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著者・編者 | アイザック・アシモフ=著 |
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出版情報 | 早川書房 |
出版年月 | 1979年3月発行 |
未来の地球では増えすぎた人口を養うため、人々は「シティ」と呼ばれる巨大な鉄とコンクリートで覆われた都市の中に集合住宅を築き、食料とエネルギーを効率的に使うことで生き延びていた。一方、シティが完成する前に宇宙移民した人類は宇宙人と呼ばれ、人口では地球にはるか及ばないものの、ロボットを利用し、非常に高い科学技術文明を築いていた。
ある日、ニューヨーク市警の私服刑事イライジャ・ベイリは警視総監に呼び出され、宇宙人が殺されたという前代未聞の事件の捜査を命じられる。宇宙人からの指示で、人間と見間違うほどに精巧に作られたロボット・ダニール・オリヴォーがパートナーとしてやって来た。ロボットへの反感を持っているベイリは、容疑者の見当もつかない中、捜査を始める――。
ベイリは一度は間違った結論に達したものの、宇宙人ファストルフ博士や、地球人のロボット学者ジェリゲル博士、そして、懐古主義者の一員クロウサーとの対話を通じ、ついに真犯人に辿り着く。それは意外な人物であった――。
本書を初めて読んだのは、たしか中学生の時である。その後、何度か読み直したが、今回ついに、ベイリの年齢を追い越してしまった。翻訳は、今の私より若くして亡くなった福島正実氏だが、氏の本格的な訳があったればこそ、大人になった今でも読める作品となっている。この歳で読み直してみると、また新しい視点が開けてくる。
たとえば、地球人の宇宙人に対する劣等感は、いわゆる3K(高身長・高所得・高学歴)や、アジア人が欧米人に抱く劣等感と同じではないか。地球人はそれがために、宇宙都市へ暴動を起こしたがすぐ鎮圧されてしまう。前へ進もうということ諦め、ただ劣等感に苛まれる集団は、暴動を完遂する気構えも無いものだ。地球人がロボットに対して向ける敵意は、自分の仕事が奪われるのではないかという恐怖に由来する。これは現代社会において、人工知能に向けて同じ恐怖を感じしている人々がいる。
そんな中、狭い共同住宅に住み、妻ジェシィの身を案じ、息子ベントリィの将来を考えながら上司の無理難題に応じる父親ベイリは、日本人のお父さんそのものではないか。
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