最近、アマリ上手に文章が書けてないなあ・・・・
スランプというほど、文章が上手ってわけじゃないけど、それでも今まではその場しのぎでもアイディアが浮かんできて、けっこう自分の好きな作品もあって、「俺って、才能があるのかな?」・・・・なんて思ったりして・・・・・
アイディアは浮かんでくるんですよ・・・・・でも、皆さんに満足していただけるレベルじゃないなあ
けっこうこの「ジャングル・ナイト・クルーズ」の読者の皆さんはレベルが高いんですよ!
・・・ということで、つづき、行きま~~す!
二階へと続く階段は60センチほどの狭いもので、上から人が降りてきたらすれ違うのは難しいような階段です。
階段を登りきると、4メートルほどの廊下に左右2つずつドアがあり、一番手前の左側のドアの窓ガラスに「催眠カウンセラー吉野」の文字がありました。
「カウンセラーの先生は吉野さんっていうのか・・・・」
私はドアをノックすると・・・・「どうぞ・・」という女性の声・・・・・
「失礼します・・・・」
わたしがそういいながらドアを開けると、ベージュ色の壁の10坪ほどの部屋が目の前に現れました。
部屋の窓際には高級そうな木製の机が置いてあり、その前には淡いグリーンのソファーセットがおいてあります。
そのソファーセットの隣には、理髪店で見かけるような大きな茶色い椅子が、半分リクライニングされておいてありました。
「ようこそいらっしゃいました。」
木製机の向うに座っていた白衣の女性が、今までかけていたメガネをはずしながら立ち上がって挨拶をしました。
「私が所長の吉野です。どうぞこちらへおかけください」
立ち上がったその女性の白衣の下は、白地にグリーンとピンクの花柄をあしらったワンピースで、ちょっと古風な感じがしましたが、背の高い魅力的な若い女性です。
わたしがソファアに腰掛けると、彼女は部屋の奥にある小さなキッチンから、コーヒーを入れて持ってきてくれました。
「今、ちょうどコーヒーを飲もうと思ってましたのよ・・・・ご一緒にいかがですか?」
ミントンのコーヒーカップに8分目ほど入ったコーヒーでしたが、砂糖もミルクもありません。
「あなたはブラックで飲まれる方でしょ?・・・わたしもそう」
彼女はちょっと大きめなマグカップを持って来て、私の正面のひとり用ソファアに腰掛けながらそういったのです。
もうカウンセリングが始まったんでしょうか・・・・・・
「ずいぶんお若い先生ですね。」
私がそう言うと
「心に悩みを持った患者さんなのに、ずいぶんお世辞がお上手ですわね」と微笑みました。
「ところで今日はどんなご相談なのか、こちらのアンケート用紙にご記入いただけますか?」
A4サイズの用紙には、氏名と住所、年齢などの記入欄と、症状やある程度の略歴を記入する欄がありました。
「お名前は川村さんですね。・・・・・あら、平安京大学のご卒業ですのね・・・・市役所にお勤めですか・・・・お子様はお二人・・・奥様は教師をしてらっしゃるんですね」
アンケートに書いたほかに、簡単なしつもんがあり症状についても聞かれました。
「ヘエ・・・鏡の中に老人が見えるんですね・・・・で、なにかを思い出して欲しいって言うんですか・・・・」
私は話をしながらまた、昨日の老人の姿や声を思い出していました。
「”打ち出の小槌”ってあの一寸法師のお話に出てくる、あのでんでん太鼓のようなもの?」
絵本の一寸法師を見れば「打ち出の小槌」は、何か小さな楽器のように見えるかも知れません・・・・・
この若い女性カウンセラーにはでんでん太鼓に思えたんでしょう。
「小槌ですから、くいを叩いたりするトンカチのようなものですよ」
「ああ、トンカチのようなものなんですか」
あまり興味がなさそうに彼女は鸚鵡返しで答えました。
「サア、では今度はこちらの椅子にかけてください・・・・・・」
彼女に促され、私は半分リクライニング状になった茶色の椅子に腰かけますと、その椅子はさらに電動で動き、水平近くまで倒れます。
「どうぞリラックスしてください・・・」
寝心地のいいベッドのようで、ふだんの私なら、すぐにでも眠りにつくことができるような感じでしたが・・・・これから催眠術に掛けられるという不安もあり、なかなかリラックスするっていうことはできません。
「ちょっと気になるでしょう?・・・でも催眠術って魔法じゃありませんからね・・・・これから、明るいライトを目の前でつけたり消したりしますが・・・・・これは速やかにあなたを催眠状態にしてくれます。」
そう言うと目の前にライトをつきつけ、スイッチを入れました。
そのライトはひとりでについたり消えたりする装置がついていて、女性カウンセラーがそばにいなくなっても、その状態を続けます。
強烈なライトの明かりがついたり消えたり・・・・・それを繰り返すうちに・・・わたしはだんだん目が重くなってきました。
そして、私は夢を見ているような状態になったのです。
その夢の中で・・・・・・わたしは「一寸法師」でした。・・・・・・・・・・!襲われた「お姫様」を鬼から救い出し、その鬼が忘れていった「打ち出の小槌」を「お姫様」がふると・・・わたしにはなにごとも起りませんでした。
「一寸法師のお話は、打ち出の小槌で願いがかなうんじゃないのか?」
「そうなんですよ・・・・打ち出の小槌は願いを叶える道具ではないのです。」
その声は、あの老人の声!
