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著者・編者 | 長野恭彦=著 |
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出版情報 | 日本経済新聞出版社 |
出版年月 | 2011年10月発行 |
著者は、スコラ・コンサルトのプロセス・デザイナーで、経営者、役員、部長からなるチームをつくり、事業コンセプトの創出と実行による変革のプロセスコンサルテーションを実施している長野恭彦さん。本書は、「既存市場における成長の限界が見えている企業、競争力を失った事業の革新を課題に持つ企業、『効率追求』から『価値創造』の経営パラダイムへと転換が求められている企業、あるいは事業部門」(88 ページ)を対象に、トップと部長層から成る「戦略的経営チーム」による問題解決方法を提案する。
長野さんは、右肩上がりの安定した経営環境の時代は終わりを告げ、経営と現場の橋渡しとなるべき部長が機能不全に陥っていると指摘する。私も部長職にあるので、経営と現場にの間に矛盾があることは承知している。長野さんはこれらの矛盾を、「理屈と現実」「全体と部分」「管理と自由」という分かりやすいキーワードで整理し、「部長どうしがお互いに連携することができずに、それぞれが『ひとりで頑張る』ことが当たり前になっている状況が問題の本質」(73 ページ)と指摘する。
第4章は、設計プロセスを改善して半期で 8.5 億円の削減を達成したメーカー事例を紹介する。部署横断の CFT(Cross Functional Team)を立ち上げ、徹底的な情報共有を行うことで、迅速に問題解決できる体制を構築した。
長野さんは「グループリーダーでも部長でもひとりで課題を抱えて苦しんでいる状態がけっこうありますが、他人と相談すればすぐ解決できるというものが多いものです。特に技術者に関しては、そのあたりに無器用な人が多いので、せっかくいいコンテンツを持っていても、宝の持ち腐れになりがち」(170 ページ)と指摘する。
第5章は、市場が成熟して本業が先細る自動車整備会社の事例である。社長を交えたワークショップを行い、自分たちの未来を語り合うことで、あらたしい「事業の軸」が形になっていく。新しい事業の軸を現場に展開したときの現場の抵抗と、そのフォローも紹介している。
第6章は、チームで「事業の軸」を定めるワークショップを行った天竜精機の事例だ。ワークショップが煮詰まったとき、顧客視点に立ち返った。長野さんは、「メーカー側からの固定的な視点で見ているだけでは、性能と価格の追求に入りこむばかりです。それが、お客様側からの視点に立ってみると、まったく別の見え方ができたのです。新しい製品コンセプトが生まれた瞬間」(225 ページ)と記す。
巻末には、「人間関係の身体能力を高める『部長』のタテヨコ連携 49 のコツ」が示されている。
肝心なのは、本書に記されていることを、1 つでも多く実行してみることだろう。さて、明日からの仕事で、どれから実行してみようか――。
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