活字と植物メンテ、クラシックの日々

活字と植物メンテ、クラシックの日々

2006/04/06
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(2003.11.16執筆)


私は現在、教育の仕事に携わっている。
といっても、学習の補助的役割の学習塾である。

最近、文科省の新学習指導要領の改訂で
学習内容が約3割削減されたが、
このことへの賛否両論が世の中で沸き起こった。
しかも、新しく『総合学習』という時間ができたりして、
小中学校の現場ではさまざまな混乱がうまれたと聞く。

それと同時に、我々“教育産業”の人間も
「これからは個々に学習に取り組まなければならない。
学校に頼ってはいられない。
塾に通う子どもは増加するだろう」
という情報に踊らされ続けた。

しかし、“学校”でなければできないことがあるのだ。
このたびそれをはっきり教えてもらい、
やはり“学校”にはかなわないと感じたのだ。

15日に、町内出身の作家による特別講演
『私が思う教育のあり方』が行われた。

彼は58年前の日本と今の日本を比較し、
日本のありようが変わってしまったことを嘆いていらした。
日本は58年の間、利潤の追求だけを求めて突っ走ってきたため、
経済や科学文明は大いに発展した。
しかし、残念ながら教育が取り残されたとおっしゃる。

日本はあの戦争で大きなダメージを受け、
あんなひどい焼け野原になった。
私の親や祖父母はもちろん、
日本国民すべて一から頑張ってきた時代があった。
その結果“勤勉な日本人”が生まれ、
高度成長経済、その後の発展のエネルギーは
素晴らしいものだったと私は思う。
しかし、その日本の58年間を
否定しなければならないなんて。
特に年配者たちにとってはやりきれないだろう。
日本はどこへ向かっていたというのか。

彼は、東京六大学を含めた大学生160名に
アンケートを取ったという。

「あなたにとって
一番大切なものは何ですか?」

出てきた答えが
1.金 2.家族 3.恋人となったそうだ。
『夢』『希望』はかなり下である。
やはり、58年の年月は重大な間違いをおかしてしまったのか。
気がつけば、凶悪な少年犯罪など歯止めがきかない状態だ。

アンケートでは、彼が期待していた
『自分をかえりみること』という答えは
1人もなかったそうであるが、
学校は本来、「自分をかえりみる場」なのだそうだ。
知識を得る勉強、問題集などを反復する勉強なら
1人で(あるいは塾で)できるのだろう。
わざわざ学校に行くのは、
クラスの人間たちに会っていろいろな話をし、
それによってあらたな価値観を見つけることができるからだ。

クラスに40人いれば、
自分とは違う39の価値観がある。
さまざまな価値観に触れ、
自分なりに考えることができるように訓練する唯一の場が
学校なのだ。
教育というのは本来、そうやって
人間が“感じる”ことで成長してゆくものだと
彼は強調する。

残念ながら、過疎化が進み
小規模校が増えてしまった昨今。
やむなく学校の合併もあるが、
学校でなければできないことを学ぶために必要なことだろう。

先日グランプリをとった
この町の小学生たちの『オホーツクの詩』づくりは、
百年後の『ふるさと』がどうなっていてほしいかを
想像することから始まったそうである。
そして、オホーツクの12市町村のことを丹念に調べ、
詩にする言葉や文章を考える時に
いろいろと意見をぶつけ合い、
最終的にあのような素晴らしい詩に完成したのだという。

少なくとも、この町の子どもたちは、
学校という場で自分自分を成長させる術を
知っているのではないだろうか。
そして、未来がどうあってほしいか、と想像する心も。





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Last updated  2006/04/16 01:23:10 PM
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