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2022.06.03
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カテゴリ: 書籍
停滞空間

停滞空間

 数霊術師「わたしはコンピュータを使って、可能な未来について研究します」(260ページ)
著者・編者 アイザック・アシモフ=著
出版情報 早川書房
出版年月 1979年8月発行

プロフェッション‥‥ジョージ・プラトンはコンピュータ・プログラマを目指していた。〈教育の日〉がやって来ると、子どもたちの職業適性が判定され、それぞれ専門の道へ進む。だが、ジョージは「なににもなれない」と判定されてしまう。ジョージはハウスに収用され教育を受けるが、そこから逃げだし、職業人が競い合うオリンピックを見物する。歴史学者ラディスラス・イソジェネスキュと出会い、ハリ・オマニはジョージの本当の能力を明かす。

ナンバー計画‥‥マイロン・オーブはコンピュータを使わずに、〈筆算〉で 2 桁の掛け算を実演して見せた。これを見たブラント議員は地球連邦大統領に、秘密プロジェクト〈ナンバー計画〉を具申する。地球と植民星との間ではコンピュータによる戦略ゲームに明け暮れる毎日から脱出できると考えたからだ。ウォーダー将軍は、コンピュータではなく人間を乗せたミサイルの開発を提言する。コンピュータつきの船の 3 分の 1 の時間と 10 分の 1 の費用とで作れるからだ。オーブは将軍の演説を最後まで聴かず、蛋白質破壊機を使って自死した。

ヒルダぬきでマーズポートに‥‥マックスは妻から離れたことを幸いに、マーズポートでフローラを呼び出した。しかし、マックスに緊急の仕事が入る。マーズポートに到着した 3 人の大実業家の誰かが、変造スペーソラインを密輸しようとしている。マックスは、その犯人を捕まえなくてはならない。宇宙船に乗る前にスペーソラインを打って支離滅裂な会話しかできない 3 人の誰か 1 人が嘘をついている。マックスは犯人を見つけ報酬を手にした、そこに、妻ヒルダが到着したのだった。

やさしいハゲタカ‥‥サルのような姿をした宇宙人フルリア人は、月の裏側の基地から 15 年間、地球の観察を続けていた。他の大型霊長類が住む惑星のように、地球でも核戦争が起き、生物が滅亡する直前に救いの手を差し伸べるためだ。だが、地球ではなかなかな核戦争が起きない。しびれを切らした政務長官は、人間をひとり捕らえて心理分析機にかけることにした。人類の心理を知ったフルリア人は恐怖し、月の裏側の基地を撤収してしまう。

世界のあらゆる悩み‥‥巨大コンピュータ〈マルチヴァク〉は地上の経済を指揮し、科学を援助し、全人類の行動を予測していた。その結果、犯罪件数が減少した。ある日、〈マルチヴァク〉の予測にもとづき、ジョウ・マナーズが拘束された。次男のペン・マナーズは〈マルチヴァク〉に父親を助ける方法をたずねた。〈マルチヴァク〉の解答は‥‥。

Z を S に‥‥核物理学者マーシャル・ゼバチンスキイは、コンピュータを使って未来予測するという数霊術師を訪ねた。数霊術師のアドバイスにしたがい、名前の 1 文字を Z から S に変えたところ、ゼバチンスキイは注目を集め、プリンストン大学物理学科の準教授に選ばれたのだった。はたして数霊術師の正体は‥‥。

最後の質問‥‥初めて最後の質問が訊ねられたのは、2061 年 5 月 21 日のことだった。巨大コンピュータ〈マルチヴァク〉に、人間が万物をつくり出せるようになるかを訊ねた。〈マルチヴァク〉はデータ不足で解答が出せないと印字した。恒星間航行ができるようになった人類は、より高性能なコンピュータ〈マイクロヴァク〉に同じ質問をした。同じ返答だった。銀河系に生活圏を広げた人類は、〈銀河 AC〉に同じ質問をした。同じ返答だった。〈宇宙 AC〉や〈汎宇宙 AC〉の時代になっても返答は同じだった。そして宇宙の星々も銀河も死に絶え、その 10 兆年後、〈マン(人類)〉も消失し、AC だけが残った。AC は言った“光あれ”――すると、光があった。

停滞空間(1958 年)‥‥ホスキンズ博士が看護婦イディス・フェローズを雇ったのは、〈停滞空間〉に捕らえたネアンデルタール人の子供を育てるためだった。フェローズがティミート名付けたその子供は、ホスキンズ博士の息子ジェリイがエイプボーイ(サルの子)と呼んだことに腹を立て‥‥。

冒頭の『プロフェッション』は格差社会を皮肉っている。主人公が「たすけなんかいらない。ぼくは精神薄弱なんかじゃないんだ。精神薄弱は世界中だ」(96 ページ)と叫ぶシーンは、現代社会で、自分が弱い立場にあるのは陰謀のせいと主張する人びとに重なる。本作で主人公が救われるのは、それは、これが SF だからだ?


70 年も前の SF なのに、いずれのテーマも現代に通じる――とくに『ナンバー計画』『世界のあらゆる悩み』『Z を S に』『最後の質問』は、陽電子頭脳を持ったロボットではなく、コンピュータをテーマにしている。コンピュータは未来予測できるけれども、それには十分かつ正確なデータが必要になることは、現代のディープラーニングでも変わらない。こうした未来予測の最終形態が、長編シリーズ「銀河帝国の興亡(ファウンデーション)」に登場する〈心理歴史学〉であろう。だから逆に、アシモフはタイムトラベルものを書かなかったのかもしれない。
〈心理歴史学〉の創始者ハリ・セルダンの死後 50 年を経て、惑星ターミナスの時間霊廟に初めてハリ・セルダンの立体映像が登場し、ファウンデーションの進むべき道を照らす――アシモフの死後 30 年。あと 20 年したら、もしかすると‥‥。






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最終更新日  2022.06.03 12:29:37
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