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あーーー、おもしろかった!!推理小説はやっぱりこうでなくっちゃ!長かったけれど、飽きるということがまったくありませんでした。現代のミステリーにたいてい備わっている、スピード感やドキドキ感というものが、「砂の器」には全くといっていいくらいありません。そこにあるのは、犯人を遠巻きにしていた輪が、じわりじわりと狭まっていくのと同時に、犯人のおぼろだった像が次第にはっきり見えてくるような感覚です。主役の今西刑事は、天才的なひらめきがあるわけではない。ただひたすら、地道にじっくり考え、しかも行動的である。けれど、それが目を瞠るような展開にもつながらなくて、読者もいっしょにじっくりじっくり今西刑事と共に考えながら読み進めていく。そんな醍醐味をたっぷりと楽しませてもらいました。「砂の器」は、これまでに何度もドラマや映画になっているそうです。最近では、中居正広が音楽家を演じたとか。だけど私は、この小説は時代を現代に置き換えてドラマにしても、あまり面白くないんじゃないかと思うんですが・・・何もかもが破壊され焼き尽くされた戦争を利用しようとした犯人の、追い詰められた気持ちがポイントだと思うから。そしてもう一つ。この本は題名もいいですね。「砂の器」・・・この題名じゃなくてはここまで感動しなかったように思います。そういえば、松本清張記念館に行ったとき、ある編集者の言葉として「彼の作品の題名はどれも素晴らしい」というようなことを書いてありました。ひとつひとつの名づけ方もいいけれど、たくさんの本を並べたときの字面がまた、美しいのだそうです。
2008.05.31
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一冊のミステリーで、前半と後半でこんなに読み心地が違う本って珍しいな。というのが第一番の感想です。前半は、フランス料理のフルコース、若く才能ある料理人、人間離れした味覚を持つ老人、天才シェフ等々・・・おいしい話題の連続で、美味に関する薀蓄話がこれでもかと出てくる、実に楽しい本でした。中盤からは殺人事件が起こり、ミステリーらしくなってきたと思った頃から、筋が平板になりつまらなくなります。犯人探しの主役が誰なのかもはっきりしないし刑事たちも魅力があるとは言い難い。ドキドキともハラハラともしません。終盤はうすうす想像したとおりの展開となり、ぞっとする話ではあるけれど、意外性はありません。多分、この作品が「このミステリーがすごい!」の大賞となったのは、グルメ描写の素晴らしさが評価されたんだと思いますけど、「ミステリーがすごい」と銘打つ以上、こんなのでいいの?という疑問を持ってしまいました。拓未司さんは辻調理師学校を出た料理のプロなのだそうです。その知識と文章力を生かして、ぜひミステリー以外にも挑戦して欲しいと、強く思いました。
2008.05.25
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図書館の書架の間を目的もなくふらふら歩いていたら、こんな本をみつけました。薄くて小さい本ですが、その場で目次を見たら最後、動けなくなってしまいました。それくらい、魅力にあふれた紀行文と写真の本です。私が一瞬にして見せられた目次を書き写すと、こうです。☆ホグワーツを探して・・・ ハリー・ポッターの面影をたどるスコットランド☆指輪物語が生まれた大学の街・・・ トールキンの愛したオックスフォード散策☆チャールズ・ディケンズの足跡・・・ クリスマス・キャロルの鐘の音が聞こえるロンドンの街角☆愛らしい少女アリスの幻を見る・・・ オックスフォードの不思議な昼下がり☆永遠に少年のままで・・・ ロンドンの夜空を舞うピーター・パンはいずこに☆クリストファー・ロビンの笑顔を見つけた・・・ ロンドン近郊、クマのプーさんの森を探検☆お話の世界そのままに・・・ ピーター・ラビットが駆ける湖水地方☆誇り高きアーサー王の伝説を追いかけて・・・ 西イングランドからコーンウォールへ どうですか?目次だけでこの本を読みたくなった人、いっぱいいるでしょう?私が一番好きなのは、もちろん、最初に出てくるハリー・ポッターのところです。ハリーとハグリッドが通ったパディントン駅のエスカレーターや、93/4番線があるキングスクロス駅、スコットランドに向かう車窓から見た景色。残念ながらカエルチョコや百味ビーンズの車内販売はありません。また、大西洋に面したボズキャッスルという街には「魔女博物館」というのがあるそうです。実際に使われていたという、さまざまなおどろおどろしい魔法の道具が展示されているそうですが、驚くべきことに、異様な形相をしたマンドレイクのコレクションがあるそうなんです。マンドレイク!ハリポタファンなら、ご存知ですよね。魔法植物の授業で、植木鉢から引っ張り出した根っこがフギャーーーーー!!!!ってすごい声で泣き出した、あれですよ。その声を聞くと命を落とすということで、みんな耳当てをしていましたっけ。あれって、ほんとうに存在するんだ・・・・マンドレイクの写真も紹介されています。また、この博物館には、箒で来る魔女のために「駐箒場」も用意されているそうですよ。マグルじゃないあなたも、大丈夫!というわけで、もっともっとご紹介したいけど、キリがありません。ファンタジー好きな方に、ゼッタイお勧めできる、とてもいい本でした。
