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雨は夜半を過ぎて少し弱まってきているようだったが、嵐の日のように道が川と化している。こんな日につき合わせるのは申し訳ない気がしてきたので、やはりお願いを取り下げようとくららさんのほうを向いた。
やわらかそうな巻き毛が雨に濡れてストレートになり、真っ白なドレスの裾には泥水がはねている。髪より少し明るい色の睫毛に縁取られた、南の海のように明るい青の大きな瞳は、星も見えないこんな夜よりもよく晴れた真昼の空が似合うだろう。まばたきをすると音がしそうなほど濃く長い睫毛も、今は雨に濡れそぼって重そうに下を向いている。
「あの、こんな日に・・・すいませんでした。マスターのご好意に甘えてつい助けてもらおうなんて思ってしまったんですが、これ以上ご迷惑をおかけすることは出来ません。引き返しましょう。」
それを聞いたくららさんは、不思議そうに首を傾け、
「ここまで濡れたなら、もう一緒だと思わない?エルフテイムが終わったら、一緒にカフェに行ってTUBASAさんに美味しい珈琲を入れてもらって温まりましょ。なにしろ飲み放題なんだから。夜食がわりにケーキかサンドウィッチも付けてもらっちゃうわ。」
そう言っていたずらっぽい微笑みを浮かべた。
二人で暗い夜の道を走っていくと、突然荒涼たる大地へと風景が変わった。エルベルグ山脈、テレット・トンネル付近だ。
ここに来るとロリンをテイムしたときのことを思い出す。HPの高い彼女には壁になってもらい、今までずいぶん苦労をかけてしまった。『ゴーレムは人間が召使として創り出した動く人形、偽物の命なのだから気にする事はない』なんて言う人もいるけれど、力のない私を支えてくれ、身を挺して守ってくれた彼をそんな風には思えない。
命を与えたのが神でも人間でも、この世に生を受けた限りは幸せをつかむ権利があるはずだ。仲間を増やして、せめて負担を軽減する事ができれば・・・。
山を少し登ったところからテレット・トンネル北口へ入った。そこはU字状の洞窟のような場所で、さまざまな種類のモンスター(アイウイング、ゴートマン、リーチ、堕落聖職者)が住んでいる。レベルは20強というところだが、全てZinなのでなかなかに手強い。ロリンをテイムしたときには歯が立たず、奥までは辿り着けなかった。
そのときのことを思い出して私は立ちすくんでしまったのだが、くららさんは少しも臆することなく進んでいった。その道すがら襲い掛かるモンスターにボトルを投げ、全て一撃で倒していく。とんでもない黄ダメを目にし、一緒にいるこのプリンセスの底知れない強さを知り、空恐ろしい気持ちになった。この華奢な体のどこからこんな力が出るというのだろう。
ボトルを操るということは魔力ということなのか。前に一緒に狩りをした人が、「プリンセスは火力が中途半端だから」などと言っていたが、それは大きな間違いだと知った。
テレット・トンネルにエルフ暗殺者がいるとは聞いていたが、この前来たときは柱に阻まれて入り口まで辿り着けなかった。どうやって入るのだろうと思っていたら、
「ちょっとはなれてて」
そう言うと柱に攻撃を攻撃を加え始めた。するとほどなくして柱は地響きを立てて、地中に沈んだでしまった!そうか、ああやって障害物を消していけば良かったのか。でも非力な私では何時間かかったか分からないな・・・。
テレット・トンネルに潜るとそこはトンネルというよりは鍾乳洞のような広い迷路のような空間だった。ところどころ槍の先のような岩が下から上から突き出している。この岩の柱もさっきと同様の障害物となっているようだ。
「えっと~、どこだっけなぁ」
と、くららさんが独り言をつぶやいたが、不安そうな様子はない。
先ほどと同様、くららさんが障害物を攻撃したり万能鍵を使ったりして取り除き、とくに迷う様子もなく先へ先へと進んでいくと、木の柵に囲まれた場所に到着した。いた、エルフだ!
