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著者・編者 | 浜本 隆志=著 |
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出版情報 | 集英社 |
出版年月 | 2017年7月発行 |
著者は、関西大学名誉教授で、ヨーロッパ文化論・比較文化論に詳しい浜本隆志さん。2012 年、シュトゥットガルト大学の研究グループが発表した「隕石仏像」は、1938 年にナチスのチベット探検隊が持ち帰ったものだとする論文を発表した。本書は、その審議の検証から始まり、ナチス、とくにヒムラーの人種差別の裏にあるオカルト主義に斬り込んでいく。
冒頭、アーリア人種主義を信奉していたナチスの親衛隊長官ヒムラーが、そのルーツをたどるべく、1938 年 4 月、チベットへ探検隊を派遣した史実を紹介する。
チベットには隕石信仰があり、そこで隕石(隕鉄)を原料に作られた仏像が、件の「隕石仏像」であり、これを探検隊のメンバがドイツに持ち帰ったというのが、冒頭の学説である。だが、浜本さんは仏像の作りを細かに分析し、ヨーロッパ人による贋作だと結論づける。
浜本さんによれば、アーリア人としての共通祖先をもつことの確証として、この隕石仏像を捏造したのではないかというのだ。ただ、ドイツやチベットの正史に、隕石仏像は登場した。もちろん、アーリア人という概念自体が、非科学的なものである。
21 世紀の今日においても、人種差別や民族迫害は続いている。かつて隕石仏像を捏造し、いわゆるアーリア人に比べて背が低く、劣等感に苛まれていたであろうハインリッヒ・ヒムラーを、私たちは笑うことができるであろうか。彼のように優しく頭が良く空想力のある人間が、同じ轍を踏まないとは限らない。オウム真理教による連続テロ事件が連想される。「ナチスは悪」「オカルトはトンデモ」と思考停止してはいけないと感じる。
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