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著者・編者 | ほしお さなえ=著 |
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出版情報 | ポプラ社 |
出版年月 | 2020年1月発行 |
飯田橋にある印刷博物館を訪れた際、コラボ企画として展示されていた小説――川越にある昔ながらの活版印刷所「三日月堂」に出入りするお客さんの心模様を描く番外編最終巻。本編最終巻「雲の日記帳」の先の話として、短編6編を収録。本編で脇役だった登場人物たちが主人公となり、本編主人公の月野弓子は、前半では顔を出さない。
私が暮らしている〈今日現在〉と被る部分が多く、最後まで話に没入できた。私の〈生きた証〉は、アレに違いない――。
初版限定で、本文の一部を活字印刷した扉1ページが付いている。
マドンナの憂鬱‥‥川越観光案内所に勤めるマドンナこと 柚原胡桃 は、ガラス工芸展の葛城、川越運送店の市倉ハル、観光案内所でアルバイトだった大西とともに富山観光へ向かう。シリーズ最初の中編「世界は森」に登場し、三日月堂の店主・月野弓子を励まし、レターセットを発注した市倉ハルと大西が再登場。胡桃は、葛城、ハル、大西の新しい側面を知り、自分の心を扉を開いてゆく。
二巡目のワンダーランド‥‥「あわゆきのあと」に登場する 広太 の父が主人公。父は、社会の裏側を知ろうと社会人になり、子育てを人生の〈二巡目〉という。私も子育て中に自分の子ども時代の記憶が被った経験がある。〈二巡目〉と考えれば、「想定外」「予期しないこと」が起きる確率は減る。だから、家族の行動をコントロールしようという気は失せるし、家族の自由にやらせた方が面白い。そして、子育てが終わると〈三巡目〉がやって来る。親の介護だ。親がどんなに耄碌しようが、子どもは子どもなので〈三巡目〉――。
庭の昼食‥‥「庭のアルバム」に登場する天野 楓 の母が主人公。楓は、大学進学せず三日月堂への就職を希望する。そんなとき、弓子の亡き母、カナコの詩集の出版が決まる。
水のなかの雲‥‥デザイン事務所に勤める傍ら、三日月堂で活版を学んでいる金子が主人公。「ちょうちょうの朗読会」に登場する 小穂 と三日月堂と訪れた金子は、弓子に誘われ、「最後のカレンダー」に登場するユネスコ無形文化遺産に登録された 細川紙 を作っている工場を見学する。標題は、紙漉きを「残すためには、まわりのことを丸ごと引き受けなければいけない」という弓子の言葉に心を動かされ、金子は小穂に告白する‥‥。
小さな折り紙‥‥「空色の冊子」に登場する、あけぼの保育園の浜田 征子 園長が主人公。元気いっぱいで、友だちの面倒見がいい 佑 が卒園式を迎える。母親も園に通っており、ある日、折り紙を折っていたとき、突然席を立ち、教室の隅にうずくまってしまったことがあった。その理由は‥‥活版印刷三日月堂シリーズは大団円を迎える。
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