くららさんがHPを極限まで削って渡してくれた。いざ説得開始!しかしエルフが攻撃してきてしまったのでウェンディ、スウェルファー、ロリンが攻撃して殺してしまった。
「PETと召還獣全部しまってくれる?」
「す、すいません。」
再びHPを減らしたエルフを下さったが、今度は近づきすぎて笛殴りで殺してしまった・・・。なんてドジ!
「もうちょっと離れてて、足止めするから」
「はい、ほんとうにすいません。」
リトルウィッチに変身してくるくるとタクトのようなものを回すと、地面に可愛らしいウサギが数匹エルフの周囲に輪を描くような配置で出現した。ラビットラッシュという敵を足止めする技だ。少し離れた場所で説得を試みるがなかなか成功しない。ロリンをテイムしたとき一度で成功したから、チャージポーションを持ってくるということを忘れていたのだ。何度も『叫ぶ』でCPをこつこつ貯めるのを見かねて、くららさんがドラゴンの心臓15秒を一つ下さった。すると何度目かのトライでやっと成功!や、やったぁ~。
テイム出来たエルフをしまい、同じ手順でもう一匹。今度はラージチャージポーション10個をいただいた。
「申し訳ありません・・・。」
穴があったら入りたいとはこのことだ。人に無料で支援を頼んでおいて、自分は物資一つ持ってきてないなんて・・・。
ありがたく貰い物でCPのチャージをし、説得を始めるとポーション5個目で成功!
こうしてレベル3の暗殺エルフZin二人が私の仲間になった。
「本当にありがとうございました。大感謝です。」
「では戻りましょうか。」
外に出ると雨はいつの間にか止んでいた。空が祝福してくれているかのようで、思わず天を仰いで祈りを捧げた。
地上に出た私たちは冷えた体を温めるため、一路ツバサカフェを目指した。ドアを開けるとTUBASAさんが何も聞かずに微笑み、すぐに温かい珈琲とふかふかのタオル出してくれた。あらかじめ耳してあったのか、まだ湯気の上がっている出来立てのスコーンも用意してくれていた。深夜なのにどこで手に入れたのだろう、不思議に思っていると
「このくらいはすぐ自分で作れるよ。ケーキは無理だけどね。」
「ええ~。生クリームたっぷりなのが食べたかったのになぁ。」
くららさんはふざけてわざと不満げに口を尖らせてみせた。こういう仕種もとても可愛らしい。さっきまで凶悪なボトルを投げていた人とは思えない。
「スコーンにはクロテッドクリームの方がよく合いますよ、お姫様。」
と、TUBASAさんがうやうやしくスコーンに添えてある黄色っぽいクリームを指し示した。言われたとおり、焼きたてのスコーンにたっぷりクロテッドクリームを塗りつけて頬張ると、思わず笑みがこぼれてしまうほど美味しかった。スコーンの素朴な甘みにバターのようにこってりとした風味のクリームが素敵によく合うのだ。自家製だという林檎ジャムを付けても美味しかった。
タダだからとくららさんは珈琲を2回もおかわりし、店を後にした。
東の空がもう白んできている。夜明けの澄んだ空気を吸って、生まれ変わったような気分を味わった。頑張ろう、いつか父母の元に帰れるその日まで。エルフたちをしまった飼育記録をそっと抱きしめた。
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つづき
エルフテイム編終了です。こんな長い文、読書感想文でも書いた事ないよ(;´Д`)ハァハァ
ぷりんせすくららさんはテイム支援のプロです。珈琲でお腹がたぷたぷなので、もうタダ働きは致しません。規定の料金を支払ってお願いしましょう( ´∀`) 詳しくは下記参照。
http://plaza.rakuten.co.jp/tiyosuke/
小説のとおり私は物資を持たずに行ってしまい、本当に迷惑をかけました^^; 消費してくださった万能鍵2個は4個にして返しましたが、心臓と青ポはまだです(m´・ω・`)m ゴメン… そのうち倍返し予定です(ドロップで返そうと思ってるセコイ私)。
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