「サア、お起きなさい・・・・・あなたはもう全てを思い出したはず・・・・・」
わたしが目を覚ますと、そこにはあの「女性カウンセラー」の姿はなく、例の老人がスーツ姿で立っていました。
「あの打ち出の小槌は、あなたの願いを夢の中だけで叶えさせてくれる道具なんですよ」
「わたしの本当の姿は一寸法師なのか?」
「そうです・・・・あなたは一寸法師なのです。・・・・・もし願いがかなう道具であれば、あの鬼たちがなんで人間にならなかったのでしょうか?・・・・人にさげすまれ恐れられ・・・・そんな鬼の姿でいるよりも、人間になりたかったでしょうに・・・・」
老人は続けます。
「あなただって、3センチほどの人間でいるより、普通のサイズの人間になりたい、そして、お姫様と夫婦になりたい、普通の人間のように幸せになりたい・・・できれば出世もしたい・・・・そう思っていたはず・・・・・でも現実にはそのようなことは起らないのです。」
全てを思い出したわたしは愕然としました。
「特にあなた一寸法師・・・・法師というからには妻帯は許されません。・・・・でもあなたは姫との結婚を夢見た・・・・そして家族を持つという夢も見た・・・・出世もしたいという夢を見た・・・・・それだけなんです。」
老人の言葉を・・・・わたしは真実として受け止め始めました。
「昨日と今日・・・2日で、あなたは姫とセックスをし、彼女との間の子供を可愛がって家族の幸せを感じ・・・出世もしました。・・・・夢の中での願いは全てかなったのです」
「もう現実に目覚める時間なのですね・・・・・・・」
夢は終わったんだという自覚が生まれ始めていました。
そのとき老人は優しい声でこういいました。
「あなたがもし望むなら、あなたがもしこの夢の中の住人でいいと思うなら・・・私はあなたをこのままにしておいてもいいと思っていますよ。」
その老人の姿が少しづつ変化していきました。
「わたしは、閻魔大王・・・・あの世とこの世を結びつける管理をしていますが、あの鬼たちはわたしの僕・・・・あの鬼たちに、打ち出の小槌を返してくださらんか・・・・」
「私は現実の世界に返らなくてもいいのですか?」
「あちらの世に戻っても、あなたと姫が幸せになることはない・・・・お互い好きあっているのに、身分の違い、体格の違いがあって思うようには行かない・・・それならいっそ夢の世界を本物にしてあの世を棄てましょう。
こちらの世界で夫婦として幸せに暮らすほうがよいと判断しましてのう・・・・
今、この世界にいるうちに、打ち出の小槌をわたしの手元に返してくれれば、あなたは永遠にこちらの世界で暮らせますのじゃ」
そのとき、部屋のドアが開き・・・・・・「お姫様」が「打ち出の小槌」を持って入ってきました。
「あなた!。こんな小槌なんかいらないわ!。。。早く棄てて私達の幸せなこの世に住みましょう!」
こうして、私達家族は、現実逃避といわれても、幸せなこの夢の世界の住人として今でも住んでいるのです。
ただちょっと変わったのは・・・・妻が「身分が上」になったこと・・・・・もともと「お姫様」の妻で、私は「下僕」だったのですからしょうがない事ですけどね・・・・・
でも家族4人、幸せに暮らしているんです。
おしまい!
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