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2021.10.24
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カテゴリ: 書籍
宇宙人と出会う前に読む本

宇宙人と出会う前に読む本

 地球人全体ではどうかはわかりませんが、少なくとも日本人には、「太陽が1つ」であることは普通だと思っている人が多いように私は感じています。(61ページ)
著者・編者 高水裕一=著
出版情報 講談社
出版年月 2021年7月発行

冒頭の質問だが、「地球という惑星から来ました」では答えにならない。高水さんは、「海外で初対面の相手にどこから来たのかを聞かれて、いきなり「○○県から来ました!」と答えるようなもの」(16 ページ)と指摘する。ごもっとも。地球の常識は宇宙の非常識かもしれない――こんな疑問を抱きつつ、要所要所に記されている「偏差値」というキーワードを頼りに、神話・宗教から、物理学、生物学、地学(天文学)の知識の棚卸しをすることができた。そして、子どもの頃から感じている疑問を思い出した――。

自分が住んでいる惑星から見た星座の形を描くことができる立体星座カタログや、太陽が実は緑色であること(星のスペクトル分類図)、元素の周期表といった普遍的な原理をベースに宇宙人とコミュニケーションすることができるのではないか――。
地球の常識は宇宙の非常識かもしれない――太陽が 1 つというのは、じつは珍しい。恒星の半分以上は、連星だからだ。月(衛星)が 1 つというのも、これも珍しい。太陽系の惑星を見渡してみれば、地球だけだ。太陽と月の運行をベースにした地球のカレンダーは、これも銀河系では珍しいものだろう。
高水さんは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった一神教は、「太陽が 1 つしかなかったことに起因しているのではないだろうか?」(92 ページ)と疑問を投げかける。
世界神話学入門 』(後藤明=著,2017 年)で、世界中の神話はゴンドワナ型とローラシア型の 2 つに大別できると書いてあった。私はゴンドワナ型の神話は大地母神系=アニミズム系で多神教、天空に関心をもったローラシア型神話が一神教になったものだと考えている。『 サピエンス全史 』(ユヴァル・ノア・ハラリ=著,2016 年)で紹介されているように、最初に“出アフリカ”したホモ・サピエンスがゴンドワナ型で、そのあと、7 万年前に再び“出アフリカ”したホモ・サピエンスがローラシア型だったのかもしれない。

話は、4 つの力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)と量子重力理論から、ダークマターやダークエネルギーに入っていく。20 世紀後半になってから発見された知見を、できる限り数式を使わず、たとえ話を交えて解説してくれる。量子力学が多くの科学者の合作である一方、相対性理論はアインシュタインが単独で構築したという下りは、『 宇宙は「もつれ」でできている 』(ルイーザ・ギルダー,2016 年)が詳しい。ダークマターを宇宙の創造神、ダークエネルギーを破壊神にたとえてみたり、アインシュタイン方程式に含まれるΛ(ラムダ=宇宙項)は、万有引力の真反対の万有斥力であり、これがダークエネルギーによってもたらされていること。さらに、宇宙項などの宇宙定数がこの値であったから、偶然、46 億年前に誕生した地球に生命が誕生したと考えられていること。
高水さんは「この宇宙はわれわれ知的生命が現れるのに都合よく設定されている、とする『人間原理』」(134 ページ)がナンセンスであると書いているが、私も同感で、しかしながら、それに反論ができない点も同じである。

1964 年に発見された 宇宙背景輻射 は、英語で CMB(Cosmic Microwave Background)と略されることが書かれているが、これは私の勝手な推測だが、聖書に登場する東方の三博士(Casper、Melchior、Balthasar)に掛けているのではないだろうか。漫画『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』(加藤元浩,2005~2020 年)を思い出し、宇宙論というのは謎解きの要素が詰まっていると、あらためて感じた。

第8章は生物進化の話題――高水さんは専門外とは言いつつ、回転対称のような形や、ウニやヒトデのように放射相称だった生物が、カンブリア紀の大爆発以降に前後ができ、左右対象となり、脊椎動物では感覚情報の入力の左右と、出力の左右とが交差するような神経系になっている経緯を、仮説を交えながら解説していく。また、地球上の動物は 5 本指であること(ウマ、イヌ、ネコでは一部退化、パンダの 6 本目の指は別物など)、ヒトもキリンも頸椎は 7 個しかないことなど、生物知識の棚卸しをしてくれる。さらに、スノーボールアース、大量絶滅、巨大な衛星など、地学知識も棚卸しできる。

第9章は数学だ――数の単位、自然数、素数、単位元、逆元、ゼロ、整数、有理数、実数、複素数、群、環、体、完備化、代数閉包、四元数、八元数‥‥分からなければ、数学の参考書をひっくり返してみよう。
ここで登場するヘンローズという、とある有名な数学者をもじったような学者がこう言う――「俺は、すぐれた数の概念をもつ宇宙人の数学は、自然数ではなく、素数をベースにしているのではないかと考えている」(226 ページ)。これは興味深い考えだ。
巻末にある「あなたの宇宙偏差値をチェックしよう」は知識の棚卸しに役立つ。

最後に高水さんはマックス・プランクの言葉を引用する――科学は自然の神秘を解き明かすことではない。なぜなら私たち自身が自然の一部であり、解き明かそうとする神秘の一部なのだから。(260 ページ)本書の冒頭で、宇宙人から「あなたはどこから来ましたか?」という問いかけがあったが、最後まで読んで、子どもの頃から感じている疑問を思い出した――私はどこから来たのだろう、そしてどこへ向かってゆくのだろう――。






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最終更新日  2021.10.24 11:44:58
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