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著者・編者 | 村井哲之=著 |
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出版情報 | 朝日新聞出版 |
出版年月 | 2007年03月発行 |
本書は『 さおだけ屋はなぜ潰れないのか
』(山田真哉)、『 ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する
』(島田紳助)と同じで、タイトルが本書の内容を表しているものではない(ビジネス本で流行の手法なのだろうか?)。
著者によれば、「コスト削減とは単なる『ケチケチ運動』ではなく」(66 ページ)、「『経営』と『現場』のすき間を継続して埋めていく作業であり、『運動』」だという。
コスト削減のハウ・ツーを整理したビジネス書はよく見かけるが、その“思想”について、このような形で具体的に書かれたものを読むのは初めてだ。
著者は繰り返し言う――「リストラクチャリングの本来の意味は『事業の再構築』です。企業の経営戦略の 1 つの手法です。決して経営が苦しくなってからのみ行うものではありません」(60 ページ)。
同じことを、最初に入社した上司から言われた。それから幾つかの会社を転職したが、本来の意味でない「リストラ」を強行している会社が多かった。
これでは現場の士気は下がってしまう。「『経営』と『現場』のすき間を継続して埋めていく作業」にはならない。「やれやれ、また上からコスト削減と言われたよ」という愚痴が出るのが関の山である。
著者は、「契約先・仕入れ先の業界つまり収益構造が“見える”とコストが大きく下がります」(99 ページ)と言う。これは言われてみるまで気づかなかった。たしかにその通りである。
自分が納入側の立場でいるときは、業界や他社との競争を意識して、自社が儲かるラインの数字をはじき出す。この見積額の算出方法をお客様へ教えることは決して無い。逆に言えば、この算出方法の部分はお客様に対するアドバンテージになっている。だが、本当にお客様が知らなくていいものなのか? お互いが WIN=WIN の関係になることを目指すならば、見積額の算出方法を含めてお客様にお伝えし、本音でコスト削減を話し合える間柄になった方がいいのではないか――こう考えた次第。
筆者は続ける。「そのために必要なもの、つまり最良の薬、それは、その業界の歴史に基づく先を読む力=『先見性』です」。
ここまで読んでくると、「コスト削減は数ある経営戦略の中で『経営』と『現場』、『組織』と『人』の間のすき間を埋める最高のミッションなのです。取り組みやすく、結果が明らかに出る。つまり即効性がある」(112 ページ)ということには同感だ。
上から目線のコスト削減計画に愚痴をこぼすのではなく、現場から経営者へ向かって本書の内容を発信することも必要だろう。
こうして経営と現場が接近して初めて、「一番大事なことは、ミスコピーの原因になるコピーそのものの枚数を減らすこと」(49 ページ)が実現できるのだ。
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