にゃんでんかんでん

著者名　さ行

一瞬の風になれ　イチニツイテ・ヨウイ・ドン（佐藤多佳子）
　イチニツイテ：春野台高校陸上部。特に強豪でもないこの部に入部した２人のスプリンター。ひたすら走る、そのことが次第に２人を変え、そして部を変える…。
　ヨウイ：陸上経験値を上げてゆく新二と連。才能の残酷さ、勝負の厳しさに出会いながらも強烈に感じる、走ることの楽しさ。意味なんかない。でも走ることが単純に尊いのだ…。
　ドン：部長になった新二とエースの連。春高陸上部の仲間たちとのハードな練習の向こうに見据えるのは、この部で、このメンバーで、インターハイに行く、ということ…。全てはこのラストのために。
　思わず胸が熱くなる、走り続ける青春を描いた　とびきりの陸上青春小説。
　２００７年本屋大賞受賞作です。陸上にかける少年の成長物語。主人公の新二の周りには天才が二人。サッカーでプロ入りするほどの兄、そしてライバルで幼馴染、陸上で名を知られる連。そんな二人の間でも卑屈になることもなく、素直に彼らの力を認め、憧れ、そして近づこうとする。そんな新二の素直さ、ひたむきさが良いです。４００ｍリレーの場面はまるで自分が走っているような気分。ものすごい爽快感！本当に気持ちが良かったです。第２部で待ち受ける苦境では涙、涙・・・。そしてラストは・・・。是非是非、読んでいただきたい１冊。陸上なんて全く縁のない私ですが、とても楽しめました。青春小説まっしぐら、という感じですが、読後感がとても爽やかです。個人的には舞台の神奈川県で生まれ育った私には、知っている地名が多く登場する事もあり、その点でも楽しめました。（2006/4/11）

きみの友だち（重松清）
　嬉しいこと、つらいことがいっぱいあったから、「友だち」の意味がわかった。ある事故が起きてから誰とも付き合わなくなった恵美、何をやってもぐずな由香。勉強もスポーツも抜群で仲の良いライバル同士なのにいまではすれちがう関係のブンとモト。彼らを通して子どもたちが衝突や痛みや喪失を乗りこえて輝く「友だちという関係」を描く最高傑作。
　あの頃は小さな世界の小さな事で泣いたり笑ったり、それでも懸命に生きていたんだよな。と懐かしく、自分の小、中学生時代の頃を思い出して読みました。「友だち」について考えさせられるお話でした。胸がキュンとなり、何度も涙が出てきました。お勧めです。（2006/7/11）

小学五年生（重松清）
　人生で大事なものは、みんな、この季節にあった…。１０歳もしくは１１歳。男子。意外と大人で、やっぱり子ども。心に寂しさを抱えながらも、健気に生きる少年たちを描く、笑顔と涙の少年物語全１７編。
　主人公は小学５年生の男の子。その微妙な時期の微妙な心情が、よく書かれています。ちょっぴり切なかったり、大人っぽくなってきている同級生の女の子にドキドキしたり・・・。一編、一編はすごく短い話なのですが、どのお話もなぜかとても余韻が残ります。（2007/7/18）

クローズド・ノート（雫井脩介）
　香恵はバイトとサークルに勤しむごく普通の大学生。ある日、前の居住者が置き忘れたノートの束を見つける。そのノートが開かれた時、彼女の平凡な日常は大きく変わり始めた…。携帯サイトで１００万アクセスを突破。『火の粉』『犯人に告ぐ』の俊英が贈る、切なく暖かい恋愛小説。
　伊吹先生が残した１冊のノート。そのノートを香恵と一緒に読むことによって伊吹先生がとてもリアルに活き活きと感じられ、自分も彼女を知っているかのように感じられました。どうしてこんなにも？と思ったのですがそれは巻末に著者から説明があり、納得しました。物語の中盤からは大体のストーリーは解ってしまいましたが、香恵の恋の行方が気になって　引き込まれてしまいました。そしてすっかり感情移入。星美さん（恋のライバル？です）に負けるな！と香恵の恋を応援してしまいました。素敵な余韻の残る物語でした。（2006/5/29）

