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著者・編者 | J・J・アダムズ=著 |
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出版情報 | 東京創元社 |
出版年月 | 2022年6月発行 |
時空の一時的困惑
(チャーリー・ジェーン・アンダーズ)
スパイシー・ミートボール号に乗ったシャロンとカンゴが、アース・セブンの依頼主から受けたのは、恒星ナクソスの周回軌道を回っている巨大な丸い肉のかたまり〈お 広様
〉から超航行シンクロトリックスを手に入れるという依頼だった。〈お 広様
〉が「われはすべてなり!」と吼えると、連結された何万という宇宙船の中でヘッドギアをした信者たちは「御身はすべてなり!」と応じる。
シャロンとカンゴは盗み出したシンクロトリックスを使って局所的困惑を生み出し、〈お 広様
〉の追っ手の宇宙船団を立ち往生させたものの――。
そんなとき、地球政府上級行政官マンドレ・ルイスから、〈自由の宮〉に潜入し、スーパー兵器の設計図を手に入れてほしいとの依頼が来た。まんまと手に入れたスーパー兵器は、尊大な口調でホーレスと名乗った。
シャロンは、〈自由の宮〉のヘイゼルビーム・スターンフォーク・パドルボロウ27世を退けると、カンゴらとともにスパイシー・ミートボール号に乗って脱出しようとするが、そこへ〈お 広様
〉が現れ‥‥。
禅と宇宙船修理技術
(トバイアス・S・バッケル)
銀河恒星船〈 満腔
の誠意〉の外殻で暮らす〈私〉は、ひょんなことから、アナバシック艦〈ヘリオスプライム〉のアーマンドCEOを救出する。〈真形態〉を保ったままの保存主義者のアーマンドは死ぬことを極度に恐れ、ロボットとして逆らうことができない〈私〉に、セキュリティに捕らわれずにパース‐アナゲットへ脱出する手伝いするよう命じた。〈私〉はCEOの保有株を代価に、命令を実行するが‥‥。
晴眼の時計職人
(ヴィラル・カフタン)
ウモスは、何十億年も昔に死に絶えたはずの創造者ワヒーアが宇宙船の網にひっかかっているのを見つけた。ウモスは惑星上で進化していく生物を観察していた。ウモスがアウリと名付けた生物は高度な知性を持つようになり、道具を使い、芸術を生みだしたが、争いが絶えなかった。あるときウモスは、彗星がこの惑星への衝突コースを進んでおり、このままにしておけばアウリが絶滅することを知った。ウモスは自分を犠牲にしてアウリを救うかどうかを悩む。
無限の愛
(ジョゼフ・アレン・ヒル)
超光速で恒星間を疾走するアリアは、ビーブラックスから携帯カセットプレーヤーとカセットテープを受け取ると、ジェットバイクにまたがり、強力な武器〈シスター・レイ〉を担いで、〈溺れる王〉のあるところへ向かった。銀河の7割が、愛を唱えるザーザックに汚染されていた。銀河を救えるのはアリアしか残っていなかった。ついに、アリアは〈溺れる王〉の眼球にあるザーザックの尖塔にたどりつくが‥‥。
見知らぬ神々
(アダム=トロイ・カストロ&ジュディ・B・カストロ)
