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2023.05.28
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カテゴリ: 書籍
ザ・ゴール

ザ・ゴール

 「我々にとって、改善とはコスト削減ではなくスループットの向上だったわけです」(460ページ)
著者・編者 エリヤフ・M.ゴールドラット=著
出版情報 ダイヤモンド社
出版年月 2001年5月発行

著者のエリヤフ・ゴールドラットさんは物理学者――スループット、依存的事象と統計的変動、元素周期表など、いかにも理系らしい仕組みを使って生産工場が会社の利益に貢献するモデル――制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)」――を小説仕立てにしたのが本書である。

機械メーカー「ユニコ社」の工場長アレックス・ロゴは、上司のビル・ピーチ副本部長から、採算悪化を理由に、3ケ月以内に目標を達成できなければ工場を閉鎖すると告げられた。最新ロボットを導入して、工場は効率化したはずなのに、なぜなのだろう?
アレックスは、空港で偶然に大学時代の恩師の物理学者ジョナと出会い、この疑問をぶつけてみた。ジョナは「もし仕掛りも人件費も減っていなくて、製品の売上げも上がっていなかったら、ロボットを導入して生産性が上がったなどとは言えない」(49ページ)とアドバイスし、これが当たっていた。アレックスは、純利益、投資収益率、キャッシュフロー、この3つを同時に増やすことによってお金を儲けることが会社の目標だと認識する(80ページ)。
ジョナは世界を飛び回り多忙を極めていたが、アレックスからの相談に適時応じてくれた。そして、お金を儲けながら工場を動かす指標として、「スループット」「在庫」「業務費用」の3つを挙げた。売ることのできる投資は在庫、減価償却は業務費用に分類できる。在庫と業務費用を減らしながらスループットを増やすことで会社は儲かる(107ページ)。

アレックスは息子デイブのボーイスカウトのハイキングを引率することになった。子どもたちの平均的な歩行速度で目的地への到着時刻を計算するが、実際には歩くのが遅いハービーがボトルネックになった。そこで、ハービーを列の一番前を歩かせ、ハービーの荷物をみんなで分担して持つことで、歩行速度が改善した。アレックスは、この経験から、工場で依存的事象と統計的変動が起こっており、このため納期に遅れるケースが発生していることに気づく。そこで、製造課長のボブ・ドノバンや、データ処理担当のラルフ・ナカムラらとミーティングを行い、製造工程を変更し、生産能力を需要に合わせるのではなく、ボトルネックを通過するフローを市場からの需要に合わせるようにすることにした(218ページ)。このとき、資材マネージャのステーシー・ポタゼニックは、「営業からプレッシャーがかかっても順番を変えない」ことをアレックスに求めた。

こうして納期遅れは劇的に改善したが、今度は大量の在庫が発生してしまう。みんなを100パーセント、いつも働かせないといけないという考え(326ページ)から、市場の需要を超えて生産してしまったからだった。経理課長のルーは、「100パーセントは無理だとしても、こちらとしては、それなりの数字を出してもらわないと困るんです。90パーセントぐらいはなんとか‥‥」と言うが、ジョナは「どうして、90パーセントなのかね。60パーセントや25パーセントでは駄目なのかね。制約条件に基づいていなければ、そんな数字などまったく意味を持たない」「リソースが個別に最大化されているシステムは、全体的にはまったく最適なシステムではない」と説明する。人を働かせることと、利益を上げることは別物なのだ(326ページ)。

アレックスたちは議論を深め、バッチサイズを半分にすれば、各バッチの処理時間が半分になり、部品の工場通過時間も約半分に減らせることに気づく(359ページ)。アレックスは、ジョナにさらなる助言を求めるが、ジョナは「会社の中でどんどん昇進し責任が増えてきたら、もっと自分自身で考えるようにしなければ駄目だ。事あるごとに私の助けを求めていては駄目だ。いつも人を頼るようになる――」と突き放す。

アレックスたちは、これまでの成果を振り返り、法則としてまとめ上げようと考える。ベアリントン工場の成功を、ユニコ社全体に適用するのが目的だ。
ボブは「継続的改善プロセス」という言葉の「プロセス」が重要だと指摘した。
[ステップ1]制約条件を「見つける」。
[ステップ2]制約条件をどう「活用する」か決める。
[ステップ3]他のすべてを[ステップ2」の決定に「従わせる」。
[ステップ4]制約条件の能力を高める。
[ステップ5]「警告!!!」ここまでのステップでボトルネックが解消したら、[ステップ1]に戻る。

こうしてベアリントン工場は閉鎖を免れただけでなく、会社の収益に大きく貢献した。彼らは昇進した。そして、アレックスはマネジャーに求められる基本能力が何かを探す。それは、「何を変える」「何に変える」「どうやって変える」の3つだと考えた。そして、ジョナが助言しなかったのは、「周囲の力に頼ることなく、自分たちでできるよう、自ら学ばなければ駄目」(520ページ)だということに気づいた。

TOCは、仕事の流れ(スループット)を滞らせる制約(ボトルネックなど)の改善に集中することで全体最適化が実現できるという理論である。
現実の人間は、アレックスとその部下たちのように勤労意欲にあふれている人ばかりではないから、この〈理論〉どおりには進まないだろう。が、学ぶべきことは多い。ただ、読んだ人によって、学び取れる内容が異なると思う。
私は、ちょっと太めの製造課長のボブが、ホワイトボードに書いた「継続的改善プロセス」の「プロセス」の部分を強調するシーンが印象的だった。
終盤、アレックスがマネージャの立場を考える場面になる。本書では触れていないが、私は、ビジネスにおける不具合や失敗は、個人の責任に帰すものではないと考えている。不具合や失敗は「プロセス」に問題がある。プロセスを「改善」することで、ビジネスを成功に導く――これもマネージャの職務であろう。
第2巻では、アレックスたちの10年後の姿が描かれるという――ポジションが上がると、どういう舵取りが求められるのか。楽しみである。






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最終更新日  2023.05.28 12:02:31
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