メンバー紹介【1】ターラへの疾走


実入りは良いが時間が短い依頼を受けたものかどうか悩む。
神殿とターラを継ぐ通路付近には、禍々しいオーラを放つ
スクプゥスや、足場定めず鋭い爪を繰り出すネフィティ、
回転して鋭い刃で獲物を切り裂くクローカーがいる。

「受けろよ、送ってゆくぜ」

振り返ると、頼もしさでは比肩するものがない男が立っていた。
ターラを足場にしているギルドマスター、あーるぜっと。
彼が、道中の露払いをしてくれるのは心強い。

「俺も行くっ」

ぽん、と脇に現れたのはやはりギルドメンバー。
いつも弾むような言葉遣いの魔術師、EFIO。
ターラにはポーションの強力なものが売っている。
私たちも早くあちらを足がかりにできるようになりたいものだ。

私は依頼を受け、三人共に神殿の上階へと転送された。

三階は別にどうという問題もなく通り過ぎた。
私でもどうにか歩き回れる場所になっている。
番狂わせは、その後に待っていた。

一人でならば死を覚悟する眺めだった。
赤、紫、緑、青、とりどりのオーラが待ちうけている。
雷撃に耐える白い輝きがないのが救いだといえようか。

躊躇なく私たちに加護の光を与え、輝く鎧が突き進む。
その背に追いすがる魔物達に、私たちは呪文を放つ。
こちらに向かってくる爪や牙は聖騎士の祈りに阻まれ、
鼓動のような音を立てる魔の司祭に雷撃が降り注ぐ。

一瞬、まずい、と思った。
風の魔法を使うEFIOの傍にいるネフィティのオーラは……

彼は、どこか子供っぽくも見える、きょとんとした顔をした。
「あれ?」
そんな言葉を残して、その場から消え去る。

険しい顔をして、ギルドマスターが戻ってきた。
「やられたか」
「多分」
剣の一閃で、私にも迫ろうとしていた爪は虚しく空に散った。
残骸のみとなった部屋で、リーダーは瞬時に決定を下す。
「先にお前を送る。あいつはシティスにはいるはずだ」

「俺なら大丈夫だよん」
消え去ったのとは別の方角から、声がした。
「すぐ行くから」

私たちはその言葉に、同じように苦笑いを浮かべる。
彼は、テレポートの達人だ。
どうやら、辛うじて最後の爪と牙からは逃れたのだろう。
「追いつくね~」

僅かな魔力の振動が感じられる。
彼は今、隣の部屋から二部屋ほど先に跳び移ったようだ。

「行けるなら先にターラまで行ってろ」
ぶっきら棒に言い捨てるリーダー。
「えーっ」
彼を兄のように慕う魔術師の声は、それでも次第に遠ざかる。
それを確認して彼は、剣を構えなおした。
「さ、走るぞ」
僅かばかり、そこに安堵の響きがあるように感じたのは私だけか。

ターラの原野を、再び彼の後について走る。
ここまで来れば巻物を使う手もあるが、早く道だけは覚えたい。

「発見っ」
モンスターよりも早く私たちを発見し、彼が走ってくる。
どうやら、彼も私と同じものを見ていたいようだ。

おかまいなしで走るようでいて、私たちの足並みに合わせてくれる
ギルドマスターの広い背中を。


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