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ギリシア神話、聖書と並ぶ欧米の古典だが、日本人としては悪役の方に同情してしまう。
アメリカの次期大統領にバラク・オバマ氏が選ばれた。史上初の黒人大統領の誕生だ。
さて、本書は欧米の古典となっているシェークスピアの作品であるが、あらためて読んでみると、宗教や人種に対する偏りに充ち満ちている作品であることに気づかされる。これが大衆にウケたのは、今から 400 年も昔の話だから無理からぬことだが、古典として欧米人の心に刻まれているとすると、何となく寂しい気分になる。
作品中で、ユダヤ人商人のシャイロックが、「ユダヤ人には目がないか? ユダヤ人には手がないか、五臓六肝、四肢五体、感覚、感情、喜怒哀楽がないのか? キリスト教徒と同じものを食い、同じ武器で傷を受け、同じ病気にかかり、同じ治療で治り、同じ冬の寒さ、夏の暑さを感じないというのか?」(95 ページ)と語るのは、たいへん有名な場面だ。本来悪役であるはずのシャイロックが、この台詞をもって主人公たちを圧倒してしまう。
だがそれは、21 世紀に日本で読んでいるから、そう感じるだけかもしれない。
あまり触れられないことだが、本作品のヒロインであるポーシャは、求婚してきたモロッコ大公の肌の色を見て、陰で人種差別的な発言をしている。どちらかというと陰湿な女性である。
一方で、本作品には、聖書やギリシア神話からの多くの引用が見られる。これらもまた、欧米の古典である。
彼らの文化を批判するつもりはない。だが、洋画を見て洋楽を聴いて楽しむことはできても、根本的に違う文化であることを頭の片隅に置いておかなければならない。
■メーカー/販売元 ウィリアム・シェークスピア/松岡和子/筑摩書房/2002年4月
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