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著者・編者 | ジェイムズ・P・ホーガン=著 |
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出版情報 | 東京創元社 |
出版年月 | 2022年1月発行 |
コンピュータ・セールスマンだったが、1977年に一気に書き上げた長編『 星を継ぐもの 』でデビューしたジェイムズ・P・ホーガンが、2007年に発表した長編SFだ。
テラ人(地球人類)は金星に生命が誕生する前に中央アジア戦争を起こし、滅んだ。テラ人とよく似ているものの、重力が電磁気力の派生力であることを知った金星人たちは、地球探査隊を組織し、地球と月の有人探査を行っていた。月の裏側に、テラ人が持っていたはずのない超技術の遺跡が発見され、電気宇宙推進のカイアル・リーン博士らは、その遺跡の調査に向かった。彼は、途中に立ち寄った地球で、微生物学者のロリライ・ヒリヴァーと出会い、意気投合する。ロリライは、獲得した生存に関連する情報を、逆転写酵素がDNAに書き込み、経験を後世に伝えることができるという仮説を立てていた。
月面探査を続けているカイアルらは、テラ人が「プロヴィデンス」と呼ぶ計画を進めていたことを知る。その計画のアイコンは、金星で幸運と帰郷を意味するカテクの記号とよく似ていた。プロヴィデンスとはどんな計画だったのか。テラ人は本当に絶滅してしまったのか――。
帯に「『 星を継ぐもの
』の興奮再び!」とあるが、トンデモ本の古典「ヴェリコフスキーの彗星(イマヌエル・ヴェリコフスキー『 衝突する宇宙
』)のネタを巧みに利用したSFというのが読後感。ただ、『 地球は特別な惑星か?
』で、国立天文台研究員の成田憲保さんが取り上げた 古在機構
のように、太陽系内惑星の軌道は不安定とする仮説がある。だとすると、私たちが学んだ天文学の、科学の基本が揺らぐ――。
著者のホーガンは、この不安を利用し、金星人〈進歩派〉のジェニン・ソーガンをして、「真実だと人びとを納得させることができれば、自分のイデオロギーの正しさをしめす証拠になる」と語らせる。そう。これこそが、世の中に蔓延るトンデモ、オカルト、陰謀論の手口である。
結末は――ホーガンのファンなら予想が付くだろう。安心して最後まで読むことができる。
私は、ロリライの最後の台詞を読んで、アニメ『 ふしぎの海のナディア
』最終回「星を継ぐ者…」のジャンの台詞を思い出してしまった‥‥本書は、やはり『星を継ぐもの』の再来なのかもしれない。そして思う――いまはトンデモでも、近い将来、科学として実証されることがあるかもしれない―― ありえないことなんて、ありえない
のだから。
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