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1958年生まれ、新人類世代が著した「おたく」評論書。「おたく」と「新人類」世代の精神論、そしてその背景にある異常な事件(宮崎勤、オウム真理教、酒鬼薔薇聖斗)の関係を紐解く。講談社親書にしては相当分厚い本である。
全編にわたって、著者の、マンガ論、アニメ論、エロ本論などが開陳されるが、たいへん粘着質な文章で、正直読みにくい。にもかかわらず、自分がよく知っている単語が並んでいるので、それなりに読み解けてしまうのが恐ろしい。巻末の索引を見てみると‥‥AKIRA、UWF、浅田彰、麻宮騎亜、吾妻ひでお、新井素子、庵野秀明‥‥すべて知っている私は、やはり「おたく」(笑)。
私は、本書の先に、ビジネスリーダーとして台頭しつつある新人類世代の光と闇を感じた。結論を書くと、私は、偏差値世代の新人類が「勝ち組・負け組」を現出させたのではないかと考えている。
「おたく」精神は、自分の居場所を探す、いわゆる「自分探し」の旅のようなもので、勝ち組の中にも、負け組の中にも存在すると思われる。そして、団塊の世代と居場所を争い生き残った三木谷・楽天社長のような存在が勝ち組、どこにも居場所がなく他者との関係を絶った奈良女児殺害犯は負け組――こんな構図になっているのではないか。
偏差値世代の判断基準は数字でしかない。さらに社会に出てデジタル化の波に翻弄された我々新人類世代は、0と1の結論しか持たない。ゆえに、勝ち・負けの差は天と地ほどの差があり、成功者は光り輝くが、敗者として追われた人間は、おそろしく暗く陰湿な事件を起こすのではないだろうか。
さて、我々の後に続く世代は、どうなるのだろうか。
■メーカーサイト⇒ 講談社 「おたく」の精神史
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