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2006.08.17
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ななつのこものがたり
加納朋子(文)/鈴木健(絵)『ななつのこものがたり』
~東京創元社、2005年~

 加納朋子さんのデビュー作『ななつのこ』の主人公、入江駒子さんが、はじめてファンレターを出した相手、佐伯綾乃さん。佐伯さんの作品のタイトルが、『ななつのこ』です。加納さんの作品は、作中作の『ななつのこ』という短編集とリンクした、日常の中の謎を描いた作品です。
 『ななつのこものがたり』は、作中作の『ななつのこ』を絵本にしたものです。それぞれのお話自体は、加納さんの『ななつのこ』で紹介されています。この絵本は、全部で七つのお話を、お母さんが子どものはやてくんに聞かせてあげる、という構成になっています。物語の主人公の名前も、はやてくんです。

 今回は内容紹介は書かなくてもいいかな、と思っていたのですが、簡単に謎の部分を。
「すいかの涙」
 はやてくんの家の庭に、すいか泥棒が入っていました。はやてくんは、自分が夜に見張りをする、と言いだし、一晩中番をしました。それでも翌日になると、すいかが盗まれているのが分かったのです。 悔しくなったはやてくんが家を飛び出し、めちゃくちゃに走っていると、白い建物がありました。その中には、あやめ色のカーディガンを着た女性がいました。だからはやてくんは、彼女にあやめさんというあだ名をつけました。はやてくんをみたあやめさんは、どうしたの、と声をかけてくれました。それではやてくんは、出来事を話したのです。あやめさんは話を聞いて、出来事の真相と、一つの解決策を示してくれます。
「金色のねずみ」
 はやてくんが住む村のお寺には、こんじきねずみという宝が伝わっていました。夜になるとそのねずみが動き出す、という言い伝えもありました。はやてくんは、本当かどうか確認しようとします。そして、ある夜、ねずみが置いてあった場所にないことが分かったのでした。
「空の青」
 夏休みの宿題を、友達の家にしにいったはやてくん。友達もおおぜい集まっていて、絵の宿題を終わらせるつもりでした。ところが、みんなの絵の具の中から、青い絵の具だけがなくなってしまったのです。
「水色のチョウ」
標本として、水色のチョウを作ってきた友達がいました。みんなが<水色アゲハ>と呼ぶようになったそのチョウを、はやてくんは自分もつかまえたいとがんばります。そして森の中で、はやてくんはついに<水色アゲハ>を見つけたのでした。
「竹やぶ焼けた」
 和歌友達だった、おじいさんとおばあさんがいました。ある日おじいさんは、おばあさんに抱いていた恋心を、和歌によんで送りました。しかし、それに対するおばあさんからの返事がなかったらしく、おじいさんは悲しそうでした。はやてくんがこのことをあやめさんに話すと、あやめさんは、話してもいないおばあさんの背の高さを言い当てたのです。
「ななつのこ」
こんじきねずみの事件の後、お寺には三匹のねこが住むようになったのですが、その中のシロが七匹子どもを生みました。七匹の子ねこは、それぞれ村の人にもらわれていったのですが、翌日、子ねこをもらった全ての家から、子ねこがいなくなっていたのです。
「あした咲く花」
 はやてくんは、あやめさんにお父さんから聞いた話をします。お父さんが子どもの頃、お父さんはおもちゃの拳銃をもっていました。お友達が、海賊ごっこをするとき、宝箱の中にその拳銃もいれようと提案しました。ところが、そのお友達は宝箱を隠しに行ってから帰ってこず、それからすぐに引っ越してしまったのでした。

 あやめさんは体が弱くて、はやてくんが訪れたときも、体を起こすことができない方です。だから、はやてくんから話を聞くのを楽しみにしているのでした。

 菊池さんの絵も加納さんの文章もとても優しくて、本当に素敵な絵本でした。
 なかなか眠ろうとしないはやてくんに、お母さんは一晩ごとに、物語の中のはやてくんの話を聞かせます。だから、ときどきはやてくんへの呼びかけの言葉もあって、そちらも良かったです。お母さんは「きみ」と呼びかけるので、なんだか不思議な感じになります。明日から旅行に出る都合もあり、今日は明るいうちに最後の二話を読んでしまいましたが、やっぱり寝る前に一話ずつ読むのが良いですね(昨夜までそうしていました)。
 読み終わってしまうのがもったいないと思えるくらい素敵でした。これからも、疲れたときなど、読み返していこうと思います。

(追記)
 いったん記事を書いてから、思っていたのに書いてないことがあったと思い返したのですが、さらに考えて、思うところがありました。一応、文字色を変えておきます。
回文の話が出るときに、お母さんの名前も回文になっていることが明かされます。そして最後に、はやてくんに聞かせていたお話が、お母さんの大好きな本に載っているお話ということも明かされます。そうすると…。このお母さんは駒子さんなのかな、と思ったのでした(本を読むときはほとんど何も考えないので、読み終わってしばらくしてから思い至りました)。そしてそう思ってみると、物語がずっとずっと深く感じられるのでした。
 素敵な本です。大切にしたいです。





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Last updated  2006.08.17 19:27:25
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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