夢の世界へ

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詩のページ


                   約束

                約束だよ

                   お母さん

                今度産まれるときは

                   きっと

                  健康な身体で

                 産まれてくるから

                約束だよ

                   お母さん

                僕をあきらめないで

                 僕を産んでほしいんだ

                  お母さんの

                    ところに産まれたい

               お母さんに

                   抱かれたい

                    だから

                 約束だよ   お母さん





    小さな命

      誰もが待っていた 小さな命
      元気な声で この世界に生まれ落ちたのに
      誰にも抱かれることもなく
      集中治療室の 保育器の中で
      苦しくて 泣くことも出来ずに
      口寂しくても おっぱいを吸うことも
      心細くても 抱きしめてもらうことも出来ずに
      小さな身体に 薬の点滴を
      何本も 付けられて
      手足は 動かぬように添え木で固定されて

      『触ってあげて下さい』
      看護婦さんの一言に お母さんは泣いてしまった
      触ってあげられる場所を 探さなくては見つからなくて
      『今日は機嫌が良くないかな?』
      違うよ 機嫌が悪いんじゃなくて
      違うよ 小さな目が「たすけて」と言ってる

      翌日から 様態が急変して
      手術予定日を繰り上げての手術が 決まった

      無事を祈る時間の中で
      覚えてること

      『手術の用意が出来ましたら会えますので
                 沢山励ましてあげて下さい』
      看護婦学校の子達が手術室見学で
       『小さくて可愛い』『頑張って下さい』と励ます囀り
      待合室で待っても待っても
                 知らせが来ない事
      6時間と少し待ってやっと看護婦さんに
       『こちらです。来て下さい』と言われて嬉しくて
          足早にツイテイッタコト
      。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
      連れて行かれたところは
       『お医者様』のところで
        『手術は無事成功しましたが、みんな喜んで片付けていたら心音が停止してしまって、
      強い薬も打ち、心臓マッサージも2時間続けているのですが心音が戻らず、
                 どうしてと狐に抓まれた心境です』と
      『縫い合わせたところを開いて
                直接心臓をマッサージしています』
      「行っちゃ駄目 起きて 動いて」と叫んだこと
      お父さんが背中を支えてくれたこと
       『もうマッサージをやめて下さって結構です。
              有り難う御座いました』と絞り出すような声
      お母さんも泣きながら「有り難う御座いました」と


      白いおくるみに くるまれた静かな佑汰を
                  初めて抱いてあげることが出来たよ
      静かな寝顔だった
      産まれて10日間、一生懸命生きた小さな命
      お家に帰ろう みんな待ってる
      帰り路 子守歌歌ってあげるから ずっと ずっと




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