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著者・編者 | 長谷部誠=著 |
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出版情報 | 幻冬舎 |
出版年月 | 2011年03月発行 |
長谷部選手にとっての「『心』は、車で言うところの『エンジン』であり、ピアノで言うところの『弦』であり、テニスで言うところの『ガット』」(9 ページ)だという。心を整えるため、毎日 30 分、意識して心を鎮める時間を作っていたり、一人で温泉につかっているという。27 歳の若者とは思えない老成した発言と行動だ。また、松下幸之助や稲盛和夫の引用もあり、相当な勉強家でもあることを伺わせる。
「お酒は楽しむもので仕事の愚痴を言うためのガソリンじゃない」(31 ページ)と言い切る。また、「よくお酒が入ると相手の本音が引き出せるとも言うけれど、そういう考え方も好きじゃない。お酒の力を借りないと本音を言い合えないという関係がそもそも嫌だし、そんな状態で出てきた本音に価値を見出せない」(32 ページ)とも言っている。長谷部選手と同じ考えを持っている若者は少なくないだろう。年長者として、この考えは大切にしたい。
長谷部選手は、「アスリートにとって「自信」はガソリンのようなものだ」(86 ページ)と語る一方、上から目線の発言は絶対にプラスにならないと注意する。なぜなら、「自信が生まれたからといって偉くなるわけでもないし、ましてや成功や勝利は自分ひとりの力で勝ち取ったわけでもない」(87 ページ)だ。長谷部選手は、自らの名前である「誠」に恥じない人生を送ろうと考えているが、やみくもに正義を振りかざすタイプではない。「人にはそれぞれ価値観があって、絶対的な正解なんてない」(206 ページ)と考えているからだ。議論するにしても、まず相手の気持ちを想像することは必要なことだ。
20 代半ばの若者が、なぜこれほど老成した考えを持てるのか――答えは最終章にあった。
「心が折れそうになる瞬間を何度も味わった。あと一歩で足が止まりそうになったときもあった」(216 ページ)――アスリートは、毎日が正念場だからである。
アジアカップでキャプテンとなった長谷部選手は、「絶対に目を見て話す。目線を外さない」(223 ページ)を心がけたという。コミュニケーションの基本ルールだが、これを実践できる人はビジネスマンの中でも限られている。
あとがきで、本の題名について「僕がなぜこのように『心を整える』ことを重視しているのかというと、僕自身、自分が未熟で弱い人間だと認識しているから」(232 ページ)と記している。いやいや、長谷部選手の 2 倍近い人生を送ってきた立場から言わせてもらうと、弱いことを認識している人こそ最強ですよ。
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