ドロップ（品川ヒロシ）
　漫画「湘南爆走族」と「ビーバップハイスクール」にあこがれて、「不良」になることを決めた信濃川ヒロシが狛江北中へと転校してきた。そこで待ち受けていたのは、ヒロシがまさに漫画で読んでいた不良生活だった。８０年代東京、根性焼き、木刀、バット、鉄パイプ…。人気お笑いコンビ・品川庄司の品川ヒロシが書き下ろした、抱腹絶倒の青春小説。不良少年のバイブル登場。
　一昔前の不良のお話。「昔はボクもこんなやんちゃしちゃいました～」みたいな自叙伝かと思いながら読んでしまったのですが、そうではなかった。（のかな？）文章は『作文』のようでしたし、たいして面白くはなかったです。（2007/2/14）

行きずりの街（志水辰夫）
　女生徒との恋愛がスキャンダルとなり、都内の名門校を追放された元教師。退職後、郷里で塾講師をしていた彼は、失踪した教え子を捜しに、再び東京へ足を踏み入れた。そこで彼は失踪に自分を追放した学園が関係しているという、意外な事実を知った。十数年前の悪夢が蘇る。過去を清算すべき時が来たことを悟った男は、孤独な闘いに挑んでいった…。日本冒険小説協会大賞受賞作。
　主人公の波多野が行方不明の教え子を探すうちに以前勤めていた学校の裏の事件巻き込まれ、隠された真実が浮き彫りになってきます。スリルがあって　ひきこまれました。文章も巧く、独特な調子がいい感じです。（2007/6/27）

どれくらいの愛情（白石一文）
　一体、この私は何者なのだろうか？人間の究極の進化は、死ぬということなのか。根源的な問いの先にあるものを知るには、目に見えないものを、見ることが必要なのだ。その先にある、新たなるカタルシスへと読者を誘う。『２０年後の私へ』『たとえ真実を知っても彼は』『ダーウィンの法則』『どれくらいの愛情』を収録。あなたに贈る、最も贅沢な珠玉の恋愛小説集。
　『２０年後の私へ』はいい話でした。しかし他の作品はピンときませんでした。書き下ろし長編の表題作は、怪しい先生（病を治したり、未来を見たりする）が出てきて私には馴染めませんでした。そもそも作者のあとがきを先に読んでいたらこの本を読むことはなかったでしょう。あとがきを読んで、共感できた人にだけ読んで欲しいと思います。(2007/5/7)

生協の白石さん（白石昌則著　東京農工大学の学生の皆さん）
　白石さんは東京農工大学生協の職員さん。学生の要望や質問を受け取って回答する「ひとことカード」の担当者です。ひとことカードには、時に「単位売って」「牛を置いて」「梅ねり始めてください」など風変わりな「ひとこと」も寄せられるのですが、どんな要望にも誠実、機知に富んだ回答をしてくれる白石さん。その心温まるやりとりの記録がついに単行本化。東京農工大生協の「ひとことカード」傑作選。
　ふざけているとしか思えない要望や質問。普通なら黙殺してしまうか、「無理だ」の一言で片付けられてしまうような『ひとこと』にも　誠実に答える白石さん。その答えもユーモアを交え、とっても気か利いています。思わず　くすっ　と笑ってしまう回答を繰り出す白石さん。
尊敬です。(2006/4/14)

あなたに逢えてよかった（新堂冬樹）
　もし、かけがえのない人が自分の存在を忘れてしまったら…。紅茶専門店で働く夏陽を、常連客の純也がデートに誘って始まった二人の恋。しかし、半年後に彼らを襲ったのは、進行形の記憶障害・MCI（軽度認知機能障害）だった……。記憶障害という過酷な運命の中で、二人はひたむきに生きてゆく。心に深く刻まれた“あの思い出”に願いをこめて―新堂冬樹が“絶対の愛”を真正面から描いた「忘れ雪」「ある愛の詩」に続く純恋小説３部作、完結篇。
　愛する人が自分のことも忘れていってしまう・・・どこかで聞いたような話。新鮮味には欠けました。しかしラストで夏陽と純也の思いかけない繋がりがわかり、思わず涙が・・・。作品としては『まあまあ』でした。(2006/12/6)

←文庫にはＣＤはついていないようです。
ある愛の詩（新堂冬樹）
　イルカと話ができる青年・拓海と、東京から訪れた声楽家志望の歌姫・流香とのピュアで切ない恋の物語。小笠原の青い海でイルカのテティスと共に育った、あまりにも純粋な青年・拓海と東京からやって来た愛を信じられない声楽家志望の美しき歌姫・流香はテティスに導かれ、きらめくドルフィンビーチで運命的な出逢いをする。帰京した流香にはコンクール出場に向けて重大な悩みがあった。そんなある日、「君の笑顔が見たいから」ただそれだけの理由で、上京して来た拓海は、流香のこころの闇を知り、彼女のためにある決意をする。ひかれあいながらも想いを告げられず哀しい運命に翻弄されるふたり。心ふるえる、初めての体感ピュア・ストーリー。業界初の小説と音楽のコラボレート作品。
　母に捨てられ愛を信じられなくなった流香。そんな流香を優しい愛で包み支える二人の男性　間宮、そして拓海。二人の間での流香の煮え切らない態度にはイライラさせられました。しかし、流香は事実---母の愛を知った時初めて自分の内にある愛も信じることが出来たのでしょう。とても素敵な物語でした。(2006/3/14)

