*ナチュラルステップ*

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インタビュー/喜多千秋さん


0502喜多千秋さん

「楽(らく)」よりも「しんどいけど楽しい」が好き

劇団員・観光PR職 喜多千秋さん


●夢と生活を両立させてこそ一人前

「市の観光PR」という仕事と、ライフワークである「劇団」。
市の観光産業を盛り上げる斬新なアイデアを次々と実現させ、「毎日全力で頑張って、楽しんでいる」というほど仕事に没頭しながら、劇団で海外公演にまで出掛ける。忙しい人だ。
だが喜多さんは、そのバランスが自分には大切だと話す。
「いつまでも自立もせず、親を泣かせてまでやりたいことを追い続けるのは、私は人として違うと思う。
生きていくにはお金がいる。その当たり前のことをちゃんと分かっていて、社会人として自分で稼いで、その上でやりたいことをやっている人をカッコ良いと思うし、自分もそうでありたいなと。
もちろん退屈な時間は過ごしたくないので、仕事も本気でやりたいと思えるものに取り組んでいますけど」。



●演劇はしんどい でも私には必要なもの

小学校の頃から、演じることへの憧れを何となく持っていたという喜多さんが演劇を始めたのは、高校時代。
当時は全国大会で優勝し、演劇で食べていこうかとも思ったという。
「でも高校三年の時、プロと一緒に演じる機会があって、実力の差に打ちのめされてしまったんです。その時受けた衝撃が強くて、大学時代は演劇の舞台に近づけないほどだった」。
それでもすっぱり辞められず、社会人になってから劇団で演劇を始めた。
「高校時代に有頂天になったままで演劇の世界に入らず、悩んだ時期があったのは、演劇と自分の関係をじっくり考えられて良かったと思います。やっと最近、演じることに少しだけ自信が出てきたかな。
今でも、演劇を辞めてしまった方が、私の人生は楽だと思う。だけど離れられない。しんどいけど続けたい。
演劇はきっと、私の本質にどうしても必要なものなんだと思います」。



●「ああしておけば良かった」とは言いたくない

 将来について聞くと「それは分からない」と返ってきた。
「これから家族を持てば、演劇だって休むこともあると思うし。死ぬか生きるかの選択意外は、大したことじゃない。死ななきゃ大丈夫、何とかなるさと思ってるから」と軽快だ。
偶然や必然の要求で、自分の生活を変える必要がでてくることもあるとよく知っているし、それを受け入れる度量の広さももっている、しなやかで強い人だ。

ただひとつ、彼女が貫くのはシンプルな思い。
「歳をとってから振り返って、あの時ああしておけば良かったのに、と悔やむような人生は絶対に嫌だな。自分に後悔することほど、つらいことって無いと思う。
だから、自分のやることに納得して、毎日を重ねていきたい」。

だからこそ、「楽」に流れるのではなく「しんどいけど、楽しい」日々を選び、生きる。
彼女の歩みは、「自分自身が今の自分に納得できるか」、そこさえおろそかにしなければつまらない人生にはならないと教えてくれる。



*出逢えてよかった!私の影響人3*

小学校6年の担任の先生
親身に相談にのってくれた先生。「どちらに進もうか迷ったら、どちらでもいいからまず1つやってみる。ダメならそこからやり直せばいい」という教えが、今も喜多さんの中で生きているそう。

アーティストの友人K君
同年代の現代アート作家。「Take it Easyが身上の人。気持ちがぐらついている時に彼の家へ遊びに行くと、大丈夫、今の自分を大切にしようって思える」。
たまにしか会えないけど、かけがえない友達なんだそう。

ボーイフレンドのA君
緊張感のある時間を過ごすことが多いという喜多さんが、一緒にいると安心して全く気を使わないでいられるそう。
「家族以外と、気を抜いて普通に過ごせるということが、どれだけ尊いか感じさせてくれた人。穏やかな時間の流れが、日常を生きていると実感させてくれる」。


喜多千秋さん(きた・ちあき)
 愛知県名古屋市在住。大学を卒業後、好きだった写真の道へと大手写真会社に就職。秘書、営業職などを経て、町の写真館へ転職。その後アルバイト時代を過ごし、2001年4月から、観光をメインに市のPRをする仕事に就く。そのかたわら、高校時代から今まで、趣味の域を超えて演劇を続けている。


2005年2月取材
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