2008.05.19
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ほんと、困るんですよね。こんな本。だって、電車の中じゃ読めませんよ。家の中でだって、一人きりじゃないと読めないし、置き場所にも困ります。私は図書館で借りたけど、やっぱり少々勇気が必要でした。だって、こんな表紙なんですよ! この写真じゃ、あまりはっきり見えませんけど、かなり下品です。いったい誰がこんな表紙を考えつくんですかねえ。上品じゃなくてもいいけど、誰もが気軽に手に取れる本にしてほしいです。あ、それとも、子どもがうかつに読まないように、大人限定の意味でこんな絵にしてんでしょうか?世の中にはそんな世界もあるらしい。けど、身近に見たこともないし感じたこともない。そんな全く知らない世界のお話が、満載の小説です。たとえば、仕事のなくなったフリーライター、キャ○クラ嬢のスカウトマンと、スカウトされた女の子。ゴミ屋敷に住んでいる中年A○女優に、風○営業する昼間のカラオケボックス。常連客のポ○ノ作家。裏ビ○オを売る女。どうですか?世の中の底辺といってもいいようなこういう人々と知り合いだ、という人いらっしゃいますか?性欲に翻弄される愚かな人たちを主人公にしながら、すこしずつストーリーがリンクしていき、まあまあのところでおさまる、なかなかおもしろい小説でした。さすが奥田英朗さんですね。ハズレというものがありません。最後の締めの部分に、こんな文章がありました。「渋谷の街を歩く。道行く人たちをぼんやりと眺めた。みんなどんな人生を送っているのだろう。みんな幸せなのだろうか。 考えるだけ無駄か。小百合は鼻息を漏らした。泣いても笑っても、どの道人生は続いていくのだ。明日もあさっても。」私も小百合にならって、「ララピポ」ってつぶやいてみよう。え?ララピポって何?って思う方、どうぞこの本を読んでみてね。ただし、ブックカバーをご用意ください。ところで、文中で○を多用しました。ほんとはこういう伏字みたいなのは好きじゃないんですが、この言葉を普通に書いてしまうと、「公序良俗に反する」ということで、更新できなかったんです。しかたないので○にしましたが、私の文章はわいせつで公序良俗に反してたんでしょうか?なんだか割り切れませんねえ・・・
2008.05.15
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料理エッセイもいろいろあるけれど、絲山秋子さんのこの本はすごいです。料理エッセイにありがちな、食へのこだわり。家族への愛情。友人とパーティー。果ては食糧自給率とか、残留農薬問題、諸々の食に関する情報は、ぜーんぶ蹴飛ばしましょう。これを食べようと心に決めたが最後、こうしてみようああしてみようと、作って作って作って作る。その次は食べて食べて食べて食べる。まさに、突撃玉砕型料理です。読み手の私まで、一緒になって作って食べて突撃、格闘、もうお腹いっぱいと、へそ天で寝てしまいたくなる強力なエッセイでした。でも、読んで楽しいだけじゃありません。たいていの主婦なら、かなり実用的な面もあると感じることでしょう。ヘナッポとか、サンバルとか。ふふふっ、何のことかわからないでしょ?それは読んでのお楽しみ。一つだけ難を言えば、文章全体の雰囲気が、少々はしゃぎすぎかな?おもしろくしようという意識が過剰に働いて、なんだか白けてしまうところがありました。たとえばテレビのバラエティー番組で、久本雅美がよくキャーキャーはしゃいでるけど、ちっとも楽しそうじゃないってことあるでしょ?(そう感じてるのは私だけかな?)もっとテンションを緩めて書いても、ぜったいこの本はおもしろいはずですよ。
2008.05.10
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毎日新聞の朝刊には、「季節のたより」という欄があります。ここには毎日、俳句が一句とそれに合った版画が掲載されているのですが、この俳句がとってもいい!その季節にあった味わい深い一句を、何度かくりかえして口ずさんでみると、短いながら俳句ってなんていいものなんだろうと、強く思います。私は、俳句を作るどころか、句集ひとつ満足に読んだこともないのですが、日本人の心の底にこういうものに引かれるものがあるのかなあと思うほどです。選句もすばらしいけど、簡潔な解説文もよく、深くうなずいたりあるいは、こうとも取れるんじゃない?なんて思いながら、口ずさんでみるのもまた楽しい。ここ数日は、初夏らしい気持ちの弾むような俳句が続いています。船腹の汚れかすかに夏きざす 片山由美子起立礼着席青葉風過ぎた 神野紗希万緑や膨張宇宙の中にゐる 尾池和夫4月に読んだ本です。1.「空想の繪本」 安野光雅2.「ブス愚痴録」 田辺聖子3.「淋しい狩人」 宮部みゆき4.「愛の幻滅」 田辺聖子5.「ゆれる」 西川美和6.「ベストセラーだっておもしろい」 岡崎武志7.「半生の記」 松本清張8.「菊葉荘の幽霊たち」 角田光代9.「怖い絵」1・2 中野京子
2008.05.03
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