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2019.09.19
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カテゴリ: 書籍
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること

 「結婚するもしないも、子供を持つも持たないも、個人の自由だ」と語る人々が増え、子供が生まれなくなった社会の行き着く果てに待ちうけるのは、国家の消滅である。(9ページ)
著者・編者 河合 雅司=著
出版情報 講談社
出版年月 2017年6月発行

著者は、産経新聞社の論説委員で、人口政策、社会保障政策を専門とする大正大学客員教授の河合雅司さん。第1部では、人口減少が続き、出生数も 100 万人を割っている日本で、これからどのようなことが起きるのかを「未来年表」として整理する。まず驚くのが、来年 2020 年、女性の 2 人に 1 人が 50 歳以上になることだ。河合さんは、「経済が成長し続けたとしても、少子化に歯止めがかかったり、高齢者の激増スピードが緩んだりするわけでは断じてない」(6 ページ)と指摘したうえで、それにどう対応していけばよいのかを、第2部で提案する。われわれ国民一人一人に発想の転換を迫る内容だ。

河合さんは、日本の喫緊の課題を 4 つに整理する。
+出生数の減少
+高齢者の激増
+勤労世代(20~64 歳)の激減に伴う社会の支え手の不足
+これらが互いに絡み合って起こる人口減少

今後の人口シミュレーションでは、高齢者の割合は増えるのだが、企業などが即戦力として期待するような比較的若い高齢者(65~74 歳)はむしろ減っていくという。IT産業における人手不足が、AI など新規技術の開発の足を引っ張るという悪循環に陥る。晩婚・晩産の影響で、育児と介護を同時に行わざるを得ない「ダブルケア」に直面する人が増え、働き盛りの介護離職も増えるだろう。

河合さんは「東京一極集中は日本の破綻につながる」(79 ページ)と警鐘を鳴らす。東京は食料やエネルギーの供給を地方に頼っており、その地方から人材を吸い上げて、地方が機能しなくなったのでは、東京自身の首を絞めることに他ならないからだ。

2027 年には、輸血の必要量がピークを迎える。怪我人に対する輸血は全体の 3.5%程度で、多くは癌患者に使われる。血液を必要とする高齢者が増え、一方で献血する若者が急減しており、輸血用血液の不足は深刻な社会問題となるだろう。

地方人口が縮小すると、継続できない事業が出てくる。事業の存在確率80%でみると、訪問介護事業は 2 万 7500 人、救急告示病院は 3 万 7500 人、有料老人ホームは 2 万 5000 人、大学や映画館は 7 万 5000 人、公認会計士事務所は 8 万 5000 人の人口規模が必要。このため、2040 年には自治体の約半数が消滅の危機にさらされるという。

急速に高齢化が進む東京圏では、介護を要する高齢者用のベッドが不足し、さらには斎場や火葬場が不足するだろう。遺族が減ると、自治体が無期限で保管している納骨堂が一杯になるかもしれない。

河合さんは、高齢化と少子化とは全く種類の異なる問題としたうえで、「日本の少子高齢化と人口減少の実態は、大都市部と地方とで大きく異なっている」(126 ページ)と指摘する。つまり、大都市部では総人口はあまり減らず、高齢者の実数だけが増えていく。これに対して、地方では総人口は減少するが、高齢者の実数はさほど増えるわけではない。

労働者が減ることに対し、外国人労働者や AI(人工知能)の利用が提案されているが、河合さんは「開発者たちが AI を使った未来図を描くことなく、単なる精度競争に引きずられたならば、人口減少社会の課題解決に役立たぬものにしかならない可能性だってある」(157 ページ)ちお手厳しい。

河合さんは第2部で、戦略的に縮むことを提言する。「戦略的に縮む」「豊かさを維持する」「脱・東京一極集中」「少子化対策」の 4 つをキーワードとして、現段階で着手すべき「日本を救う 10 の処方箋」を示す。
24 時間営業を止めるなど便利過ぎる社会からの脱却や、非居住エリアを明確化することなど、大胆な発想転換が必要であることをアピールする。
そして、「時代の変遷とともに、国際情勢は変わり、日本社会の在り方もどんどん変わっていく。人口減少対策とは、こうした変化も踏まえながら、世代のリレー方式でじっくり腰を据えて議論すべきテーマ」(199 ページ)と結ぶ。






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最終更新日  2019.09.19 12:01:24
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