テープ起こし悶々~オコシストの縁側

テープ起こし悶々~オコシストの縁側

2006年05月18日
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カテゴリ: 雑記
テープ起こしした文章を、ひっかかりなく読ませるのは大仕事なんだよね。
たいていの場合、話しことばはどこか不自然で、そのまま文字にしても違和感がある。
かと言って、すんなり書き言葉になってくれるかというと、これが実に手強い。

最近、ネット上でも「テープ起こし」したであろう文章をたくさん見る。
インタビュー記事なんかは、たいがいそうだろう。
読んでるうちに「ああ、テープ起こしの文章だなあ」と思う瞬間がある。

だが、このサイトのインタビューは、読んでいて最後までそう思わなかった。
イノベーティブ・ワン インタビュー
内容の興味深さももちろん助けになっているのだろうが、これがプロのライターの仕事なんだろうなと。
(全部読んだわけではないので、中にはひっかかるものもあるかも知れないけど、たいていすんなり読める)

「テープ起こし」という看板をあげて仕事してる者が、ここまでの文章加工を任されることは少ないだろう。
「素起こし」だったり「ケバ取り」だったり「逐語反訳」だったり「整文」だったり「一次反訳」だったり・・・・誰か止めてぇな(☆_@;)☆ \(`-メ)
まあ、さまざまな言い方はあるけど、もっともっとしゃべりことばに近いあたりで仕事を終えることになる。

こういう記事を書くライターさんは、きっとあまりテープ起こしだけを外注しようとは思わないだろう。
なんでかというのは、ご想像ください。(笑)

でも。ウェブ掲載用原稿の作成というのは今後、テープ起こしの領分として広がる可能性はないだろうか。
これは「速記反訳」から派生した「テープ起こし」という仕事が、速記文字の伝統を飛び越えて得る、新しい(こともないけど)仕事だといえるような気がする。>弱気な言い方(笑)

先日、かなり編集を施した「最終原稿」を納品する機会があった。
しみじみ「大阪弁を、である調にするのは無理がある」と感じ入ったことではあるが、その作業をしながら「読みやすい文章にする」という作業について、ずっと考えていた。

テープ起こしを依頼するお客さんのうち、できあがった原稿が「読みやすくなくてもいい」と思っている人の割合は、いったいどのくらいになるんだろう。
私の少ない経験の中から言えば、素人のお客さんは、まずこう思っておられる。
○しゃべってるそのまま、書いてくれたらいい
○文章として読みやすくしてほしい
○言ってることは変えずにそのままで

・・・まあ無理よ。ふつう。
仕事としてやってる人間には、わかるけど。
では、その真意はどこにあるのかというと「言ってることの意味は変えずに、読みやすいように文章を整えてほしい」ってことなんだと思う、たいていは。

だけど「読みやすさ」という、測定できないものを頼りに、何をどう整えればいいのか。
そこで躓くと、イキオイ「じゃ、ケバ取りでいいですね」となり、お客さんは「こんなはずではなかった」と思うわけ。

エンドユーザーからの直接受注の場合、私は「ケバ取り」ぐらいの安全策で進めるのを、ほんとうは好まない。
そんなもん、そのまま使われへんのがわかりきってるのに、皮肉なことにお客さんにはそれはわからんわけで。
でも逆に、同業者間の外注(特に一見さん)の場合、ヘタに整えてもらうと、聞き直すのに四苦八苦することが多い。
となると、やっぱり自分で粗起こしするのが一番効率いいよな・・・ってなことに。あれ、何の話や?

しゃべってるままでは絶対に読みやすくならないはずの素材を、いきなり「読みやすく」仕上げるってのは、普通はやっちゃいけないことと言われてたような気がするけど。
これからは、そういう技術をアピールしていくほうが、お互いのためにいいのではないかと思ったりする。
お客さんの要望を、きちんと受け止めるためには、やっぱりお客さんの立場にまで寄り添わなくてはいけない。
「実は誰も望んでない」不要な作業をせずにすむようにするのが、やっぱりお互いのためだよなあ。

単純に「文字にする」以降の技術、もうちょっと大事にしたいと思う。

※追記 大阪弁が書き言葉にしにくいという話が「言文一致」でググってたら出てきた。
言文一致の大阪弁
なんとまあ、大阪市のコンテンツなのね、これ。(^^;





