“フーテンの寅”こと車寅次郎が、初夏を迎えた東京は葛飾柴又に久しぶりに帰って来た。ところが、団子屋「とらや」を経営しているおじ夫婦は寅が急に帰って来たのでびっくり仰天。と言うのも寅の部屋を貸間にしようと「貸間あり」の札を出していたからである。案の定、札を見た寅は捨てゼリフを残して出て行ってしまった。
最初に行った金沢で寅は、久し振りに弟分登と再会した。その夜、飲めや唄えのドンチャン騒ぎで、数年振りの再会を喜び合うのだった。
翌日、登と別れた寅は、三人の娘たちと知り合った。歌子、マリ、みどりというこの娘たちを寅は何故か気に入り、商売そっちのけで御馳走したり、土産を買ってやったり、小遣いをやったりする始末。やがて、三人と別れた後、急に寂しくなった寅は柴又に帰ることにした。
すっかり夏らしくなった柴又・帝釈天。寅は境内でみどりとマリに再会した。二人は金沢へ旅したときの楽しさが忘れられず、もう一度寅に会いに来たのだった。翌日には、みどりに聞いた歌子がひとりで寅を訪ねて来て想い出話に花を咲かせる。
それ以来、たびたび歌子は遊びに来るようになった。そして寅は歌子に熱を上げ始めた。ところが歌子は、小説家の父と二人暮しで、好きな青年との結婚と、父との板挟みで悩んでいたのである。
歌子はこの悩みをさくらに打ち明けた。「すべて貴方の気持次第ね」というさくらに力ずけられた歌子はその青年と一緒に田舎で暮すことを決心した。
このことを歌子からじかに聞かされた寅は、翌日、引き止めるさくらに「ほら見なよ、あの雲が誘うのよ」と言い残し、また旅立ってしまった。ひと月後、結婚して幸福な生活を送っている歌子から「とらや」に届いていた手紙には、留守中、寅が訪ねて来たらしいがもう一度寅に会いたいと記してあった。
(KINENOTE)
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