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著者・編者 | アイザック・アシモフ=著 |
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出版情報 | 早川書房 |
出版年月 | 1998年6月発行 |
皇帝クレオン 1 世の殺害について、首相だったハリ・セルダンの責任は問われなかった。彼は首相の任を解かれ、ストリ-リング大学に戻り、心理歴史学の研究を続けた。衰退に向かっていた銀河帝国を救うために――。
60 歳の誕生日を迎えたセルダンを、妻ドース・ヴェナビリ、養子のレイチと、その妻マネルラ、そして、共同研究者のユーゴ・アマリルをはじめとする大学の多くの職員・学生がセルダンの誕生日を祝った。そんな中、孫娘のウォンダは、セルダンが死ぬ夢を見たという。レモネード・デスがキーワードだった。
クレオン亡き後の銀河帝国は、ドゥーガル・テナール将軍が率いる軍事政権によって支配されていた。ヘンダー・リン大佐はテナール将軍に、セルダンを排除し、心理歴史学を手に入れるべきだと進言する。
テナール将軍はセルダンと会談するが、それより前にドースが皇居に入り込んでリン大佐を脅迫し、セルダンを解放させた。
心理歴史学の膨大な方程式はプライム・レイディアントと呼ばれるキューブに収められていた。2 個あるプライム・レイディアントは、セルダンとアマリルだけが使うことができた。そして、これを使うには、若い数学者タムワイル・エラーが設計し、技術者シンダ・モネイが開発した電子浄化器が必要だった。ドースは、セルダンとアマリルが目に見えて衰えているのは、電子浄化器のせいだと考え、エラーに詰め寄った。だが、電子浄化器が本当に悪影響を及ぼす胃のは人間ではなく‥‥ドースはエラーを殺したが、自らも重傷を負い、セルダンの前で絶命する――。
セルダンは 70 歳になり、銀河図書館にオフィスを構え、心理歴史学の研究を続けていた。
その数年前、ウォンダはアマリルの研究室を訪れ、プライム・レイディアントを見て心理歴史学に目覚める。アマリルは他界するが、ウォンダがその後を継いだ。
軍事政権はセルダンの示唆によって瓦解し、セルダンは皇帝エイジス 14 世と友好関係にあった。だが、トランターは荒廃し、治安が悪化していた。レイチ、マリレナ夫婦と次女のベイスは惑星サンタンニへ旅立った。ウォンダは残り、精神感応力を使ってセルダンを守るといった。
その頃、アマリルがプランを立てていた 2 つのファウンデーションのうちの 1 つを設置するのに適当な惑星ターミナスを、図書館長ラス・ゼノウから紹介される。セルダンはゼノウに、銀河百科事典(エンレイクロペディアギャラクティカ)編纂プロジェクトのために場所が必要だとして、ゼノウに協力を依頼していたのだ。
一方、ウォンダの精神感能力をもってしても、セルダン何度か暴漢に襲われた。そんなとき、ステッティン・パルヴァーという青年が心理歴史学の研究に加わり、セルダンを守る。ステッティンもまた、精神感応者だった。2 人は、暴漢たちから逆訴訟されたセルダンの裁判を有利に運び、枯渇していたプロジェクト資金を確保し、銀河図書館にオフィスを確保した。
銀河紀元 12069 年、ボー・アルリンやガール・ドーニックたちはターミナスへ移民し、ウォンダとステッティンは星海の果て(スターズ・エンド)へ旅立った。ハリ・セルダンがストリーリング大学の研究室に突っ伏して死んでいるのが見つかった。その手は、作動させたプライム・レイディアントをしっかりと握っていた。セルダンの葬儀にエト・デマーゼルの姿があったが、リンジ・チェンが率いる公安委員会はその行方をつかむことができなかった――。
作者のアイザック・アシモフは 1992 年 4 月 6 日に 72 歳で他界した。本作品はその死後に刊行された。アシモフ最後の長編小説で、これが遺作となった。
心理歴史学を研究していたセルダンとアマリルは、組織のメンバ同士の摩擦を減少させようとすると、別のメンバの間で摩擦が増える「人的問題保存の法則」を発見したという。また、セルダンが「愚かなことをいう習慣がつくと、だれか他人の面前で、いつ、うっかり口を滑らせるかわからない――それも、喜んで告げ口するやつの前でね」(42 ページ)と言う――これらは、アシモフによる人間観察の成果であろう。
本書のエピローグは、シリーズ第1 巻『ファウンデーション』に繋がり、登場人物の関係が再構築され、壮大なファウンデーション・シリーズの円環は閉じる――。
あとがきは、小説『銀河英雄伝説』シリーズの作者、田中芳樹さん。田中芳樹さんもまた、アシモフに影響を受けた作家の 1 人だ。
リアルタイムで読んだときは 20 代だった私も、首相を辞めて大学に戻ったハリ・セルダンの年齢である。こうして読み返してみると、もしかすると自分はセルダンの人生を追体験しているのではないかという気にさせられる。『銀河帝国の興亡』で初めてハリ・セルダンに出会ってから、40 年以上の歳月が流れた。人類が地球から発祥したことは分かった――では、この先どこへ行くのか。それは、私たち“次の世代”に託された課題ではないか。心理歴史学は、終わりのない壮大な人類プロジェクトである。
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