りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月07日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記


<ユナ2>



私はまず電話を受ける仕事をさせられるようになった。
始めての電話を取るのは本当に緊張した。

同期の高卒の女の子が
「やだぁ~!取れないです!ヤマグチさん取って下さいよ!」
と言って、何日経っても全く電話を取ろうとしない。

キレそうになる。
何で二つ違うだけでこんな甘えが通用するんだろう?

男性社員が、
「イジワルしないで、とってあげなよヤマグチさん。」
だって。

「はい、第一営業所第一課でございます。」
慣れないながらもマニュアル通りに私が電話を取ると、
「ウエハラでございますが、イトウ課長お願いしまぁ~す!」
と、明らかに私のマネをしてからかう男性先輩社員の声がした。

私は何だか恥ずかしくなった。
「ございます」って言う必要なんて無いの?と思った。

一事が万事その調子で、
研修の時に習ったマニュアルなんて、
全く役に立たないことがわかった。

日本茶の出し方も習ったけど、
絵柄が前で~とかってやつ。
結局、自販機のホットコーヒー買ってきて出してよ。
って課長に言われたし…。

スーツ着て会社に行ってたら、
「今日は何かあるの?デートぉ?」
って、他部署のパートの女性に言われた。

会社ってこんなもんなのかな~?

お嫁さんにしたいナンバーワンみたいな女の先輩が、
「ヤマグチさん、電話の取り方上手になってきたね~。」
って褒めてくれたけど、
その分、高卒の子の分まで取らなきゃいけなくなってムカついてた。

しかも、その高卒女は、先輩を自分の味方にしたいらしくて、
あからさまに私を無視してその先輩に媚を売るような態度を取っていた。
私は呆れてたし、疲れていた。
ここは小学校か?私たち何歳になったんだっけ?

バカらしくてやってられない。
作り笑いばかりが身についていく気がした。

そんなある日、
私の営業所に同期の男子が来ていた。
自販機の前に一人でいたので声をかける。

「やっぱりカッちゃんじゃん!元気にしてた?
どう?そっちは?」

青年と言うより、まだ少年っていうか、
美少年って感じのカッちゃんが、
あ!ヤマちゃん!って言って喜んだ感じで笑う。

専門卒のカッちゃんは同じ歳の気安さがあった。

「あ~、何か慣れなくてさ、もうクタクタだよ。
そうだ!今度さ、同期で集まってバーベキューしない?
ほら、研修でいっしょだったグループでさ。」

「いいね~。
じゃあ、決まったら連絡もらえる?」

私は研修の頃の賑やかな空気を思い出して嬉しかった。
またあのメンツに会えるかと思うと嬉しかった。
あのグループには高卒女もいないし、
フジサワくんもいない。

結局フジサワくんから電話の連絡は来なかった。
私も連絡をしなかった。
だって、そんなことだろうと思ったから。

忘れちゃおう。
あんなの悪い夢か何かだったんだ、きっと。

私は嬉しそうな顔でもしてたのだろうか、
すぐに部署の男性社員から「男に声かけるの早いね~!」
と見ていたらしく冷やかされた。

「同期ですよ~。
同じグループだったんで。」

私はニコやかに答える。
いちいち腹を立てていたら、
ここではやってられない。

あの世代は男と女が友達として接するってことは無いんだろうか?
男と女が話してたら、すぐデキてるとでも思うんだろうか?

営業所では、仕事以外で男性が女性と関わることはほぼ無い。
いっしょに昼食を取るなんて、まず有り得ない光景。
だからこんなこと言われるのだ。

短大の時にいたサークルや、バイト先より不自由かも。

同期の男子はまだ営業研修とかってやつで
営業所に入ってきていなかった。
まあ多分入ってきたところで私とは関係無いんだろうけど。

「へぇ~。」
男性社員がニヤニヤしていた。

あ~。これがずっと続くのかな?

