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著者・編者 | 中山 七里=著 |
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出版情報 | KADOKAWA |
出版年月 | 2017年11月発行 |
作者は、『さよならドビュッシー』で第8 回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010 年にデビューしたミステリー作家の中山七里さん。本作は『切り裂きジャックの告白』『七色の毒』に続く、「刑事犬養隼人」シリーズ第3 弾だ。現役医師の海堂尊氏をミステリー作家に押し上げた「このミステリーがすごい」大賞受賞者で、似たようなスターシステム的作風であることから、海堂尊氏に作風を真似させてもらったと断ったそうである。だがしかし、いくら露悪的社会派ミステリーにしても、子宮頸がんワクチンに関わる場所や組織が容易に推測できる本作は、本当に大丈夫か? ミステリーとしての謎解きも消化不良である。
誘拐の舞台となった神楽坂の安養寺、白菊稲荷神社、参議院議員会館は実在する。また、香苗が通院していた飯田橋メディカルセンターや、槇野が会長と務める日本産婦人科協会、綾子が主催する全国子宮頸がんワクチン被害者対策会、犬養が捜査している帝都大附属病院、亜美が通っている九段女子学園は、そのモデルが容易に推測できてしまう。だが、本書のどこを探しても、「この作品はフィクションです」と記されていない――大丈夫か、これ?
厳しいことを言わせてもらえば、露悪的社会派ミステリーを標榜するのは、それは作者にフィクションを書き切るだけの力量がないことを誤魔化しているだけではないか。そもそも、真犯人が「ハーメルンの笛吹き男」に託したメッセージ性は何だったのか――作者の他の作品を読んでいないのだが、本作を読んだ限りでは、犬養刑事の上司である麻生警部の活躍に期待を寄せている。台詞に救いがあったし、登場人物の名前の由来から考えても、現役の「閣下」だから(笑)。
文庫版では、三省堂書店の新井見枝香氏が「解説」で、「本作は、いささか偏りがあると感じた」として、本作の後日談を書いてフォローしている。亜美の友人、栗田美鳥の口を借りて「実際、ワクチンのおかげで、世界の子宮頸がん患者は激減した」と語らせ、香苗の結婚式会場で幕を閉じる。めでたし、めでたし。
15 歳の月島香苗(かなえ)は、綾子が母親であることを認識できない。週に一度、飯田橋メディカルセンターに通院する彼女は、心理的・社会的ストレスによって記憶障害が引き起こされたものと診断されていた。そんな中、神楽坂で安養寺で香苗が行方不明になる。近くのドラッグストアのドアに、香苗の生徒証とともに、「ハーメルンの笛吹き男」の絵葉書が残されていた。この誘拐事件を受け、捜査一課の犬養隼人が呼び出される。
犬養は捜査の過程で、綾子が実名でブログを運営していることを知る。綾子は、最初は香苗の病状を綴っていたが、全国子宮頸がんワクチン被害者対策会のメンバと接触すると、記憶障害の原因が子宮頸がんワクチンの副作用であることを知り、犯人捜しと告発を書き込むようになっていった。犬養は、子宮頸がんワクチンを推奨する日本産婦人科協会の槇野会長が綾子の活動に敵意を抱いているのではないかと睨む。
そんな中、2 人目の誘拐事件が起きる。九段下の白菊稲荷神社で、九段女子学園の亜美が行方不明になった。彼女は、槇野会長の 1 人娘だった。犬養は混乱する。
さらに、全国子宮頸がんワクチン被害者対策会が参議院議員会館で代議士を相手に被害救済を訴えた直後、マイクロバスに乗ったワクチン被害者少女 5 人が行方不明になってしまう。
そして、「ハーメルンの笛吹き男」は、ワクチンを製造する製薬会社2社と日本産婦人科協会を相手に、70 億円の身代金を要求してきた。
身代金の受け渡しは、東京ではなく大阪だ。最初に指定された日本橋三丁目交差点から、携帯メールで何度も場所を変える指示があり、最終的に道頓堀橋の上から小型船にアタッシュケースごと身代金を落とす。
まんまと「ハーメルンの笛吹き男」に 70 億円を奪われてしまったが、犬養は疑問を感じた――犯人はどこから警察の動きを見張っていたのか。医療が必要な人質たちをどうやって生かしていたのか。
犬養は、実行犯まで辿り着くが、目の前で「ハーメルンの笛吹き男」計画の首謀者を逃がしてしまう。
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