メンバー紹介【3】コエリス・愛の劇場

『コエリス・愛の劇場~輝きに気づく想い~』

あらすじ:
戦士ハジャと戦乙女小美王(おびわん)。
二人は師弟関係を結び、一つの約束をした。
LV30になったら、モンタヌゥス神殿の三階でともに戦う、と。
夢見る乙女は一心に励み、いよいよその日を迎える。


「お師匠~っ」
弾むようにかけてくる彼女に目を細めたのは、陽が背後にあったからだ。
彼は自分にそう言い聞かせた。
「神殿ですねっ」
「はい」
師弟とは言っても、相手は乙女。返答は少しぎこちないものとなる。
この日を励みにして、頑張ってくれた、と思うと師としては誇らしく、
しかし何処かで面映い。
「準備してきますっ」
「はい」
道具屋へ走り去る彼女の横顔に、陽と同じまぶしさを覚えるハジャ。
彼は自分の微妙な揺らぎに、まだ気づく由もない。

神殿三階。
一人では足を向けるなど思いも寄らない恐ろしい場所を、今の彼女は
胸を高鳴らせながら見つめていた。
師匠の、たくましい背中。
まだ、今はまだ、そっと見つめるだけ。
気づいていないのか、いても戦いが大事なのか、師は戦槌を振るい、
光球を放って攻撃してくるもの達をなぎ倒してゆく。
(いつか、並ぶのよ)
彼女は盾を構えつつ、自分に言い聞かせた。
(肩を並べるの、群がる敵をものともせずに)
きっとその時、師は神の装備を身に付けていることだろう。
自分は赤?今は金もまだだけれど、きっとそうなりたい。
一瞬、浮かんだ光景を、光球がまぶしく射抜いた。

(しまった!)
武器を握り締めたまま、ハジャは振り向いた。
崩れ落ちる細い身体には、薬も間に合わない。
小美王の手が一瞬、差し伸べられる。
篭手に包まれた指の小ささを感じる間もなく、乙女は消えた。
(……おのれ!)
一撃で、赤く光る輪を背負ったヘルロッドマンが吹き飛ぶ。
彼は急いで巻物を使い、再びシティスの町に舞い戻った。

彼女はそこに立っていた。
諦めを知らない瞳で。
悔しさを微笑みに押しつぶす口元で。
引きしまった、けれどたおやかな乙女はこう言った。

「すみませんでしたっ、今度は頑張りますっ!」

彼の中に、師の誇りとは別の何かがこみ上げてきた。
俺は、彼女を護らねばならない。
彼女を強くするために。己が強くあるために。

「もう一度、行きましょう」

それしか言えなかった。
戦乙女の清純さに、抱きしめることなど思いもよらず。
ただ、この自分の中にある静かな熱さを伝えたくて手を伸べる。

指先は一瞬鋼に阻まれ、それでも互いの意気を伝えあった。
強く握らなくても、眼差しは互いに吸い寄せられる。

これからは、彼が挨拶に照れて目を伏せることはないだろう。
今までより、彼女は前に踏み出して彼に近づくはずだ。

いつか、共に手を携えて戦うために。
言葉では表しきれない想いを、形にするために。


次回予告:
神殿での戦闘は、想像を絶する苦闘となった。
何度も倒れ付す戦乙女、歯を食いしばり彼女の盾となる戦士。
そんな彼らに駄目マジの与えた助言とは……?
次回、『コエリス愛の劇場~テンプルロードで初デート~』
お楽しみに!


プロデューサーからのお詫び:
この度、脚本家駄目マジが、主演女優に誤って刺されるという
不幸な事故が発生しました。
『コエリス愛の劇場』の放送は無期延期といたします。


コエリス臨時ニュース:
昨日深夜、だめだめマジとして知られるOrchardが、小美王嬢に
マガスエッジで切りつけられ、意識不明の重態です。
神殿3Fは暗く、警備隊の見解はOrchardの赤い鎧がモンスターと
見間違えられたため、となっております。
しかし、関係者の証言によれば、小美王嬢は若干の興奮状態で、
『師匠は渡さない』 などと口走っているとのことでもあり、
引き続いて二人の容態が落ち着くのを待って、事情聴取を行なう
予定となっております。


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