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最終更新日  2006年05月19日 02時56分10秒
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新しい文体  
よっぱり さん
私の受けていた通信教育のテキストに書かれていたことですが、
現代は、日常語である話し言葉と文学語である書き言葉が甚だしく乖離していて、だから「読ませる話し言葉」がまだ確立していないとか。
「文字にする」以降って、そういうことも関係していると思いませんか?
(2006年05月18日 22時53分17秒)

Re:新しい文体(05/18)  
Okoshist  さん
よっぱりさん、こんにちは~。

もしかして二葉亭四迷の時代から、あんまり進歩しとらんですかね、日本語って。(笑)

>現代は、日常語である話し言葉と文学語である書き言葉が甚だしく乖離していて、だから「読ませる話し言葉」がまだ確立していないとか。

なるほど。
私は「甚だしく乖離」とか「まだ」とは思わないですね。
「読ませる話しことば」は、すでに「書き言葉」になってしまうので、永遠に確立しないんじゃないかと思うんです。(笑)
インターネットや携帯電話の普及が、今後、どんな影響を及ぼすかのほうが大きくて、今後も新しい書き言葉は、どんどん日常語に影響を与えるのではないかと。
2ちゃんねるしかり、けったいな小文字しかり。

>「文字にする」以降って、そういうことも関係していると思いませんか?

フォーマルな文章は、やはり「話しことば」とは一致しないものなんだと痛感しとりますです。(^^;

あ、ちょっと追記しました。
(2006年05月19日 02時53分47秒)

Re[1]:新しい文体(05/18)  
よっぱり さん
Okoshistさん、おはようさんです。

>もしかして二葉亭四迷の時代から、あんまり進歩しとらんですかね、日本語って。(笑)

まさに、二葉亭四迷の名前も出てました~。
私は読んでいないのでよくわからないんですが、その頃の差すら超えているのではないかというようなことを井上ひさし氏がおっしゃっているようです。

>フォーマルな文章は、やはり「話しことば」とは一致しないものなんだと痛感しとりますです。(^^;

そうですよね。
「読ませる話し言葉」って、テープ起こしに関して言えば、「(笑)」みたいな感じで臨場感も込められるとか、最初から書き言葉として書かれたものよりとっつきやすいとか、何かあるんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうね。
まあ、お客様によってご要望が違うと思うので、十把一絡げには言えないことですけれども。
(2006年05月19日 09時27分49秒)

Re[2]:新しい文体(05/18)  
Okoshist  さん
よっぱりさん、こんにちは~。

>私は読んでいないのでよくわからないんですが、その頃の差すら超えているのではないかというようなことを井上ひさし氏がおっしゃっているようです。

うわ、井上ひさし氏でしたか。(笑)
あの方の日本語関連の本もいろいろ読んだんだけど、いまいちしっくりこないことが多かったので、きっとスルーしてるんだと思います。すみません。

>「読ませる話し言葉」って、テープ起こしに関して言えば、「(笑)」みたいな感じで臨場感も込められるとか、最初から書き言葉として書かれたものよりとっつきやすいとか、何かあるんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうね。

即座に思い浮かぶのは、テレビの字幕でしょうか。
それも「おちゃらけ系バラエティ」の。
あと、まんがの存在も無視できないですね。
ああいうのを「現代の言文一致」と考えるなら、フォーマルな文章での言文一致はありえないのではないかと思います。

>まあ、お客様によってご要望が違うと思うので、十把一絡げには言えないことですけれども。

御意。
まあ、これはあんまり何も知らずに「テープ起こしお願いします」と言われるお客さんの大多数、というのを想定してるんですがね。(^^;

(2006年05月19日 12時53分01秒)

Re:「声を文字にする」以降の技術(05/18)  
さくさく堂  さん
「である」調の「テープ起こし」原稿を依頼するのはかなり馬鹿らしいことである、というようなブログを書こうと思って、下原稿も半分出来上がっているんですが、よい例文ができなくて頓挫しています。

「『である』調のテープ起こしが存在する」と信じているお客さんにご説明することからスタートするわけですが、「『である』調のテープ起こしがいかに馬鹿馬鹿しいか」なんてことを理解する時間を割きたくない方がテープ起こしを外注するのでしょうから、意思疎通は難しいと思います。

「である」調じゃなくて、これ、と提示できればよいと思うのですけれど、ブログに書いていたら、息切れしました。

明治期にスタートした速記は、講談なんかを速記していた時代はよかったのですが、「帝国議会の議事録を」という話が出たときに、速記録を話し言葉から書き言葉に書き直すべきかどうか、いろいろ議論されたようです。

いまとなっては、当時の話し言葉と書き言葉のへだたりはあまり想像できませんが、「~故」とか「~べし」とかに変換させる段階で、文才によって速記録の出来がかなり左右されたそうです。

