生が始まっても
私はあなたの足跡でいられるから・・・ect]


私の笑顔の先には
もうあなたはいないわ
私の心の中にも
もうあなたはいないわ

都合のいい女でいられない
私を近くに感じて欲しいから

胸の奥に突き刺さったままの情景が
今は色褪せた写真の様に
悔しくて流した涙の理由も
もう私にもわからないわ

心の奥に忘れてしまったはずの愛も
今は私を優しくするの
固く繋いだ手の温もりも
あなたの知らない誰かに・・・

[あなたに対する気持ちは
きっと今も変わらない
私のこの人生が真実でも
あなたは私の足跡でいてくれるから・・・etc]


バイバイ・・・


彼との買い物に出かけた日
いつもの交差点、横断歩道で信号待ちをしていると
見慣れた顔に気がついた。
そこには一組のカップルが手を繋いで立っている。
男性の方がジッと私を見つめる
私は目を逸らし彼の手を強く握った。
チラッと視線を戻す
男性はまだ私を見つめている。
その視線がやけに痛かった・・・。
信号が青に変わった
私は彼にせかされるように歩き出した。
私を見つめるカップルが近づいてくる。
私は視線を落としながら少しずつ前に進む。
「バイバイ・・・私」
心の中でそう呟いた。
交差点を渡りきっても、私は振り返らなかった。
背中に突き刺さるような視線を感じる。
私がふと立ち止まると、彼が不思議そうな目で私を見つめる。
私は少し考えるそぶりをして、そっと口唇を彼に重ねた。
恥らう彼におどけてみせると、また二人で歩き出した。
ビルの陰に沈む夕日が、やけに綺麗な夕方だった。

その時、私の手は強くそして固く握りしめられていた・・・。



日曜日、ささいなことが原因で彼と別れた。
そしてまた孤独な日々が始まる。
それでも私の心は清々しかった。
私は願う、寂しさに耐え切れない訳じゃない。
自分が少しでも大人になれるように。
いつかこの手を離さない人に出会えるように・・・。

                        今を強く生きるK子さんに捧ぐ  love foom zinxxx


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