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老人と若者の「共存」する共同体が『ヤマト』である。
実写版・宇宙戦艦ヤマトにタイミングを合わせて出版されたサブカルチャー解説本。1974~75 年にテレビ放映されたアニメ第1 作や 1977 年の劇場版、それ以降のテレビ・劇場版シリーズを振り返りつつ、ガンダムや最近のアニメとの比較を行うなど、盛りだくさんの内容になっている。
「『ヤマト』に学園ドラマの要素があると指摘」(144 ページ)し、アニメ「コードギアス」や 2010 年に流行したドラッカーやマイケル・サンデルの話に繋げるのは無理があると感じたが、リアルタイムで「ヤマト」第1 作を見ていた世代としては、何でも「ヤマト」にリンクしたくなる気持ちは分からなくはない。
時代は昭和 40 年代後半――第一次石油ショックを受け、日本は自信を失っていた。UFO や超能力、「ノストラダムスの大予言」がブームとなり、科学万能主義による高度経済成長時代に陰りが見えていた。
一方で当時の国鉄は「ディスカバー・ジャパン」と銘打って、日本を見つめ直す旅を提案。また、角川春樹によって戦後間もない時代を舞台にした横溝正史の小説が映画化された。
日本全体が内向きになったという点では、現代に通じるものがあるような気がする。
そこへ、太平洋戦争時代の悲劇の戦艦がアニメになって甦る。しかも、裏番組のカルピス名作劇場「アルプスの少女ハイジ」と比べて暗い、彩度の低い映像としてテレビ画面に登場した。あの赤茶けた地球と、鋼色をした宇宙戦艦のインパクトは強烈だった。
プロデューサーの西崎義展は、「『ヤマト』の発想の原形として、ロバート・ A ・ハインラインの『メトセラの子ら』(早川書房、1976 年)を念頭に置いていた」(66 ページ)という。意外である。
元々は地球脱出のストリーであったというが、松本零士により大幅に軌道修正されたようだ。ただ、沖田艦長や徳川機関長、佐渡先生といったシニアが活躍するという点では、他の松本アニメには見られない面白さがある(アニメのエンディングテロップでは沖田十三がトップに登場する)。『メトセラの子ら』の流れを汲んだ形であろう。歳をとった今でも楽しめるアニメである。
「ヤマト」のおかげで、アニメがサブカルチャーの一分野に食い込んだことは確かだ。
サブカル・アニメは時代の主流ではなく、かといって文化や体制を批判するカウンターカルチャーでもない。その時代の流れのギリギリ端っこに位置し、常に時代の本流を斜めから見つめている――それがアニメのあるべき姿だと思う。
だから、本書がドラッカーやマイケル・サンデルの話に繋げようとした点に違和感を覚えたのだ。もちろん、ディズニーやジブリのアニメも、ヤマトのようなサブカル・アニメとは異質のものである。
「宇宙戦艦ヤマト」の影響が強すぎたせいだろう。自分の人生も社会の本流から外れている。そして今後も本流に戻る見込みはない。だからといって体制に不満があるわけではない。ごく普通の暮らしをしており満足である。
「ヤマト」の影響が身に染みついているのだろう。こんな状況にあっても、日本という国や地球という惑星に誇りを感じている。どんな困難な状況になっても、おそらく自分は日本を見捨てることなく、地球上で生き続けることだろう。
■メーカーサイト⇒ アライヒロユキ=著/社会評論社/2010年11月発行 宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン
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