うんざりだ、こんな会社。

私はパソコンのやり方を覚えるためにスイッチを入れた。


同期で仲良しのミーコから電話でバーベキューの連絡が来た。
私はその日を楽しみに、
戦力にもならない仕事の勉強をしながら会社に行き続けた。

「わ~ん!久しぶりぃ~!」
久々に会ったミーコが甘ったるい声でハイタッチしてくる。
私もテンションが上がる。
配属された部署の報告をしながら、
車が来るのを指定された駅で二人で待っていると、
ロータリーに白い車が止まった。

同じグループだったヤッサンが窓から顔を出す。
「よう~!久しぶり!
ほら、後ろ、乗って!乗って!」

「きゃ~!ヤッサン!ますますボーリョク団みたいじゃん、そのサングラス~!」
ミーコが楽しそうに言って車に乗る。
私も後に続く。

車の運転席を見てギョッとした。

フジサワじゃん!

何で…。

私は絶句する。

「あ、オレとフジサワ、同じとこで営業研修してんだよ。
誘ったら来るって言うから運転手!」

無邪気にヤッサンがこっちを振り向きながら言う。

もう、最悪だ…。
帰りたい…。

そう思うのに、ドキドキしていた。

自然に振舞え!と自分に言い聞かせる。
でも、何をしゃべっていいのか…。
頭の中が真っ白になっていた。

「ゴメンね~、ボロい車で。中古なんだよ。」

フジサワくんが言った。

「ううん、広くていいんじゃない?
でも…確かにシブいかなぁ~。」

みんなが笑う。
ミーコがしゃべってくれてる。
ああ、良かった。

ヤッサンはミーコ狙いなのかもしれない…。
二人がずっと楽しそうにしゃべっているので、
私はそれに相槌を打ったり、笑ったりしていた。
フジサワくんは運転に集中していた。

いいや。もう。
何もなかった。
何もなかった。

そう思えば思うほど、あの時の光景が頭をよぎる。

ツライ。
ツラ過ぎる!

車から降りるとすっかりテンションが下がった私は即トイレに逃げた。

「どしたの、ヤマグっちゃん?」

ミーコが心配して聞いてくる。

「うん、ちょっと車に酔っちゃったのかも。
ごめんね~。」

「そっか。大丈夫~?」

「うん。大丈夫だよ~。」

ミーコは別の車で来ていたカッちゃんが気になっていた。

カッちゃんとお近づきになりたいようなので、
私は協力することになっていた。

「ねぇ、ヤマグっちゃんは好みのタイプいないのぉ~?」

野菜を洗いながらミーコが聞いてくる。
私は苦笑いをして、残念ながらいないなぁと答える。

優しそうな人が好きなの~。
ちょっとトボけてそうな~。
ああ、確かにココにはいないかねぇ~。

そんなつまんない話をする。
芸能人で言うと誰とか。
それが意外な人物だったりして面白い。

「マルちゃんもカッちゃんのこと気に入ってると思う?」

ミーコはそんなことを私に聞いてくる。
カッちゃんは、マルちゃんと楽しそうに話していた。
マルちゃんは小柄で華奢な子だ。
ハキハキしていて頭が良さそう~。

そしてその隣にはフジサワくんもいた。

マルちゃんとフジサワくんは、何だか肩を叩きあっていて、
ふざけていて、楽しそうだった。

カッちゃんがこっちに歩いてくる。
「何か手伝おうか~?」

「あ、じゃあさ、私コレ切っちゃうから、ミーコといっしょに持ってって、焼いてくれる~?」

ミーコがカッちゃんの後ろからこっちを見ていて、
ちょっと照れたような顔になった。
顔がサンキュって言っている。

なんの、なんの!
と、私は表情で合図する。

ザクザクと野菜を切る。
マルちゃんとフジサワくんの笑い声が聞こえた。

ちっともこっちになんて来ない。
やっぱ、アレって酔った上でってことだったんだ。

男ってそうなんだきっと。
目の前にヤレそうな女の子がいたから、
テキトーに口説いて、
ヤッたらおしまい。

ふん。いいわよ。私だって酔ってたもん。
私だって悪かったんだから。
なかったことにしてやろうじゃない。

あ~、来るんじゃなかった。
つまんない。

野菜を叩き切りそうになった。
やったらきっとスッキリする!






続きはまた明日

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最終更新日  2009年07月07日 19時36分39秒
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