にしわき眼科クリニック。

にしわき眼科クリニック。

2019.08.08
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カテゴリ: 外来診療一般
​  結膜炎や麦粒腫(ばくりゅうしゅ)、眼瞼炎(がんけんえん:目のマイボーム腺という分泌腺の炎症)などの治療には、抗生物質の点眼薬を用います。









 ニューキノロン系のクラビット、ガチフロ、ベガモックスなどの点眼薬が有名で、皆様も眼科で処方されたことがきっとあると思います。









 このニューキノロン系の点眼薬は非常に良く効きますし、ほとんどの方はすぐに症状が改善するのですが、あまりにも広く使われているために最近ではこの系統のお薬が効かない「耐性化」症例が急激に増えてきています。










 そしてニューキノロン系で効果が不十分であれば他の系統の目薬を使うことになるのですが、実はその「ニューキノロン以外」の抗菌点眼剤のラインナップが非常に少ない、セイフティネットが少ないのが「現在の眼科医療の大問題」なのです。










 これが何故かというと、抗生物質と言うのは「溶けにくくて目薬にしにくい」という欠点があり、それで目薬にしやすいニューキノロン系以外は急に「貧弱なメニュー」になってしまうのです。










 勿論違う系統の目薬もあるにはあります。でもそれらの多くには同時に「大きな欠点」が存在します。








 具体的に言うと、ニューキノロン系が効かなかった、もしくは効果不十分だった場合の多くには、第2選択剤としてセフェム系のベストロン点眼液が使われます。これは抗菌スペクトル・作用機序が異なっていてニューキノロン系が効かないばい菌に対して効果があり非常にいいお薬ではあるのですが、安定性に乏しくて「1瓶が1週間しか持たない」という短所があります。そのため治療が長期にわたる場合には毎週
毎週新しい目薬に変えなくてはなりません。










 それ以外だと、アミノグリコシド系のトブラシン点眼薬などもありますが、点眼時の刺激が強く、また点眼後に高率にかゆみや充血を起こしてくる気難しい目薬であり、眼科専門医としての観点から見ると、「リスクとリターンのバランスが非常に悪い。いいお薬では全くない。」という評価となります。













 以上をまとめると、











​  ​抗菌点眼剤の世界には大きな問題がある。ニューキノロン系の目薬は王様的な存在で良く効くけど、耐性化で効かない症例も急激に増えてきているし、万一の場合の、王様の控え・セイフティネットとなる有力な点眼薬が極端に乏しい​








 ということになります。これほどまでに医学が進歩しているのに、2019年8月現在の日本の眼科点眼治療の現状は、実はこういう残念な有様である、ということなんですね。(続く)

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最終更新日  2019.08.08 11:24:04


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