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著者・編者 | 石黒浩=著 |
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出版情報 | 文藝春秋 |
出版年月 | 2015年12月発行 |
著者は、ジェミノイド、マツコロイドなど、人間そっくりのロボットを作り続ける工学者の石黒浩さん。関西弁で親しみやすいトークを展開するが、よい意味で傲慢な先生である。
石黒さんは、子どもの頃から人の気持ちを理解することができず、長じて「わかっていないくせに子どもにえらそうなことを言っているのが、大人」(11 ページ)と分かったという。美術を志すも、人工知能の研究に転じ、「『人の気持ちを考える』を理解するための人工知能を作るには、脳の神経団路を研究し真似しているだけではダメ」(13 ページ)だという考えから、動く身体を持つロボットの研究に没頭したという。これが、石黒さんが傲慢な背景なのだろう。
テレノイドやジェミノイドなど、ある程度、複雑な動作をプログラミングしたロボットを開発し、周囲の人間の反応を見て、石黒さんは、「心とは、複雑に動くものに実体的にあるというより、その動きを見ている側が想像しているものなのだ」(55 ページ)と確信したという。観察する側が勝手に存在していると思い込んでいるもの――それが「心」というのは、なんとなく納得がいく。
また、ペッパーの開発を通じて、「音声認識ゼロでも、ロボットと対話ができる。人間とロボットの間に必要なのは『会話している感』なのだ」(77 ページ)という、
美しすぎるロボット「ジェミノイドF」「エリカ」を開発した石黒さんは、当然、性的利用についても考察している。そして、「僕は人間がボランティア精神でセックスするよりも、アンドロイドを与えた方が、尊厳は保たれるような気がする」(90 ページ)という。政治家や宗教的指導者、そして祖先をもアンドロイドで代替できると言い放つ。こういう傲慢さは好きである。
さらに、ロボットによる高齢者や自閉症者のケアを通じて、「ロボット相手のコミュニケーションで練習すれば、人間相手とは違って遠慮する必要もない」(100 ページ)と言い切る。人間に比べて、遠慮なく「何度でも同じことをさせることができる」からだ。人間不信も、ここまで来ると天晴れである。石黒さんは、人の心を超えて、人間の存在そのものをロボットに投映してゆく。
本書でも『攻殻機動隊』や『アイ・ロボット』に言及しているが、ロボット工学三原則で有名なアイザック・アシモフの SF ロボット・シリーズに登場する、人間不信で陽電子ロボットを開発したスーザン・キャルビンは石黒さんに似ている。そして、最もロボット化された植民惑星ソラリアでは、ロボットが家族や社会の役割を担っている設定だ――。石黒さんは、「考え続ける限り、人間は、他の動物とも、ロボットとも違う存在でいられるはずだ」(223 ページ)と述べて締めくくる。アシモフ SF の正統な後継者を、ここに見た思いがした。
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