ななこのくつろぎカフェ

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周りの人の反応(1)

乳がんになったとわかってからの、周りの人の反応

乳がんになったとわかったとき
一番嫌だったのは「周りの人に知られること」でした。

告知をされたとき、診断をしてくれた医師からは
「休職に入るのならば、会社の周りの人たちに打ち明けないと
協力を得るのは難しい」と言われたけれど
できれば打ち明けたくありませんでした。

会社関係の人に打ち明けるというのは
身近な家族とか、友達に告白するのとは訳が違うと思ったからです。

私の職場は20代・30代の若い人たちが多く
しかも最近結婚したばかり…とか
赤ちゃんが生まれたばかり…などの
どちらかというと「ほわーん」とした幸せ真っ只中の人が多いので
そんな中「乳がんの治療をしたいので、休職させてください」
というのは、自分にとってもあまりにも酷だと思っていました。


結局、休職するにあたり、

直属の上司(課長)
  ↓
上司の上司(部長)
  ↓
  社長

の順に話をしましたが、社長には部長からすでに私の病気のことは
話が伝わっていました。


反応としては

課長編

告知された翌日。
課長が「おはよう」と出勤してきた瞬間
私の目が、何かを訴えていたのでしょう。
課長は「ん?どうした?ななこ。何か言いたいことでもあるのか?」と。

それで私が「…はい、ちょっとお話があります。」と言うと
課長は目を見開いて一瞬(退職の話か?)という表情をしましたが
それよりも先に「退職の話ではありません」と言うと
「そうか、でもその顔だとあまりいい話ではないな。」と。

別室で話をしようかとも思いましたが
私がいる部署はもともと人も少ないし、この日は後輩が1人いただけなので
課長の席まで言って、小声で話をしました。

「実はある自覚症状があって、きのう大学病院で受診したところ
予想外に悪い結果が出てしまって告知を受けました。
そして手術と通院と自宅療養が必要になりました。」
と言ったところで、私が無意識のうちに左胸あたりをおさえたら
課長はハッ!とした顔をして「そうか…」と。
課長自身、奥様を(私と部位は違うけれど)同じ病気で亡くされているので
そのあたりは、一発で理解してもらえたようです。

「事情はわかった。それでななことしてはどうしたい?」
「最初は退職も考えたんですけど、自分の生活のこともありますし
家にずっといてこもりっきりになるのも嫌なので
できれば一時期休職をさせていただいて、その後またこちらでお世話になりたいと思っています。」
と言うと、課長は表情がパーッと明るくなって「それを聞いて安心した。そうだ、そうだ。
それが一番いいと思うぞ。何も仕事をやめることはない。
君は仕事のことは考えなくていいから、病気を第一に考えなさい。」
と言ってくれたので安心しました。

「実はきのう、告知を受けた時点で、すぐにでも電話したほうがいいのかと
悩んだんですけど・・・。きのうは私自身が動揺してしまっていたので
とても電話ができる状態ではなくて、仕事をこのまま続けるかどうかも
一晩考えたかったので、それで今日報告させていただきました。
言いながら泣いちゃったりするんじゃないか・・・とかいろいろ考えてましたが
なんとか泣かずに報告できてよかったです。」と言うと
「うん、ちゃんと報告できているぞ。」と。
「しばらくシフトに穴を空けてしまいますし、ご迷惑をおかけしますが
復帰したいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。」と一礼して
自分の席に戻りました。

課長には報告したものの、まだ自分の中では現実感が湧かずに
たえずフワフワしている感じで、それでも何とかいつもの仕事を始めました。
5分しないうちに、課長が「ななこ、一つ聞いていいか。肺か?」と言ってきたので
「いえ、胸です」と言ったところで(そうか、私はもう自分で左乳房とわかっているけど
他の人が聞いたら、肺だと思われる可能性があるのか。)と
そのときに思い、その後、相手に話すときは胸を指差すだけではなく
ちゃんと伝えないとだめだと思いました。



部長編

課長に引き続き、今度は部長に報告することにしました。
たまたま部長がコピー機のところにいらっしゃったので
私がツツツー・・・と近寄っていくと、部長は(ん?)という表情。

それで「実は部長にお話があります」と言うと
部長は課長のときと同様に(退職したいと切り出されるのだろうか?)という
表情になったので、ここでもまた「退職のお話ではないのですが・・・
今ちょっとよろしいですか?」と言って、課長に話したときと同じように
切り出したのです。ただし病名は伏せて。

