雷雲の扇動


我々、雷を友とする魔術師は苦難の歴史を歩んできた。
個体を遠距離から叩けても、接敵すれば倒されやすい。
敵に囲まれた場合、我々は他の三種を専らとする魔術師に劣るとされた。

以前は使い魔も、雷を頑として使おうとはしなかった。
友とすべき存在からも、我々は見放されていたのだ!

今や、雷には強大な力がもたらされた。
しかし諸君!
我々は未だ、苦難と迫害の歴史を歩んでいる。

『邪魔』『うざい』『いい気になるな』
罵詈雑言の数々。
アリーナではまず真っ先に殲滅の対象となる。
黒い鎧の猛者達に、凶悪な魔法を打ち込まれたものは一人ではあるまい。
それがアンテクラの居場所ではなくとも、彼らは我々を蔑むのだ。
いや、憎みすらされている。

見よ!
戦乙女の弓を引き絞る手にこもる力を。
聖騎士の技量をこめた斬撃を。
戦士の戦槌に乗せられた体重を。
他の魔法使いが杖を握る手の震えを。

彼らは皆、我々が手にした祝福を自分への呪詛と取り違えているのだ。
同じように雷を使うようになった使い魔のみ、謗りを免れている。

武装せよ、雷使い!

雷に対抗する装備をすれば、他の魔法に無防備になるだろう。
無属性のアストラルはそれらを斟酌しない。

風以外を取得しているならば使い魔を呼べ。
我々より遥かに勝る範囲魔法を浴びせるはずだ。

転移の魔法は意表をつける。
スタンを浴びるともうろたえるな、場を移し素早く回復せよ。
足元を縛らせても、逃げ回れば狙いはつけられぬ。

体力に自信あり、召喚を極めたものは巻物をひろげよ。
業火を恐れる余り、彼らは退くだろう。
最も慌てたものは、恐らく火には弱いはずだ。

組み合わせよ、己が魔法を!
攻撃の高さを誇るもの、ただ武装優れたるが故に我らを疎むもの。
それを凌駕し、己が生き残るにはありとあらゆる手段を使わねばならぬ。

我々は無力ではない、卑怯でもない。
ただ、選んだ魔法が雷であっただけのことなのだ。

奢るな、恐れるな、諸君。
雷を使うものよ、他者を虐げることなく、己の足場を固めよ!
恩恵のみに頼らず、あらゆる技能を駆使して狩場を駆け抜けよ。
侮蔑を驚嘆に、憎悪を信頼に塗り替えるのだ!


光と轟きとが、諸君と共に在らんことを。


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