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東京都三鷹市にある光学機器メーカー「三鷹光器」のドキュメント本である。私は大企業でシステム開発に携わっているが、技術者の心構えとしては、小さな機械メーカーである三鷹光器と同じだと思う。
三鷹光器の理念は単純だ――「必要なものをつくる」。
だが、これが企業ビジネスになると、なかなかやりにくい。顧客ウケするシステムを提案したり、消費者に余計な機能を押し付けるだけのシステムを販売したり、と。
コンピュータ・システムの特長は、
1)早い
2)正確だ
3)忘れない
の3点に集約できる。何でもかんでもシステム化すればいいというものではなく、これら3点の特長が発揮できる業務だけに絞ってシステム化すべきである。これを間違えている経営者は少なくない。
一方、つくる側でも勘違いしている技術者がいる。応答速度の遅いシステムや、計算結果の誤差が激しいシステム、システムダウンでクラッシュしてデータを失ってしまうようなシステムは論外である。
三鷹光器の社長は社員に対し、「一人で3つ以上のことをマスターせよ」と檄を飛ばしているという。これはシステム開発でも言えることだ。データベースやネットワークのスペシャリストがいると心強いが、データベースしかできないというのでは困る。こうしたスペシャリストの寄せ集めの場合、インターフェース部分に必ずバグが発生する。
落ちないシステム、止まらないシステムをつくるのは、マニュアル化できない。職人の勘のようなものが必要とされる。新人プログラマを手取り足取り教えてやっても、大したSEには成長しない。
また、技術の原点を天文に求めるのも同感である。私自身、天文が好きなこともあるのだが、新天体の軌道計算プログラムをつくるスキルがあれば、およそどんなシステムにも応用が利くと考えている。軌道計算を行うためには、三角関数や微積分などの数学の基礎が要求されるほか、どんな事務系システムでも必要なカレンダー計算を行わなければならない。
インターネットが普及した今日のシステムで、世界各地の時差を考慮しないサーバ・アプリケーションを設計するようではお話にならない。
まあ、これらは私の個人的なモノの見方なのだが、ともかく、一度本書に目を通してほしい。忘れられた昭和の“何か”が読み取れるはずだ。
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