すると課長もそばに寄ってきて、私がちゃんと言えてるかどうか
横で話を聞いていてくれたのですが、そのうちに部長が
「わかった。じゃあ女性特有の病気ってことだね。」と言ってくださったので
(それ以上は突っ込まれないかな?)と思った私が甘かった。

「そうか。よくわかった。それで肝心なことを聞くけれど
ななこ君は仕事はどうしようと思ってるの?それが一番大事なんだけど・・・。
1ヶ月くらい休めば、出てこられるのかな?」
「入院して手術が必要で、その後も副作用がきつい治療が続くので
すみません、1ヶ月では無理です・・・」
「じゃあ、2ヶ月あれば大丈夫かな?」
「まだ最終的な診断がついていないので
今の時点でのお話しかできないのですが
化学療法が入るので(→いくら何でもこれを言ったら気付いてくれるかと思ったのですが)
2ヶ月でも厳しいと思います。どのくらいの期間休職が必要になりそうかは
また主治医と相談して、わかり次第、部長に報告させていただきたいと思っています。」
「そうか。わかったよ。女性特有の病気というのもわかったけど・・・。
何の病気?」部長がそう言った瞬間、
課長が一瞬(うわ、そこまで聞かなくても・・・)という表情をしたのを
見逃さなかった。

そして私は思わずここで答えに詰まってしまった。
自分の口から、その病名をできれば口に出したくなかった。
出した瞬間から、言葉は現実になるからだ。
でも部長は、私の病状がそこまで深刻だとはわかっていない。
ならばやはり言うしかない。どっちみち、人事に休職の際の診断書を提出すれば
会社にも病名は知られてしまうのだから。
こんなことを、ほんの数秒頭の中で考えたのですが
次の瞬間、私の口から部長へは病名をストレートに伝えていました。

「それは・・・」絶句する部長・・・。
相手が動揺する姿を見て(ほら、だから言いたくなかったのに。)と思ったけど
私が所属する部の中で一番上の人なのだから、言わないわけにもいかなくて。

かたや、私は言わなくてもいいことまで口に出してしゃべっていた。
「でも幸いにも、保険に2つ入っていたので、入院費用とか手術費は
それでまかなえそうです。」
後から考えたら、こんなこと言わなくてもよかったのにね。
でも相手が狼狽している姿を見て、私はこんなことまで話してしまっていた。

そして「病気が病気なので、このことは部長と、課長と、あとは同じ課の人には
私から話しますが、それ以外の人にはこのことは言わないでいただきたいのです。」
そう言ったら部長は「それはそうだけど、でも副社長(人事の責任者)と
人事課の人間には言わないわけにはいかないからね。
診断書出せばわかっちゃうことだし。」と言われました。

でもとりあえず、それ以外の人には言わないように
なんとか話してわかってもらいました。

部長に報告して、自分の席に戻ったら課長が
「部長は、なんだか全然ピンときてなかったみたいだな。
でも身内とか、身近なところにそういう病気の人がいない人には
化学療法とか言っても、わからないのかもしれないな。
俺はすぐにわかったけど。それに君がわざと病名をぼかしているのに
それを何の病気か?と聞くのもな・・・。でもとにかく報告が終わってよかったよ」

人に話すたびに、自分の病気が現実であることを思い知らされる。
「お願い、どうか特別扱いしないで、かわいそうという目で見ないで!」
告知を受けた日から、私の心は常に同じことを叫び続けている。
そして(こんな病気には絶対負けないから!)と決意を新たにしました。


社長編

社長には、休職に入る前日に挨拶をしに行きました。
部長から話が伝わっているとは思わなかったので
突然社長の口から「ななこさん、乳がんなんだって?」
と切り出されたときには、一瞬焦りました。

ところが次に聞いたのは意外な言葉…

「これは誰にも話していないんだけど、実はうちの妻も
最近乳がんになってしまって、治療を始めたところなんだよ。
手術、抗がん剤治療、脱毛、といろいろ大変なことが続くと思うけど
今は治る病気になりつつあるんだから、ななこさんも治療に専念して。
会社のことは何も心配しなくていいし
戻ってきたときのあなたの席は、私が責任をもって空けておくから」

そう言われて涙が出そうになりました。

長期で休むことに対して、誰かから何か言われたらどうしよう…って
思っていたからそう言っていただけて、本当に嬉しかったです。








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