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2019.06.08
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カテゴリ: 書籍
火星の遺跡

火星の遺跡

 ハミルトン「あの男が言ったことはなにもかも現実になっている! たしかに、わたしには説明できないし、きみにも説明できないし、ここにいるだれにも説明できない。それでも、ときには科学では説明のつかないことが起こるものなんだ」(399ページ)
著者・編者 ジェイムズ・P・ホーガン=著
出版情報 東京創元社
出版年月 2018年12月発行

本書は、火星を舞台に、紛争調停人キーラン・セインが活躍する 2部構成の SF だ。著者は、『星を継ぐもの』『創世記機械』などでお馴染みのジェイムズ・ P ・ホーガン。2010 年に亡くなったが、本書は 2001 年に書かれたもので、17 年の時を経て翻訳された。ドローンやパッド、そしてハッキング・テクニックなど、現代でも色褪せない仕掛けは、コンピュータ・セールスマンだったホーガンらしい作品となっている。

火星では、ベンチャー宇宙企業体クアントニックスがテレポーテーション技術の人体実験に成功した。ちょうど火星を訪れていたキーランは、テレポーテーション技術を開発し、自らが実験台となった科学者レナード・サルダと接触する。
自信満々に実験成果を語るサルダだが、次に会ったときには、銀行に入金された成功報酬が全て無くなってしまったと、自信を喪失してキーランに相談をもちかける。銀行によれば、本人でなければ知り得ないパスワードを使って、正当に出金されたという。
はたしてサルダの身の回りに何が起きたのか。そして、人体テレポーテーションは成功したのか。

キーランは火星での人脈をフル活用し、ファラオの呪いや高次元精神といったキラキラ・スピリットに弱いお嬢様=ギルダーの娘マリッサをまんまと騙し、発掘調査隊を窮地から救おうと画策する。最後の一歩というところでキーランたちは捕まってしまうが、火星の遺跡が彼らの救いとなったのだった。

本書には、SF ファンやトンデモ・ウォッチーならニヤリとさせられる伏線が張ってある。
1 万 2 千年前の事件を追うキーランに対し、ビジネス・パートナーであるジェーン・ホランドが「原因は巨大な彗星でそれが金星になったとか」(121 ページ)と発言するシーンがあるが、これはイマヌエル・ヴェリコフスキー『衝突する宇宙』(通称「ヴェリコフスキーの彗星」)が元ネタだろう。その他、エジプトのピラミッドやファラオの呪い、インカの巨石建造物など、失われた超古代文明「テクノリシクス文明」が存在していることが前提になっている。また、モンティ・ホール問題 https://www.pahoo.org/e-soul/webtech/phpgd/phpgd-23-01.shtm を話題として取り上げている。
だが、そこでハード SF の巨匠であり、ウィットましましのイングランド人、ホーガンの筆がうなりを上げる。フラグ回収などどこ吹く風で、キーランはジェーンに「今宵は石油王とディナーというのはどうだい?」と誘って大団円。読んでいるこちらは大爆笑。まるで 2019 年の日本人向けに書かれた小説のようである。

また、本書に限っては、UFO現象学者の礒部剛喜氏による解説「テクノリシク文明の呪縛」を先に読むことで、本編を 256 倍ほど愉しむことができるだろう。その全文が公式サイトに掲げられているので、ご一読を http://www.webmysteries.jp/archives/13865100.html






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最終更新日  2019.06.08 12:41:32
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