そして、帝国議会の議事録は第1回から逐語反訳となり、それは速記界の輝かしい歴史として語られますが、文才のある速記士の数がそろえられなかったので、記号速記を覚えればできる逐語が選ばれた、という話も聞いたことがあります。 (2006年05月19日 16時54分56秒)

Re[1]:「声を文字にする」以降の技術(05/18)  
Okoshist  さん
さくさく堂さん、こんにちは~。
いやん、漢字が多くて画面が黒い。(笑)

>「である」調の「テープ起こし」原稿を依頼するのはかなり馬鹿らしいことである、というようなブログを書こうと思って、下原稿も半分出来上がっているんですが、よい例文ができなくて頓挫しています。

ブログの下原稿を作成しておられるというのに、まず感服。
そういうのって大事ですよね・・・・とは思うものの、イキオイにまかせてしか書けない私は、いつも小さな書き込み枠にそのままタイプしてます。

で、本筋ですが、まったく同感。
要するに「ご参加いただいて、まことにありがとうございます」なんてのをどうするか、ということかと。(笑)
さっき、とある本の「訳者あとがき」で、最初は本文と同じ「だ・である」で書いてあるのに、最後の謝辞だけが「です・ます」に急に変わってるのを見て、やっぱりなあと思ったわけですわ。
感謝の気持ちを伝えるのに「○○に感謝する」ってのは、流れのある文章としては、どうしようもないですもん。

長くなったので、切ります(^^; (2006年05月20日 03時45分14秒)

Re[1]:「声を文字にする」以降の技術(05/18)  
Okoshist  さん
続きです。

>「である」調じゃなくて、これ、と提示できればよいと思うのですけれど、ブログに書いていたら、息切れしました。

うーん、もう一度息継ぎして、どうぞ続きを。
期待しておりますです。(^_^)

しみじみ考えて思ったんですが、お客さんは私たちの言うような「である」調の原稿が欲しいのではなく。
手書きでの議事録にあるような、箇条書きや体言止め(笑)みたいなのを多用した、簡潔でわかりやすいものを求めているんだけど、たまたま語尾が「だ」になるので、そう表現してはるだけなんとちゃうかなぁ。

>そして、帝国議会の議事録は第1回から逐語反訳となり、

引用、えらい端折ってごめんなさい。(^^;

いま、たまたま『ことばの写真をとれ』という古い本を読んでいるのですが、さくさく堂さんの書いておられるあたりのことも出てきてます。
活字の古めかしい、ちょっと読みづらい本ですが、そういうお話を伺ったら、ますます面白く読めそうですわ~。

この本にも、「今に書き言葉がしゃべり言葉に影響を与え、もっとみんなまともなしゃべり方をするようになるだろうよ」という人もいたということが書いてあります。
私は、その「書き言葉からしゃべり言葉への影響」を、現代はもっと重視していいのではないかと思っているんですね。
相互に影響しあって変化していく、ことばって面白い。 (2006年05月20日 03時49分51秒)

Re[2]:「声を文字にする」以降の技術(05/18)  
さくさく堂  さん
>いま、たまたま『ことばの写真をとれ』という古い本を読んでいるのですが、さくさく堂さんの書いておられるあたりのことも出てきてます。

ほえ~~~。あの本読んでるんですね。感服いたします。

>私は、その「書き言葉からしゃべり言葉への影響」を、現代はもっと重視していいのではないかと思っているんですね。

ふむ。この辺はもっとお聞きしたいところだなあ。私はあまり考えませんので。
そろそろブログも再開しますし、お蔵入り原稿もなんとか産みます。ヒッヒッフー (2006年05月21日 14時44分59秒)

Re[3]:「声を文字にする」以降の技術(05/18)  
Okoshist  さん
さくさく堂さん、こんにちは~。

>ほえ~~~。あの本読んでるんですね。感服いたします。

いや、本としてのデザインがいまいち、読ませるのを拒否するようなところがありますなあ。(笑)

>ふむ。この辺はもっとお聞きしたいところだなあ。私はあまり考えませんので。

大阪弁を話していると、気になるのかもしれません。
「言文一致」からは確実に遠いところにいますからね。(笑)

>そろそろブログも再開しますし、お蔵入り原稿もなんとか産みます。

おお、無事ご出産を楽しみに待っております。

>ヒッヒッフー

練習したのに帝王切開でがっくりorzだったんす。
(2006年05月22日 15時41分33秒)

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