物語は劇的に始まる。 エリート外科医・ Timo が仕事を終えて帰ろうと言う時、看護婦の1人が彼の帰路をはばむ。 “先生、お嬢様のお名前は何でしたか・・・” 彼の娘・アンジェラが交通事故で瀕死の状態で彼の勤める病院の救急に運ばれてきたのだ。 手術の待ち時間に、生と死をさまよう娘に語りかける Timo 。 語りかけるのは、彼女が生まれる前に、彼が人生で唯一愛した女性の事だった・・・。 エリート外科医でジャーナリストの美しい妻を持つ Timo と 幼い頃の性的暴力のトラウマを持ち貧しい女性 Italia 、 一見は正反対な2人が内面的な孤独感を埋めあうように強烈にひかれあう。 全編を通しての生々しい描写は、 Italia の住む町の誇りっぽさや 人物の汗までも感じるかのようなリアル感にあふれています。 人は亡くした時にその大切さを知ると言いますが、愛する人の死に直面した Timo (瀕死の娘、そしてネタバレなので書きませんが他にも3人の死に直面します) が、その言葉を体言してくれているかのよう。 はっきりいって読んでいてブルーになる悲しく切ないストーリーですが、 読まずにはいられなくなるほどひきこまれます。 本はイタリアのストレーガー賞を受賞したベストセラーらしいですが、それも納得です。
タイトルの“non ti muovere = 動かないで”という意味で、 生と死の間をさまよう娘に言う言葉かと思ったら、それ以外のあらゆる場面でも このフレーズが斜体字で出てきて、ある意味このお話のキーフレーズになっています。 でもこの言葉を発するのは全てTimoなので、“動かないで”というより “動くんじゃない”とか“動かないでくれ”って方がしっくりくる感じがしました。 ・・・こんな短いフレーズでも訳し方もいろいろ!
これもTVで映画を少し見た(確かマニーノを寝かしつけながら自分も寝た?) ので、読みながら、映画のシーンがよみがえってきた。 映画のオフィシャルサイトを見て知ったのだけど、作者のMargaret Mazzantiniと 監督・脚本・主演のSergio Castellittoって夫婦なんや! 映画を先に見たせいもあるけど、この主人公の役は Castellitto に適役! 彼もさながら、彼の愛人 Italia を演じたPenélope Cruzがまさに原作通りだった ・・・いや、でもサイトを見直すと、本で感じた Italia はもっと下世話で不細工かな。
Sergio Castellittoは、幅の広い役柄をこなす、イタリアを代表する演技派俳優。 彼の映画で他に私が見たのはTVで “Catelina va in citta` (カテリーナ都会へ行く)” この中でのCastellitto は主人公のカテリーナのクレイジーな父役! イタリアでの最新作はカンヌ映画祭出品作“La stella che non c'e`”(toscaさんのレビュー) や過去より “グラン・ブルー” や “可愛いだけじゃダメかしら” 、“マーサの幸せレシピ”、 “パリ、ジュテーム”、“ナルニア国物語”などの外国作品にも出演。 特に“La stella che non c'e`”は現代の中国の問題や異国間のカルチャーショック みたいなものも絡んでるので見てみたいな。 しかし、“La stella che non c'e`”、どこで検索しても日本のサイトには出てこないのは何で?