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2022.03.19
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カテゴリ: 書籍
未踏の蒼穹

未踏の蒼穹

 ロリライはそっと言った。「あそこはわたしたちの故郷なの。昔からずっと」(431ページ)
著者・編者 ジェイムズ・P・ホーガン=著
出版情報 東京創元社
出版年月 2022年1月発行

コンピュータ・セールスマンだったが、1977年に一気に書き上げた長編『 星を継ぐもの 』でデビューしたジェイムズ・P・ホーガンが、2007年に発表した長編SFだ。

テラ人(地球人類)は金星に生命が誕生する前に中央アジア戦争を起こし、滅んだ。テラ人とよく似ているものの、重力が電磁気力の派生力であることを知った金星人たちは、地球探査隊を組織し、地球と月の有人探査を行っていた。月の裏側に、テラ人が持っていたはずのない超技術の遺跡が発見され、電気宇宙推進のカイアル・リーン博士らは、その遺跡の調査に向かった。彼は、途中に立ち寄った地球で、微生物学者のロリライ・ヒリヴァーと出会い、意気投合する。ロリライは、獲得した生存に関連する情報を、逆転写酵素がDNAに書き込み、経験を後世に伝えることができるという仮説を立てていた。

月面探査を続けているカイアルらは、テラ人が「プロヴィデンス」と呼ぶ計画を進めていたことを知る。その計画のアイコンは、金星で幸運と帰郷を意味するカテクの記号とよく似ていた。プロヴィデンスとはどんな計画だったのか。テラ人は本当に絶滅してしまったのか――。

帯に「『 星を継ぐもの 』の興奮再び!」とあるが、トンデモ本の古典「ヴェリコフスキーの彗星(イマヌエル・ヴェリコフスキー『 衝突する宇宙 』)のネタを巧みに利用したSFというのが読後感。ただ、『 地球は特別な惑星か? 』で、国立天文台研究員の成田憲保さんが取り上げた 古在機構 のように、太陽系内惑星の軌道は不安定とする仮説がある。だとすると、私たちが学んだ天文学の、科学の基本が揺らぐ――。
著者のホーガンは、この不安を利用し、金星人〈進歩派〉のジェニン・ソーガンをして、「真実だと人びとを納得させることができれば、自分のイデオロギーの正しさをしめす証拠になる」と語らせる。そう。これこそが、世の中に蔓延るトンデモ、オカルト、陰謀論の手口である。

結末は――ホーガンのファンなら予想が付くだろう。安心して最後まで読むことができる。
私は、ロリライの最後の台詞を読んで、アニメ『 ふしぎの海のナディア 』最終回「星を継ぐ者…」のジャンの台詞を思い出してしまった‥‥本書は、やはり『星を継ぐもの』の再来なのかもしれない。そして思う――いまはトンデモでも、近い将来、科学として実証されることがあるかもしれない―― ありえないことなんて、ありえない のだから。






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最終更新日  2022.03.19 13:32:07
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