日本語で話そう

August 13, 2013
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カテゴリ: 中山道六十九次


和田峠登り口歩道に入っていきなり度肝を抜かれる。

「6月○日、この辺りで熊が目撃されました。登山する人はラジオなど音の出るものを付けるなどして十分気を付けてください」という立札を見たからだ。

夫が大げさにビビる。
ラジオなど持っていない。スマホにはラジオ放送のアプリが入っているが、いかんせんとっくに電波が届かなくなっている。

仕方がない音痴の歌でも歌おう。

山道は下草が刈ってあって広いし、歩きやすい。
でも、どこかに熊がいる気がして落ち着かない。
歩き始めはいつもエンジンがかからない夫、しょっぱなからの上りの連続で歌どころか、話もしない。
仕方がないので、リュックに結わえていた熊ベルならぬ「アメリカ自由の鐘」のミニチュアを盛大に振りながら歩いた。

和田峠までは距離的にはそれほどでもないけれど、標高差が私たちのところで600mだからかなりきつい。

8時頃登り始めて、10頃には最高地点に到着した。
今まで登って来た上田平、長門地区とは反対の諏訪や岡谷が見下ろせる。富士山は見えなかったけれど、南アルプス、中央アルプスが見渡せた。

ここで美ヶ原の方に登ると思われる人1人に会う。
まだ宿にいた旅仲間の誰にも追い抜かれていない。

休憩。
お昼にはまだまだだけど、せっかくの眺望。ここにも熊目撃情報。熊は怖いけど、座ってお握りが食べたい雰囲気。
宿で作ってもらったお握りの内1つを食べてしまう。

そして下諏訪に向かって長い長い下り。
いやあ、下りだからとなどってはいけない。碓氷峠のくだりもずるずると滑って谷底に落ちそうで怖かったが、それ以上の角度と砂利道、急角度で滑り降りる細い道。

膝のお皿が笑うと良く言うけれど、顔は引きつっていたと思う。
熊も怖いけど下り坂も怖い。
ハアハア言っても登りの方が良いよう~。
碓氷峠では手を差し伸べてくれた夫、今は自分の身を守ることで精いっぱい。
唯の街道歩きがなんでこんな危険なの?

2kmほど下り、西餅家跡近くで反対側から登って来る旅人に会った。きっと朝早くに下諏訪を出てきたのだろう。登りなのに早い。こちらルートの方が登りの距離は長いが、下りの膝への負担は少ないかもしれない。ここにも熊目撃の立札。

その直後に自転車を押しながら登って来た人に会った。
無理無理、あの川に落ちそうな滑るがけ崩れの場所は自転車押しては通れないだろうなあ。

そして少しの間車道を歩く箇所に出た。
車道の横の崖の上で痛くなった足をさすって休憩していると、来た方角から旅人がやって来た。直ぐ後から出発した旅人と思いきや、昨日の地図の2番目の和田の宿場から出発した旅人だ。
挨拶をする。
ここで彼に会ったということは3番目の旅人をも彼は追い越しているということか。

そこからはただひたすら下る下る下る、長い下り道。

諏訪の少し手前、下諏訪、春宮近くまで来た時、諏訪湖が見えた。
日暮れ前に着いた。
1人にしか追い抜かれなかったね。

春宮に参拝、終点の秋宮に行く前に、シルバーのお婆さんやお爺さんが接待する、歴史ある家屋を保存した無料休憩所で麦茶を貰って休憩。
お婆さんの信州なまり(本当は信州はそれほど強いなまりが無く、イントネーションの位置が標準語と違うのだが)が懐かしく、あまりに心地が良いので、おばあさんのついでくれる麦茶を3杯も飲んで、漬物を食べて、30分も油を売ってしまった。

そこを出て中山道と甲州街道の合流点でペットボトルの水を買っていると、
あれ? 道路の向かいの日帰り温泉の入り口で寛いでいる人を発見。
私たちの出発点に一番近いところから出発した3番目の旅人だった。

「いつ着かれました?」
「40分ぐらい前、温泉に入って出たところです」

なるほど、春宮参拝中か無料休憩所でか、それ以前のお握り食べて休憩中に抜かれていたのである。5街道完歩おめでとう。

私たちは3等賞。箱根で言えばシード権落ちかな。

最後の旅人は、宿場距離で言えばみんなの2倍歩かなければならない。そして登り道もかなりある、はたして夜までに下諏訪に着くだろうか。

下諏訪では歴史ある古い旅館をインターネットで予約した。そうしたら夫が、
「せっかく諏訪温泉地なんだからもっといいホテルに泊まろうよ」と言って、キャンセル。
わざわざ電車で一駅戻って、下諏訪より大きな上諏訪の温泉地で宿泊。

夫が会社からアナログで取った「紅や」の特別室。
昨日の民宿との格差があまりにも大きすぎる。

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「あああ、極楽。明日もう歩くのやめようかな。温泉に浸かってゆったりしていようよ」
やっぱり、そう言うと思った。

私も、そうでもいいかなと思い始めていたのであった。







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Last updated  August 13, 2013 06:00:54 PM
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