全人類艦隊とその神々は、それよりも力の強い神々と同盟を組んだ侵略者ヴファームと戦闘状態にあったが、人類が絶滅するのは確実だった。人類側に属するヘンリク・フィズ艦長が指揮する宇宙艦は、ヴファームによって、それまで人類が到達したことのない宇宙空間に飛ばされ、エネルギーも酸素も尽きようとしていた。フィズは、山羊を使って、この空間に住む神を呼び出したところ、それはヴファームよりはるかに強い神ンロフスルだった。ンロフスルは人類を助ける代わりに、山羊と、「この艦に乗っている人間すべておよび宇宙に現存する人間すべての4分の3」を要求した。フィズは、その要求を呑むが‥‥。
悠久の世界の七不思議
(キャロリン・M・ヨークム)
メイは超光速航行の研究に行き詰まっていた。そんなとき、すべての時間に存在する宇宙に巻き付く蛇のようなアクロンが現れた。アクロンは彼女をプライムと呼んだ。やがて、人間の意識をコンピューターのなかにおさめる装置が完成し、アクロンが予言したように人類は恒星間宇宙へ進出する。
それから200年――エウロパの灯台に立っていたメイは、意識だけの存在プライムとなって、宇宙へ旅立つ。みずへび座ベータ星の空中庭園で、プライムは〈サンティアゴ〉と賭けをして、知性ある美しい森を救った。
HD40307gの霊廟の人工知能であるナビアはアクロンと接触し、1万の人間たちを連れ去られてしまう。
プライムは、おとめ座59番星にある人工知能のアルテミス女神の神殿に近づいた。アルテミスの精神と融合したプライムからアクロンが誕生した。
アクロンは、ペガスス座51番星bで、地球のアナツバメの遠い子孫であるツバクロ族が進化していく様を見守り、そこで生命を終えた。
プライムは、グリーゼ221をとりまく惑星をテラフォーミングして、大昔の地球そっくりにする。そしてアクロンを呼んで、HD40307gの霊廟から連れてきた1万人を入植させた。メイは大ピラミッドの山のむこうに夕日が沈むのをながめたあと、なじみのない配置の星々でいっぱいの空を見つめた。エウロパを旅立ってから40億年が過ぎていた。
俺たちは宇宙地質学者、なのに
(アラン・ディーン・フォスター)
地質学者たちは、合成不能なレアアース鉱床は存在するものの採算がとれないと結論づけ、ティモス星系を去ろうとしていた。そんなとき、バナージーは惑星ティモスIXをめぐる軌道上に廃棄された宇宙船を発見した。クーパーらが宇宙船の中に入ってみると‥‥。
黄金の人工太陽
(カール・シュレイダー)
表面の大半が氷でおおわれた惑星サジッタを照らす人工太陽エオスは、あるとき、宇宙背景放射の最新ニュースを知り、絶望し、光を閉ざしてしまった。
ふたたびサジッタを照らし始めたエオスは、アバターをサジッタに降下させ、冷凍睡眠することで生き残っている人間を探し、放浪者カマキー・コノーと出会った。
他に生き残っていたのは、世界の資源を自己満足のために浪費し、永久冬眠の刑に処された 最大利用者
たちだった。カマキーはマキシマイザーの復活は好ましいことではないとエオスに告げる。カマキーも宇宙背景放射の最新ニュースを知っており、その解釈をエオスに告げる。
明日、太陽を見て
(A・マーク・ラスタッド)
幽鬼体メアは、最後の 狼王
を処刑した。その夜、センチュリーがメアを解放した。メアはセンチュリーとともに7つの太陽王と訪問し、話をして、最後に惑星識別番号Z1-479- X、通称リバースに到達するが‥‥。
子どもたちを連れて過去を再訪し、レトロな移動遊園地へ行ってみよう!