黒い太陽（新堂冬樹）
　虚と実が絡み合った夜のサンクチュアリ“キャバクラ”。そこは、たったひとりの勝者しか存在しない場所。池袋のキャバクラに勤める新人黒服の立花は、大嫌いな水商売の仕事をしながら父の入院費用を稼いでいた。やがて、風俗王の異名をとる藤堂観光社長から才能を見込まれた立花。幹部研修の系列店でカリスマ・ホール長の長瀬と出会い、この世界の魅力に取り憑かれていく。３兆円産業の頂点に君臨する、風俗王を目指した男の見たものとは…。風俗業界の闇に挑んだ傑作サスペンス。
　キャバクラの舞台裏がリアルに書かれていてとても面白かった！(2006/4/25)

砂漠の薔薇（新堂冬樹）
　ハイソな奥様の輪に加わり、娘の「お受験」にのめり込む中西のぶ子。彼女は、なぜ親友の娘を殺す必要があったのか。平凡な主婦を殺人へと駆り立てた、日常生活に潜む狂気を描く、衝撃のクライム・ノベル。
　「お受験」にのめりむ主婦達。表面上は仲良くしていてもその実は隙あらばと足の引っ張り合い。一人でも受験者を減らすためなら脅迫だって厭わない。恐ろしい世界でした。春奈ちゃん事件を思い出してしまいました。(2006/4/16)

底なし沼（新堂冬樹）
　返せないのに、なぜ借りる。エグイ取立に追い込まれ、足掻くほど泥沼に沈んでゆく債務者たち。一匹狼の闇金王・蔵王のシノギは、サラ金業者から債権を買い、完済した借金をさらに払わせる「二重取り」。商売敵は絶望のどん底に突き落とし、背後の広域暴力団すら歯向かえば容赦なく踏み潰す。最後に笑うのは誰なのか。借金で借金を返す這い上がれない無間地獄。真の闇金をえぐり出した極悪金融小説、迫力のノンストップ・パワープレイ。
　新堂氏の描く暴力シーンは吐き気がするほど凄惨。凄惨すぎてお勧めはできないのですが、もともとは取立てやの蔵王と、一度は借金地獄から這い上がってきた結婚相談所社長の日野の些細な対立が　暴力団を巻き込み次第にエスカレート。退くに退けないところまで追い込まれていく様子、互いの駆け引きは面白かった。最後に驚きの真実もあり、過激すぎる暴力シーンさえなければ・・・と思いました。(2006/11/7)

栄光なき凱旋　上・下（真保裕一）
　パールハーバーは襲撃され、リトル・トーキョーは震え上がった。一人の女性を愛したジローとヘンリー。白人の恋人との結婚を決めたマット。彼らの明日を日本軍の真珠湾攻撃が引き裂いた。アメリカで生まれた日系２世たちは、自らのために戦う決意をする…。ジローは日本語を自在に操る語学兵としてアメリカ陸軍情報部へ転身。日系人の強制収容に抗議するヘンリーは法廷の場へ。マットは友と銃を手にする決意を抱く。奪われた未来を取り戻すため、彼らはそれぞれの戦いへと挑む。愛する者のために銃を手にしたジロー、ヘンリー、マット。３人の若者が、未来を掴むために地獄の戦場を駆けめぐる…。
　終戦の時は近づいていた。アメリカ軍は日本軍を罠にかける秘密の作戦を立案する。その命令を受けたマットは太平洋の小島でジローと出会い、彼の過去の秘密を知る。収容所から日系部隊へ進んだヘンリーは、仲間とともにイタリア戦線へ投入され、過酷な戦場に身をさらしていく。やがて彼らが再会する時、運命は三人に残酷なまでの試練を与える。愛、友情、生と死。魂を揺さぶる感動のエンターテインメント巨編。第２次世界大戦という激動の時代に生きる若者を描く青春群像大作。
　真珠湾攻撃当時、ハワイ、そしてアメリカ本土に住む多くの日系人が苦しんだ事は思いもよらない事でした。自分は果たして　彼らのように命を賭けてまで祖国のために戦えるのだろうか。と考えてしまいました。そして、いま、こうしている間にも世界のどこかで人が銃弾に倒れていることを思うと、哀しくて悔しくて涙が止まりませんでした。人はどうして争いあい、傷つけあうのでしょう。多くの日本人が『考えない事が当たり前』になってしまっている戦争について、考えさせられる話です。若い人には特に読んでもらいたいと思います。（2006/6/7）

