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2022.06.06
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カテゴリ: 書籍
ハイペリオン(下)

ハイペリオン(下)

 ソル「どうして当局は、〈時間の墓標〉のような大いなる謎を無視していられるんだろう?」(68ページ)
著者・編者 ダン・シモンズ=著
出版情報 早川書房
出版年月 2000年11月発行

第4章 学者の物語: 忘却の川の水は苦く(承前)
バーナード・ワールドで暮らしていたソル・ワイントラウブとサライの娘レイチェルは、大学では考古学を専攻した。〈ハイペリオン〉調査隊に参加し、〈スフィンクス〉と呼ばれる遺跡を調査した。その頃、ソルは、血の色をした双眼が大音声で「娘を燔祭に捧げよ」と告げる悪夢を見るようになった。〈スフィンクス〉で〈時潮〉(ときしお)に巻き込まれたレイチェルは、時間を逆行し若返り、その日の記憶を失ってしまうようになった。ソルはレイチェルを元に戻そうとラビを訪ね、「神は、アブラハムの魂を覗きこみ、本気で息子イサクを殺すつもりであることを見てとったにちがいない」と語る。ラビは否定した。次にソルはシュライク大聖堂を訪ね、〈スフィンクス〉での出来事を告げると、司教は激怒し、ソルを大聖堂から放り出す。マスコミに追い回されるようになったため、一家は砂漠の惑星〈ヘブロン〉へ引っ越した。サライは事故死し、ソルはレイチェルを連れて〈ハイペリオン〉へ向かうことを決意する。ソルは年老いたが、レイチェルは乳児に戻っていた。
風莱船(ふうらいせん)で移動を続ける巡礼は、聖樹船〈イグドラシル〉が攻撃を受け炎上する様子を目にする。

第5章 探偵の物語: ロング・グッバイ
風莱船(ふうらいせん)で移動を続ける巡礼。ある朝、聖樹船〈イグドラシル〉船長ヘット・マスティーンの部屋が血まみれになっており、マスティーンがいなくなった。私立探偵で唯一の女性ブローン・レイミアが指揮し船内を捜索するも、マスティーンは見つからなかった。風莱船は〈巡礼の休息所〉の桟橋に到着し、巡礼はゴンドラに乗り換えた。一同が夕食を食べ終え、レイミアが語り始める。
レイミアの事務所を訪れた客ジョニイは、AI の頭脳と人間そっくりのボディを備えたサイブリッドだった。ジョン・キーツの人格を核に誕生したジョニイは、自分のボディが破壊され、AI 本体が攻撃を受け、〈殺された〉と訴え、レイミアに犯人捜しを依頼する。やがてレイミアとジョニイは愛するようになる。サイブリットであることをやめて人間になり、〈ハイペリオン〉を目指そうとしてジョニイは〈テクノコア〉から狙われていた。〈テクノコア〉は連邦が到達していない大マゼラン雲内にオールドアースのアナログコピーを造っていた。レイミアは連邦CEO(最高運営責任者)マイナ・グラッドストーンに面会し、人間になったジョニイに再開する。そして、連邦、〈テクノコア〉、〈ハイペリオン〉、〈アウスター〉の関係を知る。シュダイク大聖堂でジョニイは死に、レイミアにデータを残す。

レイミアが暴漢を追うシーンで、群衆の誰も協力しようとしないが、日本人観光客だけはイメージャー(デジカメのような者か)をかまえて一部始終を記録しているという記述に笑ってしまった。
さて、元ネタになったキーツの作品は、ギリシア神話、ローマ神話、アラビアン・ナイト、フェアリーテールから中世騎士物語、ダンテ、ミルトン、シェイクスピアと非常に幅広い題材を扱っている。シモンズは、これらを取り込んだ上で、さらに、あらゆる SF の分野――スペースオペラ、銀河帝国、ニューウェイブ、ポスト・ニューウェイブ、サイバーパンク、タイムトラベル――を持ち込んだ。そのうえで、あらゆる小説の技法――一人称、三人称、日記体、夢想、カットバック――を使って書き上げた。
初めて SF を読む方には少々ハードルが高いかもしれない。だが、他ジャンルの SF や小説を読んだ後で、あらためて「ハイペリオン」シリーズを読み返すと、ニヤリとさせられること請け合い。何度読んでも味のある作品である。






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最終更新日  2022.06.06 12:13:31
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