G3 (邑) 【Brother Complex!】


日常編 (邑) 【Brother Complex!】



「大体あんたは理想が高すぎるのよ」
一切の遠慮なし。思いっきり苦々しい顔で、悪友の千鳥はシェーク片手に私を睨んだ。
「そんなことない」
「大アリ。あんたにはイケメンな兄貴がいるから、他の男性と無意識の内に比較してしちゃってるのよ」
「そんなこと……ない」
2度目の否定は、心なしか声のボリュームが下がっていた。
「そんなんじゃ彼氏なんて到底ムリだねムリ。
クリスマスが近いからって、嘆くのはおやめ。そういうのは、ブラコンから卒業してから言うもんだ」
ズズーっと、みっともない音を出しながらシェークを飲み干す千鳥。
態度も口も悪い。でも彼女の言うことだけは正しいから、私は「むぅ……」とむくれるしかない。
「そうだ、最近彼女と別れてロンリーな男友達が1人いるのよ。邑、会ってみない?」
「えー?」
「ほらそれ。そういう態度。それがダメなんだってば。どうしてそこで可能性を生もうとしないかなー?」
「だって……」
「そりゃ、あんたは中高と女子校に通ってたから、男に対して免疫がないっていうか、苦手なんだろうけど。
いつまでもお兄ちゃんに守って貰ってちゃ不味いって」
「……。やっぱりやだ。乗り気になれない」
「でもさっき、店から出てったカップルを見て、羨んでたじゃんよー?」
「それはそれ、これはこれ」
「これじゃあ先が思いやられるわねー。いっそ、お兄さんからいい人紹介して貰ったら?」
「お兄ちゃんから?」
「交友関係が幅広そうじゃん。それに、お兄さんのお墨付きだったら、邑だって安心でしょ?」
「……どうかなー」
「今日の課題。『お兄ちゃん、誰かいい友達いない?』って聞くこと。いい?」
「よくない。何言ってんのよ千鳥」
「……今年も一緒に過ごすか、ロンリークリスマス」
「その言い方やめてよー。私は千鳥と過ごせて嬉しいんだからさー」
「ハイハイ。じゃあ、邑に美味しいケーキを作って貰おうかね。私はワイン用意するからさ」
「承った」
「うし、じゃあ帰ろうか。明日から憂鬱な月曜が始まるし」
「だね」
立ち上がりかけた時、スマホがメロディーを奏でた。
「お兄ちゃんからだ……」
「なんだって?」
「今度遊園地行かないかって」
「……ダメだ。あんた絶対、結婚出来ないわ……」
「私もそんな気がしてきた……」
「お兄さんに恋人がいないのも原因の1つかもね。私、立候補しようかな」
「千鳥が私の義姉になるの? 冗談やめてよー」
「え? 普通にいい案だと思うんだけどなー」
そんな他愛ない会話で、今日も1日が終わる。
マフラーを巻いて外に出れば、今年最初の雪がちらついていた。


2020.02.20 改稿


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