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サンガンピュールの物語(女科学者)PL



-プロローグ-

 ある蒸し暑い7月上旬の夜のこと。Kは疲れた顔をして土浦駅前の大通りを歩いていた。これからサンガンピュールが待つ自宅へ帰るのである。Kは仕事での疲れが溜まっていた。いくつか報告書を求められているのである。Kは東京の出版社で働いている。主な仕事は旅行雑誌の取材や編集といったものだ。旅好きのKらしく、自ら現地に出向くこともしばしばで、時には何週間も海外出張ということもある。サンガンピュールと初めて出会ったのも、旅行雑誌に関する取材のためにロンドンに出張していたときだったのだ。

 夜9時頃だったろうか、Kは上司の悪口をブツブツ言いながら暗い夜道を歩いていた。
 「課長の野郎、俺をこき使うんじゃねえよ!厳しい任務を課せやがって」
 家庭でサンガンピュールに見せる顔とは程遠い、Kの表情がそこにはあった。世の中のサラリーマンと同じように、Kにも不満が募っている。
 「世の中、自分の思い通りには行かないからさ、仕方ねえよなあ…」
 Kはこうつぶやいた。

 そんな中、土浦の町の中心街を歩いている時のことだった。彼は路地裏にある怪しい家から、これまた怪しいことを聞いた。そしてそれは、日本中を巻き込む恐ろしいことであった…。
 「ふう、これで私のウィルスを作る計画が整ったわ。これで茨城県はおろか、日本中から男を消し去ることも可能になるわ!今までこの世の絶対悪・男たちに虐げられてきた私たち・女が、逆襲するときが来たのよ!オホホホホ…」
 何と恐ろしいことであろう、不気味な女の声を聞いたKは、これは大変だと思い、家路を急いだ。そして自宅に帰った後、すぐにサンガンピュールに知らせた。これを聞いたサンガンピュールは大変に驚いた。
 「ええーーーっ!!それ怖いよ、殺人ウィルスなんて…。おじさん、ほんとなの!?」
 「本当だよ!炭そ菌みたいな殺人ウィルスが迫ってんだぞ!俺は確かに聞いたんだ!」
 Kは声を荒げて言った。しかしサンガンピュールは頭の中が?マークでいっぱいになった。
 「炭そ菌って、一体なんなの?」
 炭そ菌といえば、9・11テロの直後にアメリカ国内で大量に出回った劇物の粉である。
もしそれと同等のウィルスをばらまかれれば、取り返しのつかない事態になるとKは十分に予想していた。

 市長にも緊急の電話を入れて、夜分こんな時間になんだろう、と市長も少なからず思っただろうが、耳に飛び込んできた情報はとても恐ろしいものであった。Kから連絡を聞いた市長は思わず驚いた。
 「ええーーーっ!!殺人ウィルス!?もしそれが本当だとしたら大変なことになるぞ!
すぐメモしておいて、明日から緊急の会議を開こう。Kさん、重要な情報をありがとうございます」
 市長は市を挙げて対策を練ることを約束した。
 今度の相手は悪の女科学者。サンガンピュールの新たな戦いが始まろうとしていた…。

 ( 第1話 に続く)


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