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サンガンピュールの物語(女科学者)10話

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 指令を受けたサンガンピュールは、現地へと飛んだ。しかし北隣の県に移動するので、ジェットパックにはかなりの負担がかかることになる。途中で一休みしつつまた大空を飛ばなければならない。

 そんな中、サンガンピュールには最近になって葛藤が生じていた。確かに女として、男中心の社会は改めなきゃいけない。男女平等、でも特に女の人をもっと大切にしたいという思いがあった。
 この久米奈緒美による大騒動が起こる以前のことである。タバコやゴミのポイ捨てをしていた男性を注意したが・・・、
 「ちょっと、せめてタバコは携帯灰皿に入れなさいよ!」
 「グチグチうるせえなあ。これだから女のスーパーヒーローは・・・」
 この逆ギレに対して彼女はショックだった。彼女は言い返した。
 「グチグチうるさいってどういうことなの!あんただってきちんとしなよ!」
 しかし、テロリスト集団は男を絶滅させるための薬を開発していた。この集団を放っておくわけには当然いかない。実に複雑な胸中であった。

 サンガンピュールは空を飛びながら福島県に入った。そこから下を眺めて人や車がどんな動きをするかを確かめ始めた。中通り地方の東の端だろうか。
 そんな中、彼女の携帯電話に衝撃的な情報が入った。久米らの乗った車が福島県須賀川市の国道118号線で事故を起こしたというのだ。すぐさま地上に降り、近くの地図で現在地を確認。コンパスを片手に須賀川方面へまた飛び始めた。
 現地に到着してみると、そこには凄まじい光景が広がっていた。久米らの乗った車と対抗車が共に大破。特に警察から逃げるためにスピードを出し過ぎていたせいか、久米の車は原型を留めないほど大破しており、部下の中には意識不明の重体の者もいるという。一方の対向車両のドライバーもケガを負っている。
 どちらに責任があるのかはさておき、サンガンピュールはこの惨状を見ただけで一瞬、愕然とした。しかし内心ほっとした表情だった。

 「・・・こんな終わり方でいいのかなあ。でもどっちにしろ、事件は解決かな」

 その時、久米はこんな言葉を言い残した。

 「まさか・・・、ここで終わるなんて・・・!サンガンピュール、あたしが地獄に落とされたとしてもそこから這い上がって、あんたを殺すから・・・ね・・・!」

 サンガンピュールもさすがに少しの恐怖を感じた。

 あっけない形で久米らの身柄を拘束することができた福島県警察。とりあえず病院に搬送し、そこで任意の事情聴取を行うことにした。ケガから回復し、なおかつ関係者の話を聞いたうえで容疑が固まり次第、彼女らは逮捕されることになった。
 須賀川で久米らが交通事故に遭ってから3週間は経過しただろうか。退院すると同時に久米奈緒美は他の仲間全員とともに警察に逮捕された。これで男絶滅を企む女科学者のグループは一網打尽とされたわけだ。


 東京の国立感染症研究所によると、その殺人ウィルスには人体に対して何の毒性も持たないことが判明したことがすでに知られていた。警察が取り調べ中の久米、あるいは開発に協力した仲間に問い正したところ、まだ影響力の弱い菌しか開発できておらず、男一人を殺すには今のあと50倍もの菌のパワーが必要だという。つまり、男を滅亡させるテロ計画というのは、大言壮語だったわけである。
 この久米らの証言を受けて、このテロ騒動の発端となった土浦市および関東1都6県はテロに対する安全宣言を出した。よってこの事件は解決への道のりが見えた。

 ( 第11話 に続く)


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