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2021.12.21
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カテゴリ: 書籍
AIの雑談力

AIの雑談力

 AIは社会の一員として、人間とうまくやっていくために雑談を始めたのです。(18ページ)
著者・編者 東中竜一郎=著
出版情報 KADOKAWA
出版年月 2021年2月発行

著者は、 東ロボくん プロジェクトや NTT ドコモの 雑談対話API の開発などに携わり、対話システムが専門の 東中竜一郎  ( ひがしなか りゅういちろう )  さん。雑談AI が必要とされている背景や、その仕組みを解説した技術書であるが、私たちが普段、リアル社会やネット社会で交わしている雑談が、いかに人間関係に重要な役割を果たしているかを再認識させられた。
また、本書には、「 俺の妹がこんなに可愛いわけがない 」「 シュタインズ・ゲート ゼロ 」、 マツコ・デラックス マックスむらい の名前が並び、その方面の方であれば、ニヤリとすること請け合いだ。

アレクサや Siri といった AI が、なぜ雑談できるようになっているかというと、雑談を交わしているうちにユーザーの信頼を得ることができるからだ。東中さんは、これを「AI は社会の一員として、人間とうまくやっていくために雑談を始めたのです」(18 ページ)と書いている。
これはリアル社会でも同じで、教えるのが巧い教師、業績がいい営業、息の長いタレントは、皆、雑談が巧い。だから、 GAFA (Google、Amazon、Facebook、Apple)は雑談AI の研究に多くのリソースを投入している。
私は第2 次 AI ブームの時に研究サイドにいて、専門家のノウハウを AI に実装する[エキスパートシステム:wikipedia]の研究開発を行っていた。本書で取り上げられている、第1 次 AI ブームの産物 ELIZA  ( イライザ )  を参考にしたこともある。お遊びとして、パソコン通信上で自動チャットする「[人工無能:wikipedia]」を作ったりしていた。雑談AI の源流のようなものだ。
昨今の第3 次 AI ブームも、IBM の ワトソン を嚆矢に、エキスパートシステムを目指しているかのように見えたが、前述のようなビジネス背景から、雑談AI が派生したようだ。
現在、私はビジネスサイドにいて第3 次 AI ブームの研究成果を利用させてもらう立場だが、人工無能を作った当時の感触から、雑談AI にはたいへん魅力を感じる。東中さんが言うように、対話ができればチューリングテストに合格し、人工知能ができたことになるからだ。また私は、第2 次から第3 次 AI ブームの間に子育てした経験から、 ディープラーニング の学習能力はヒトのそれとは全く異質なものだが、異質なものを研究することで、逆に、ヒトの「知能」の正体を明らかにできるのではないかと考えている。

前置きが長くなったが、現役技術者の東中さんが著しただけあって、本書は構成からして論理的・合理的にできている。序章で、上述の雑談AI が求められるようになった背景を述べ、第1章で雑談AI の仕組みの概要を説明する。第2章以降で、東中さんが携わったプロジェクトの事例を挙げながら、雑談AI の仕組みを掘り下げてゆく。
雑談AI の仕組みだが、また方式は確立されていなが、手作業のルールを用いたもの、検索ベースによるもの、ディープラーニングを使った生成ベースによるものの 3 つに大別できる。前述の人工無能は、手作業のルールを用いたものだった。現在でも手作業のルールは重宝されているという。それは、雑談AI が炎上発言しないように制御できるからだ。これは大切なことで、本書でも取り上げられているマイクロソフトの AI ボット「 Tay 」が差別発言をしてシャットダウンされたことは記憶に新しい。もっとも、ヒトの方が SNS 上で差別発言する確率は高いような気はするが‥‥こうした問題を考察することで、炎上発言の定義、ヒトとしてそれを回避する雑談のやり方と学べると思う。

雑談AI では、まず、相手の発話意図を理解することが大切だ。それが質問なのか、意見を言っているのか、カテゴリ分類していく。質問は特に重要で、「ユーザの質問に答えられないと『無視された!』」(86 ページ)となるからだ。これは、リアルな対話でも同じことが言える。発話意図を理解できないと、KY と後ろ指を指される(笑)。
雑談AI の発話生成では、つまらない応答をしないように工夫が要る。たとえば、YouTuber やアニメでお馴染みのキャラ語尾を使うことが考えられる。また、自らのプロフィールをデータベース(PDB)にして、個性を出すことも必要だ。
対話の破綻を回避することも重要だ。発話意図不明確、質問無視、話題遷移エラーを回避できれば、「一定程度の対話破綻を削減できる」(176 ページ)という。

現在の雑談AI はチャット形式(テキストベース)だが、映像や音声を伴ったマルチモーダル対話ができるようになるだろう。
ヒトは、相手の話し終わりを予測して、自分が発言をはじめるというターンテイクができる。また、対話中、相手がどのような状態でいるのか常に推定している。
現在の雑談AI はこれらを達成できておらず、東中さんは「現状の雑談AI との対話は正直飽きます」(210 ページ)と心中を吐露する。そして、「システムが意図を持つこと」(212 ページ)と「自分と相手の両方が理解していると信じている」(221 ページ)共通基盤が必要だという。






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最終更新日  2021.12.21 12:33:01
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