最愛（真保裕一）
　１８年間音信不通だった姉が、意識不明で救急病院に搬送された。重傷の火傷、頭部にうけた銃創。しかもそれは、伊吹という男と婚姻届を出した翌日の出来事だった。しかも、姉が選んだ最愛の夫は、かつて人を殺めた男だという…。姉のアパートで見つけた不審な預金通帳、姿を現さない新婚の夫。噛み合わない事実、逃げる男と追う男。「姉さん、あなたはいったい何をしていたんだ…」　実力派作家が挑む、慟哭の長編恋愛小説。
　両親を亡くし離れ離れで暮らすことになった姉と弟。数年ぶりの再会は姉が重傷で入院した病院。弟、小児科医の押村悟郎は真実を探るために動き回ります。そこで姉の過去を知っていくのですが、決して人に自慢できるような過去ではありません。なのにどんな事でも姉に肩入れをするような悟郎に違和感を持ちました。いくら姉弟とはいえ、そこまで肯定的にとらえられるものなのだろうか、と。呆れたり、恥ずかしく思ったりはしなかったのだろうかと。それが愛なのか。衝撃のラストシーンで納得できましたが『歪んだ愛』だと思います。この姉弟以外にも愛し方を知らない人間が登場し、後味の悪い小説でした。（2007/3/20）

ブスの瞳に恋してる（鈴木おさむ）
　人気バラエティ番組を担当する放送作家・鈴木おさむ。本書は妻・「森三中」大島美幸との出会いから現在に至るまでの結婚生活を告白した、爆笑スーパーエッセイ。“ブスの時代”をリードする、抱腹絶倒の愛妻物語。
　笑えるエピソード（下ネタを含む）満載！これって本当のこと？と女としてどうかとも思えるような嫁、みゆきちゃんのことも大きな愛で全て包み込んでいる様子。（っていうか、単に似たもの夫婦？？）とっても温かい気持ちになれました。いつまでもお幸せに。と言いたいです。ブスの瞳に恋してる（2）も読みたくなりました。（2006/9/8）

ブスの瞳に恋してる　２（鈴木おさむ）
　交際期間０日で結婚した放送作家・鈴木おさむと、お笑いトリオ森三中・大島美幸。二人の結婚生活を赤裸々に綴り、稲垣吾郎主演でヒットした連続ドラマの原作エッセイ。前作よりも「笑い＆涙」がさらにパワーアップした、爆笑夫婦愛の物語、第２弾。「ＰＯＰＥＹＥ」連載に加えて、今回は書き下ろしも多数収録。
　１巻ほどインパクトのある話は少なかったものの、前作に引き続き、笑えるネタ満載。夫婦の仲良しぶりが伝わってきて暖かい気持ちにもなれます。私もこんなラブラブな夫婦でいたいな！(2006/12/7)

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感染（仙川環）
　ウィルス研究医・仲沢葉月は、ある晩、未来を嘱望されている外科医の夫・啓介と前妻との間の子が誘拐されたという連絡を受ける。幼子は焼死体で発見されるという最悪の事件となったにもかかわらず、啓介は女からの呼び出しに出かけていったきり音信不通。痛み戸惑う気持ちで夫の行方を捜すうち、彼女は続発する幼児誘拐殺人事件の意外な共通点と、医学界を揺るがす危険な策謀に辿り着く―。病の子を持つ親の愛情と医療に携わる者の倫理の狭間で、悩んだ天才外科医が下したある結論とは。女性医学ジャーナリストが描く、迫真の医学サスペンス。第１回小学館文庫小説賞受賞作品。
　臓器移植、異種移植、未知のウィルスなどネタとしては面白いのですが、主人公の心情がわかりにくく、夫の行動も理解できませんでした。事件とは関係のないところですが、前妻との離婚・葉月との再婚の理由も納得がいきません。色々な点で説明不足だと思います。臓器移植や異種移植に対しての問題提起にはなるのかもしれませんが、いまいち×××でした。(2006/11/29)

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