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著者・編者 | ジェイムズ・P・ホーガン=著 |
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出版情報 | 東京創元社 |
出版年月 | 1999年7月発行 |
本書は、人工知能をめぐる科学とビジネスの対立を軸に、人工知能に学習させることができない人間の心の葛藤を、ユーモアタップリに描き出したハード SF だ。著者は、『星を継ぐもの』『創世記機械』などでお馴染みのジェイムズ・ P ・ホーガン。2010 年に亡くなっているが、本書は 1995 年に書かれたもので、人工知能の冬の時代であるにも関わらず、今日のディープラーニングを彷彿とさせる舞台設定となっている。コンピュータ・セールスマンだったホーガンの面目躍如といったところ。
科学者ジョー・コリガンは、ある日、見知らぬ病院で目を覚ました。彼は記憶を失っており、自分が誰であり、どんな仕事をしていたのかも思い出せなかった。担当医師ゼールやカウンセラーの治療を受け、徐々に記憶を取り戻してゆく。
彼は人工知能「オズ」の研究開発に従事しており、人工知能に学習させるために現実世界に限りなく近いヴァーチャル・リアリティの開発に従事していたのだ。だが、ドクター・ゼールの治療方針として、彼を元の職場に戻すことをせず、バーテンの仕事をするなどしてリハビリに努めさせた。ジョーは臭いを感じることができなくなっていた。そして、人々の様子や、世界の在り方にどうしようもない違和感を覚えていた。そうして 12 年の歳月が流れた。
ある日、ジョーの前に現れた女性リリィが告げた。この世界はヴァーチャル・リアリティであり、私たちはそこに閉じ困られていることを。
そう考えると辻褄が合う。人々の様子がおかしいのは、それは現実の人間の思考を真似るようコンピュータが作り出したアニメーションなのだが、学習過程に何らかの問題があり、現実世界の忠実な複製となっていない。なによりも臭いが感じられないのは、ジョーたち現実の人間とのインターフェースとして、嗅覚だけがシステムに実装されていなかったからだ。
ジョーは世界からの脱出を試みたが、ある日突然、現実世界に戻され、そこで目覚めた。だがそこは、オズが稼動開始する直前の世界だった。ジョーは時間を遡ったのだろうか。
ジョーたちを罠にはめたのは、ライバル科学者のフランク・タイロンなのか。上司のジェイスン・ P ・パインダーはジョーに助け船を出せるか。出資者であるケン・エンデルマイヤーは何を追い求めているのか――各人各様の目論見が渦巻く中、舞台はめまぐるしく変化する。はたしてジョーは現実世界に戻ることはできるのか。
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