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2020.06.05
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カテゴリ: 書籍
地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学

地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学

 太陽系は惑星系の標準ではない(157ページ)
著者・編者 成田憲保=著
出版情報 講談社
出版年月 2020年3月発行

著者は、国立天文台研究員、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻助教などを経て、2019 年よりアストロバイオロジーセンター特任准教授にある成田憲保さん。系外惑星研究の前線で活躍している研究者の言葉には、科学心を揺さぶられる。
1995 年に最初の系外惑星が発見され、発見者のマイヨールとケローには 2019 年度のノーベル物理学賞が授与された。2020 年現在、NASA Exoplanet Archive https://exoplanetarchive.ipac.caltech.edu/ には 4 千を超える系外惑星のデータが収められており、無償利用できる。
これらを分析すると、ホット・ジュピター、エキセントリック・プラネット、スーパー・アースなど太陽系にない惑星が多く、太陽系は惑星系の標準ではないということが言える。
水が液体として存在しうるハビタブルプラネットの割合は、太陽型星だと約 2 割、太陽より温度が低い赤色矮星では約 5 割だという。
では、ハビタブルプラネットに生命はいるだろうか――これから打ち上げられる宇宙望遠鏡や、口径 30 メートル級の大型地上望遠鏡によって系外惑星の大気が観測されるようになり、こうした疑問が 1 つ 1 つ解き明かされていくことだろう。
これからの研究によって、私たちが思いも寄らなかった宇宙の姿が明らかにされるかもしれない。

太陽系の 8 つの惑星は、岩石惑星(水星、金星、地球、火星)、巨大ガス惑星(木星、土星)、巨大氷惑星(天王星、海王星)に分類でき、これらの惑星は京都モデルによって形成されたと考えられてきた。ところが、この常識は系外惑星の発見によって完全に覆された。
系外惑星の探索の歴史は古く、1938 年から 1962 年にかけ、ファンデカンプがバーナード星の位置データを解析し、木星の約 1.6 倍の質量をもつ巨大惑星があると発表した。しかし、1970 年代に入り、望遠鏡のレンズの誤差によるモノだと判明した。1995 年 10 月、イタリア・フィレンツェで開催された国際会議Cool Stars 9 で、スイスの天文学者ミシェル・マイヨールが当時大学院生だったディディエ・ケローとともに、太陽型星であるペガスス座 51番星を公転する木星の半分程度の質量の惑星を発見した、と報告した。これが初めての系外惑星と確認され、マイヨールとケローには 2019 年度のノーベル物理学賞が授与された。
2008 年、宇宙望遠鏡ケプラー(口径 1.4 メートル)が打ち上げられると、4000 以上もの惑星候補が発見された。そして 2018 年までに、2000 以上の惑星候補が本物の惑星だと確認されている。ケプラーの観測結果から、ハビタブルゾーンに地球くらいの大きさの惑星(ハビタブルプラネット)がある割合は、太陽型星だとだいたい 2 割(誤差は 1 割)程度、太陽より温度が低い赤色矮星では 5 割(誤差は 3 割)程度だということがわかった。

系外惑星の探索方法として、現在、4 つの観測方式がある。
1)視線測度法‥‥光のドップラー効果を利用し、主星の視線方向への運動速度変化を観測する。主星のそばにある重い惑星ほど発見しやすく、惑星の公転周期、軌道、そして質量の下限値がわかる。
2)トランジット法‥‥惑星が主星の前を通り過ぎることによって生じる明るさの変化を観測する。惑星の半径を測定できる唯一の方法で、ほかの方法より公転周期を正確に決められる。
3)マイクロレンズ法‥‥重力レンズ効果を利用した観測方法で、スノーライン付近にある惑星を発見しやすい。
4)直接撮像法‥‥補償光学とコロナグラフを使って、惑星からの光を直接とらえる。現在の技術では、若い恒星のまわりで公転距離の大きなところを公転する巨大惑星が発見できる。

2020 年現在、4000 を超える系外惑星が発見されている。
そのなかには、主星に近いところを公転している巨大惑星「ホット・ジュピター」や、軌道離心率が大きい「エキセントリック・プラネット」、岩石惑星だが地球より大きな「スーパー・アース」など、太陽系とは異なる様相の惑星が多く含まされている。太陽系には無い逆行惑星も 10 個以上発見された。
これらの観測事実から、太陽系は惑星系の標準ではないということが言える。
私が天文少年時代に学んだ太陽系生成理論「京都モデル」を修正する必要が出てきている。代替理論の中には、京都モデルと同時代の「古在機構」を系外惑星に適用するというものもある。
さらには、2 つ以上の巨大惑星がお互いを弾き飛ばすという「惑星散乱」が起きることも、コンピュータ・シミュレーションでわかってきた。これは、トンデモ本の古典『衝突する宇宙』や J ・ P ・ホーガンの SF『星を継ぐもの』のプロットに似ている。

惑星の表面に液体の水が保持されうる「ハビタブル・プラネット」も、宇宙で比較的ありふれた存在のようだ。2 割程度の太陽型星と 5 割程度の赤色矮星がハビタブルゾーン付近に地球の 2 倍以下の半径の惑星をもつといわれている。かつて地球がスノーボールアースだったことを考えると、ほとんど凍りついているような系外惑星でも、一部に氷が溶けた部分があって、そこに生命がいる可能性は否定できない。

今後の系外惑星探査の大きな流れとして、なるべく太陽系の近くにある惑星系の小さな惑星、とくに生命の痕跡まで探すことが可能なハビタブルプラネットたちを発見するという目標が掲げられている。恒星の 70%強は赤色矮星で、太陽系に近い恒星もほとんどは赤色矮星だ。これらの観測にも力が注がれている。もしかすると地球外生命体の視覚は、われわれとは異なる光の波長に反応するのかもしれない。

今後、生命の徴候を見つけるために、系外惑星の大気に観測が集まるという。
NASA が 2021 年に打ち上げを計画しているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(口径 6.5 メートル)、ロシアが 2020 年代半ばの打ち上げを検討している WSO-UV(口径 1.7 メートル)。そして、2020 年代半ば以降に登場する大型地上望遠鏡GMT(24.5 メートル)、E-ELT(口径 39 メートル)、TMT(口径 30 メートル)を使えば、系外惑星の酸素分子の検出が実現できるかもしれない。
もし系外のハビタブルプラネットの大気中に酸素が発見されたら、それが非生物由来である可能性を検討しなくてはならない。クロロフィルという色素を使う酸素発生型光合成生物が示す反射特性「レッドエッジ」を調べる必要も出てくるだろう。

成田さんは、「これからはじまる生命惑星探査の前に、さまざまな分野の知識を総動員して何が生命の兆候として観測可能か、そして非生物由来の偽物の兆候との判別方法を考えることが重要」(273 ページ)と締めくくる。最後に成田さんは、DNA とは異なる遺伝物質をもつ生命や、SF に登場するような岩石や金属の体をもつ生命などが存在する可能性を本書で取り扱わなかった背景について、「地球の生命の仕組みとかけ離れた生命を仮定すると、科学的な議論がしにくくなって」(278 ページ)しまうことを記している。科学者としての真摯な態度に感銘を受けた。






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最終更新日  2020.06.05 12:12:38
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