(ショーニン・マグワイア)
ダイソン天体に住むノーラは、エンジンをスパナで叩いて直したことをドクに責められた。ダイソン天体にはバーチャル遊園地しかなかったが、一部の蒐集家が地球の骨董品を集めていた。そんな蒐集家の一人、ウィットマン教授に初期の VR
RPGを届けに行こうとしたところ‥‥。
竜が太陽から飛び出す時
(アリエット・ド・ボダール)
家族でステーションに住むランは、竜が飛び出してきて太陽が死んだというお伽噺を聞かされて育ったが、事実は‥‥。
ダイヤモンドとワールドブレイカー
(リンダ・ナガタ)
太陽をかこんで軌道をめぐる多数の人工世界「九千世界」はマキナ・オーバーロードというAIが管理していた。ヴィオレッタ・ガミアオは、職業革命家などの思想ギャングを取り締まるハンターだったが、あるとき、娘のダイヤモンドが職業革命家にスカウトされてしまう。ダイヤモンドは手にした 世界破壊弾
を持って‥‥。
カメレオンのグローブ
(ユーン・ハ・リー)
美術品を盗み出したリーアンは、生まれ故郷ケルの司法官に捕らえられしまった。判事はリーアンに、カヴァリオン大将が盗み出した3万光年を焼き尽くす兵器「 焼夷核
」を盗み出すよう取り引きを持ちかける。リーアンは、嫌々ながらもリュッスとステルス宇宙船「フレアキャット」に乗り込み、カヴァリオンの宇宙船へ向かった‥‥。
ポケットのなかの宇宙儀
(カット・ハワード)
僕の仕事は、オルゴールを奏でる機械仕掛けの宇宙儀を作ることだ。宇宙の守護者カリーナのまわりにはポケット宇宙が取り巻き、特有の音楽を奏でている。僕は持っていた白色矮星を、あらたに誕生したポケット宇宙に入れてみた。カリーナはそんなことをしてはいけないと言うが、僕の宇宙の歌に変化が見られた。一方、カリーナの宇宙は‥‥。
目覚めるウロボロス
(ジャック・キャンベル)
人類が永遠の寿命をもって気の遠くなる時間が過ぎた。オスカーはただ一人、第二火星を彷徨っていた。なぜか蓄積記憶から古い記憶は消えており、周囲はエネルギー節約のため暗くなっていた。オスカーは黒い女たちがいる薄暗い小さなバーで、アイコにであった。アイコは、この宇宙に残っている人間はアイコとオスカーの2人だけだと告げる。2人がいるのは巨大なダイソン天体の中だった。そして、宇宙は特異性へ落ち込み終末を迎えているところだった。2人のとった行動は‥‥。
迷宮航路
(カメロン・ハーレイ)
人口過密で荒廃した惑星から脱出した移民船団の乗り込んだ人類は、正体不明の 異体
に遭遇し、エンジンが推力を失い、動けなくなった。
移民三世代目のカリーズは、姉のマラティと一緒に船団を脱出する計画を立てた。だが、寸前のところで異体に飲み込まれ、マラティ一人が船団を脱出することになった。残されたカリーズの体内から摘出されたものは。そして、二世代目の大人たちがマラティに語った真実は‥‥。
霜の巨人
(ダン・アブネット)
ノックスAIを設計したドワイヤは、好戦的なウーシュン人との平和条約の締結阻止を目論むオリファントの依頼を受け、ふたたびノックスAIに潜入し、極超低温に保たれ最高強度のセキュリティを誇るノックスの地下金庫から平和条約の原本を盗み出そうとするが‥‥。
はるかな未来を舞台にしたSF短編集――『スター・ウォーズ』や『エイリアン』など映画をノベライズしているベテラン作家のアラン・ディーン・フォスターから、2017年に『空のあらゆる鳥を』でネビュラ賞長編部門・ローカス賞ファンタジイ長編部門・クロフォード賞を受賞したチャーリー・ジェーン・アンダーズまで、18本の短編が収録されている。収録された多くの作品はファンタジー風味を醸し出す。偉大なSF作家アーサー・C・クラークの第三法則「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」が今日も通用している証左であろう。
「解説」を書いているSF作家で翻訳家の 堺三保
さんは、エドモンド・ハミルトンの代表作でNHKアニメになった『キャプテン・フューチャー』のオープニング・ナレーション時は未来、所は宇宙、光すら歪む、果てしなき宇宙へ……」を引き合いに出し、本書が最新アップデート版スペース・オペラ集成とも言えるアンソロジーだと指摘する。
そして、若手作家ほど、AI、クローン、宗教など、リアル社会で新しい倫理問題となっている話題を取り上げているように感じる。かつてのスペース・オペラがそうであったように、SFは時代を映す鏡である。
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