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さて、乾燥した天気が続いているせいか、年末にのど風邪をひいてしまい、まだ引きずっている。声がハスキーだ。熱はないが、首から上がだるい。なんだかすっきりしない。
ジョギングだけは毎日続けているが、それ以外は外出する元気がないので積んであった本を読んでいる。何冊か寸評。
・『ミッション・ソング』ジョン・ル・カレ 2011年 光文社文庫
『ナイロビの蜂』でアフリカ問題に正面から向き合った巨匠が再びアフリカと対峙する。舞台はコンゴ民東部。大湖地域と云われる現在も紛争が続く地域だ。アイルランド系宣教師とコンゴ人女性の間に生まれた主人公。この設定自体が欧州とアフリカの関係を暗喩している。コンゴ周辺の部族語を複数マスターしている主人公はコンゴ東部に関する秘密会議に通訳として参加するが、真実を知り、義憤に駆られ、謀略を暴こうとするが・・・植民側がアフリカ政治を操る建付けは同じ英国人のフォーサイスが30年以上前に書いた『戦争の犬たち』を想起させる。『犬たち』は傭兵が赤道アフリカのクーデターに加担した実話を基にした小説と云われているが、その時代と構造はあまり大きく変わっていない。
・『奪還』麻生幾 2010年 講談社
こちらは地震の被害を受けたフィリピン・ミンダナオ島と沖縄・与那国島が舞台。元自衛隊特殊部隊長と「国境のなき医師団」に派遣された日本人女医が主人公と云う意外な組み合わせが興味を引く。北朝鮮の特殊部隊の敦賀湾上陸を描いた『宣戦布告』を書いた著者は、この小説では、昨今中国の台頭で注目が集まる南西諸島における日本のシーレーン防衛の脆弱さを描く。
この本は小説ではない。著者は国際政治の研究者(獨協大学)で、現代の海賊問題の第一人者であるが、あとがきにあるように「そもそも海賊とは何か」を調べているうちに歴史にはまってしまったらしい。英国が近代史の中で世界の覇権を握っていく過程でポルトガルやスペインと云った先進海洋国に対し、国家ぐるみで海賊と云う暴力装置を使った略奪行為を働き、富を蓄積していく様子が描かれている。スパイス、コーヒー、紅茶、砂糖、奴隷などの「交易品」を巡る歴史は、現代の国家や金融、多国籍企業等のシステムの成立と深く結び付いていることがわかり興味深い。お勧めの一冊だ。
『朽ちるインフラ 忍び寄るもうひとつの… 2012.03.14 コメント(2)
『オリンピックの身代金』 2011.10.20 コメント(2)
「軍艦島」 2010.10.11