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当たり前の言葉を、当たり前に発信しているからこそ、吉野屋は逆境を乗り切ることができたのだろう。
吉野家社長の安部修仁へのインタビュー本。インタビュー時期は BSE騒動によって米国産牛の輸入が止まっていた時であり、社長はそれどころではないはずである。にもかかわらず、吉野屋の強みと将来を語ることができるというのは、凄い精神力である。
安部社長の社歴はアルバイトからはじまる。倒産、そして旧セゾングループの支援を受け、社長に就任。セゾングループというイケイケドンドンの社風の中にあって、“牛丼一筋”を守り抜いた姿勢は記憶に新しい。
その根性が、今回の米国産牛肉の輸入停止事件の際にも発揮された。他の牛丼店のように、豪州産の牛肉に切り換えても良かったはずである。にもかかわらず米国産にこだわり続け、主力商品である牛丼を出すことができない状態が長く続いた。それでも、吉野屋というブランドを守るため、あえて豪州産には手を出さずに我慢を続けた。
当初、アナリストたちはこの姿勢を批判したにもかかわらず、世論はそれに乗らなかった。吉野屋ファンは牛丼再開をじっと待ち続けた――。
アルバイトから成り上がって上場企業の社長というのは、一見するとサクセス・ストーリーのように見えるが、本書に記される安部社長の言葉を読むと、じつに“当たり前”のことしか書かれていない。「自分の立場だけで考えた問題提起は、はっきり言って、8 割が愚痴や不満」(31 ページ)、「公式な声明文では『誠に遺憾に思っています』ですが、こう伝えたところで、誰も感情として共有できません」(131 ページ)、「加盟店に実損を与えない」(132 ページ)――当たり前の言葉を、当たり前に発信しているからこそ、吉野屋は逆境を乗り切ることができたのだろう。
そして、安部社長は「多数派が間違うこともある」(75 ページ)と指摘する。これは、多数の意見が正しいことを前提としている Google に対立する考えである。「『みんなの意見』は案外正しい」のに過ぎないのであって、Google の検索結果が絶対正しいわけではないことを、われわれは常に認識しておかなければなるまい。
■メーカーサイト⇒ 戸田顕司/日経BP社/日経BP出版センター/2007年3月 吉野家 安部修仁 逆境の経営学
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